魔王の怒り
ここは魔族領。平和な国―――だった。
「これは……」
眼の前には、半壊した街。
よく行く八百屋や、定食屋など、跡形もなく消し飛んでいた。半壊などではない。全壊だ。
「許さん……許さんぞ……」
自分でも、殺気が膨れ上がっていくのがわかる。
殺気だけではない。悲しみや、心配も混じっている。
その時、気配が感じた方へ向かう。
「お前は……」
「久しぶりじゃ〜ん」
「ステルフィーナ!!」
「な〜にカッカしてんの〜?ただ、魔族がうざいから、粛清してあげたんだよ〜!あっ、それと、復活おめ〜」
私はキレた。理性の糸を手放した。
「しね」
瞬時に、ステルフィーナの眼の前へ移動し、拳をぶち込んだ……と思ったが、避けられた。
「おっと〜いきなり危ないよ〜」
豊満なステルフィーナの胸が揺れる。
だが、そんなの関係無しに、連続して、拳を繰り出す。
「ダーク・ブレス」
「久しぶりに君の魔法をみたよ〜やっぱり、すごいねぇ〜」
魔法も軽々避けられる。
だが、私も、まだ二割しか力を出していない。勝手に体が制御し、意思とは関係なく動く。
意思とは関係ないが、ちゃんとした動きは身についているため、大丈夫だ。
「お前は殺す」
「君、いや、リリスティアちゃんは、怖いねぇ〜」
三割解放。
「おっと〜さっきよりはマシかな〜」
徐々に、ステルフィーナを押し始める。
「おっとぉ〜」
「しねぇ!!」
「馬鹿ねぇ〜この程度で、死ぬとお思いで?死ぬのは、貴女よぉ〜」
「戯言を!!」
ここで、ステルフィーナが魔法を使う。
「ウォーターブレード」
水の剣を作り出す。長く、鋭く、細い。よく研究されてきたのがわかる。
だが、私も負けてられない。自分の国、街を壊された。ただでは帰さない。
「ダークブレード」
「おっと〜それ使えたの〜?」
「魔王にできないことはない」
「そうか〜じゃぁ、本気で行かせてもらうわね〜」
ステルフィーナの目つきが変わる。いつものキラキラした眼ではなく、相手を仕留める、睨みつける目つきに変わる。大抵の人間は、動けなくなるだろう。だが、私は魔王。この程度の圧は、見慣れてきた。
「では、行かせてもらうぞ。ステルフィーナよ。後悔するんじゃぁ、ないぞ」
「もちろんよ。後悔なんかするもんですか」
ニヤッと笑う。
そして、踏み出す。同じく、ステルフィーナも踏み出し、剣と剣があたり、鈍い音がする。
ステルフィーナの剣が、私の顔をかすめる。
私も、ステルフィーナの肩に、剣を突き刺す。
「うぐ……」
一瞬のうめき声が聞こえたが、ステルフィーナはまだ、戦う。
「まだやるか。根性だけは認めよう」
「ありがとう」
一旦、距離を取る。それはステルフィーナも同じ考えだった。
いまから、最後の一撃を与え、この戦いを終わらせる。
剣に魔力をまとわせ、足にも、魔力を流す。
「考えていることはおんなじようね」
「そうだな」
どちらの準備も整った。
「「一撃必殺奥義――神速斬り」」
一瞬で、雲があった青空が、雲一つない空へと変わる。
そして―――。
「うぐ……ゲホッ……」
「私の勝ちのようだな」
「……ッ……次は、勝つ……」
「何を言っている?お前はここで死ぬのだ。それと、死ぬ前に聞いておこう。なぜ、この街を壊した?」
剣先をステルフィーナの背中に向け、尋ねる。
「ただの暇つぶしよ……いえ、正確には貴女に構って欲しかったのかもしれない……この千年間、私より上に行くものは、貴女だけだった。そんな時、魔王が復活したと聞いて、飛んできたの。だけど、魔王は、いなかった。人間領へ行ったと聞いた。だから、すぐに戻って来てくれるように、街を壊したの」
「愚かな……」
怒りを通り越すほどの理由だった。
「呆れた、呆れたぞ。ステルフィーナ」
その時、気づいた、ステルフィーナが手に握っているものを。
「転移石か!待て!」
「ゲホッ……じゃあね。また会いましょう」
パリンという音とともにステエルフィーナは転移した。おそらく、自分の家に転移したのだろう。
「仕留めそこねたか……街は、もとに戻しておこう。バックタイム!!」
街が戻っていく。崩れた建物、死んだ人々、すべて、元通りに戻っていく。
「よし、これでいいだろう……」
こうして、平和が戻って来たのであった……?




