飼っていた鳥を喪った(ヒロイン母視点)
母の頭のネジは息子を喪った直後から外れたままです。
子供が事故死した。
数名の友人と遊びに出かけ足を滑らせて沢に落ち溺死した。
泣いて泣いて泣き叫んで心が壊れて空洞になっていく。
「ご子息がこの様なことに…」
何処からかざわざわと声が聞こえる。
嘘、嘘よ。
何を言っているのかしら?
横たわる子供に手を伸ばした。
「あらあら、女の子なのに沢に落ちる時に髪が千切れたのかしら?」
青白い顔をした家令が背中に娘を隠したことに気づかなかった。
亡くなったのは娘、息子じゃない。
皆、何を言っているのかしら??
棺にあの娘の好きだったお人形とお花をいっぱいいれて送ってあげましょう。
天に召されたのは娘。
ざわざわとした声はいつの間にか聞こえなくなっていた。
娘の死がショックだったのかあの子は人前で話をしなくなってしまった。
死んだあの子が好きだった物を時折求めたが死んだ娘に拘り過ぎないよう宥めたら逆に何も欲しがらなくなってしまった。
妹思いなのは分かるのだけれど…
死んだ妹の事であの子に苦言を言うと侍女達が気まずそうに目を逸らす現実を見ないといけないのよ。
夫は葬儀が終わったら好きにしろと仰っしゃられて家に寄り付かなくなってしまった。
殿方って冷たいのね、それとも家に居ると死んだ娘を思い出してしまうのかしら?
そういえば、最後に墓参りしたのは何時だっけ…
見合いを何度かさせたけど話がまとまらないまま息子が学校に通うようになった。
成績は良いようだが友達が出来ないようなのが少し心配ね、悪い友人に誑かされる事がないと思ったほうがよいのかしら?
悪い友人…なんだか胸がざわざわする。
そうね、あの子の学業に友人なんて必要ないわ。
そう、私からあの子を奪う友人なんて要らない。
…要らないのに。
あの子を嫁に欲しいと言い出した男が現れた。
家より家格が上らしいがフリルとリボンを使ったドレスの三男坊に嫁がせる娘なんてもういない。
そう、私の娘は冷たい石の下にいる。
うちに居るのは…居たのは…
「体調が悪いと部屋で休まれて居たはずですが…」
残されて居たのは空の薬包と飲み終えたグラス。
開け放たれた窓から空っぽの部屋に風が吹いていた。
長い長い悪夢をみていた奥様の話。
レビュー戴いて嬉しい気持ちと戴いた日にアップするのがこの話で申し訳ない気持ちと…




