籠の鳥を逃がした(侍女目線)
この家にはお嬢様はいないことになっている。
事故死した子息の一件で奥様はお嬢様の事を亡くなった子息だと思い込んでいる、厳密には子息の死を認められずお嬢様を子息と認識している。
そして亡くなった子息の代わりをしているお嬢様の身の回りは私が1人で行っていた。
恐らく逃げ出す計画をこの頃から立てていたのかお嬢様から身の回りの事を自分でもできるよう教えて欲しいと相談され簡単な事を時間がある時に教えるようになった。
本来なら長く伸ばす髪を短く切り年々女性らしい体型になるのを晒しを巻いて誤魔化し続けることに限界を感じていたが私の気持ちを察しているのかお嬢様は優しい言葉をかけてくれた。
「貴女には迷惑かけるわね。」
私の前だけでしかお嬢様で居られない方がお辛いと思うのに心配する私を気遣って砂糖菓子を分けて下さるような方だった。
誤魔化しきれない『終わりの日』が来ることを覚悟していたが、周囲が意外に中性的な美少年扱いして見破らないなかケツ顎細マッチョな女装子息にお嬢様が女性として見初められた。
その筋の人は感覚が鋭いのだろうか。
お嬢様は女性として認めて貰えて嬉しい反面、相手があの変態は嫌だろうなと感じてはいた。
お嬢様から逃げ出す話を聞いた時は私に出来ることは失踪発覚までの時間を少しでも長く稼ぐこと、御主人様がお嬢様の性別を知っている私に自由を与えるとは思えないのでできる限り足掻くことだと感じていた。
「貴女は何も知らなかったでいいのよ。」
お嬢様は失踪前に私に念を押し軽くウインクすると2階の窓伝いに去っていった、私は夕闇に消えるピンクブロンドの髪が完全に見えなくなるまで外を眺めていた。
翌日、問題の三男坊が現れてお嬢様の不在が発覚した。
「体調が悪いと仰っしゃられたので朝にお薬を届けました、てっきりお休みになられているかと。」
朝のうちに仕込んで置いた底に少しだけ残った薬杯を枕元のチェストに置いてあったので状況証拠として辻褄が合うように行動していたので周囲も私が薬を届けるまではお嬢様がいたと信じさせることができた。
泣き叫ぶ奥様の声が響く屋敷であと問題は御主人様がいつ私を始末しに来るかくらいだ。
…しかし、御主人様はやり過ぎた。
泣き叫んでいた奥様が睡眠薬で眠った後起きてこないため様子を見に行った所儚くなっていた。
流石に怪しまれ捜査が入った所、奥様に出した睡眠薬や予測はしていたが私の暗殺計画書が見つかったらしい。
御主人様だった方は爵位を取り上げられ処刑。
誰もいなくなった家はお取り潰しになり私は実家に帰った。
問題の三男坊から侍女として働きながらお嬢様を探さないかとスカウトが来たがお断りした。
お嬢様は貴様にはやらぬ、探すなら私1人で探してみせる。




