5.約束
ゴーレムは村の入口で歩みを止めた。
夢喰いをゆっくりと地面に降ろす。
静かな村の夜。家々の灯りがぽつぽつと並び、人々は穏やかな眠りについている。
「……ここなら、食べられそうね」
ゴーレムにもたれかかりながら、夢喰いはそっと目を閉じた。
感情を探る。村全体に薄く漂う恐怖や不安。それを慎重に、死なない程度に喰らっていく。
「……ふぅ、これで少しはマシになった」
夢喰いは立ち上がろうとするが、まだ身体はふらつく。
「……全然足りないわ」
もっと濃い恐怖を引き出し、より多くの感情を喰おうとする。
その時だった。
「……やめろ」
低く、小さな声。
「は?」
ゴーレムはそれ以上何も言わない。ただ静かに村の方を見つめている。
夢喰いは「なんでよ……」と呟くが、助けてもらったこともあり、渋々手を引いた。
「こんな少しじゃ、歩くのもやっとよ」
ゆっくりと立ち上がり、ゴーレムの肩に寄りかかる。
「……あんたが食べるなって言ったんだから、私が回復するまで面倒見なさいよ」
ゴーレムは何も言わない。ただ静かに、一歩を踏み出す。
夢喰いはため息をつきながらも、その歩みに合わせるように足を前へと運んだ。
こうして、二人の旅が始まった——。