表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

イケメン現る!

「騎士団長のルイス様です」


メイド長のアニエスが教えてくれると同時に、扉が開いて現れたのは、ダークブラウンの髪にサファイア色の瞳を持ったイケメン。



鍛え上げられた肉体に騎士団の制服が吸い付くようにフィットしている。

その姿は、まるで彫刻のように美しく、思わず見惚れてしまう。


ルイス様……。その名前を、私は心の中でそっと呟き、胸の奥に刻み込む。とってもとっても………イケメンですのよ!!



「盗賊がまた村を襲った。早急に対策を講じる必要がある」



彼の低く、それでいて落ち着いた声が、静かな厨房に響き渡った。

その声は、まるで私の心を射抜く矢のよう。


先ほどまで浮かれていた心が、一瞬にして冷や水を浴びせられたように、現実に引き戻される。



(記憶が戻ったばかりで、頭の中はまだぐちゃぐちゃなのに!なぜ、こんなにも立て続けに、大変なことが起こるのかしら……)



私は、心の中でそう叫びながら、目の前の現実から目を背けたい衝動に駆られる。

しかし、そんな私の葛藤をよそに、ルイス様の声は、容赦なく私の耳に届く。


「とりあえず、これを飲んで落ち着くのですわ!空腹では、冷静な判断もできませんから」


そう自分にも言い聞かせるように、私はルイス様にスープの入った椀を差し出した。


ルイスは、一瞬、驚いた表情を見せたが、すぐに恭しく椀を受け取った。


「お嬢様が、自ら……。なんという光栄でしょう」


そう呟き、彼はゆっくりとスープを口に運んだ。その瞬間、彼の鋭い瞳が、信じられないほど柔らかくなった。


「ああ……。なんと、なんと癒される味なのだろうか……」


彼の言葉に、私の心は歓喜の歌を歌い始める。


(こーんなイケメンに、こんなにも熱烈に褒められるなんて!まるで、ご褒美をもらっているみたいですわ!)


私は、内心でそう叫びながら、頬が緩むのを抑えきれない。

しかし、ルイス様は、すぐにいつもの真顔に戻り、私に問いかけた。




「領地の危機に立ち向かう覚悟は、ありますか?」



ルイス様の問いかけに、私の心はざわめき立つ。

覚悟、ね……。

正直、記憶が戻ったばかりで、頭の中はまだ混乱している。

けれど、この状況を打破しなければ、私はこの異世界で生きていけない。



「まあ、やるしかないわ」


私は、覚悟を決めたように、そう返す。

すると、ルイス様の口元に、ほんのりとした笑みが浮かんだ。


それは、まるで悪戯が成功した子供のような、無邪気な笑顔だった。

彼は私を試していたのだ。


その笑顔に、私は思わずドキリとしてしまい、顔が赤くなるのを感じた。



(こ、この人……。クールそうに見えて、意外と可愛いところがありますのね……!)



領地の危機に立ち向かうなんて、まるでドラマのような展開だけれど、主婦として培ってきた私のスキルがあれば、きっと何とかなるはず。


私は、目の前のスープを飲み干し、体に力を漲らせる。よし、やりますわよ!と心の中で叫び、ルイス様に向き直った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ