第12話
「ダンジョンギルドを統べる魔王様の顔に泥を塗るような行為をした二人はこれから地獄を見せてやるとして・・・先ずはクスタ君のことだ。」
こちらを見ながらダンジョンマスターのサランは笑顔で話しかけてきた。
「僕の知らない間の契約なので、契約を解除できるのですか?」
ダンジョンマスターのサランの言葉に僕はすぐに反応した。それならすぐに解約してほしい。
「いや、それはしない方が良いだろう。契約の解除は出来ない訳ではないんだが、すぐに解除すると、冒険者ギルドのスパイとして派遣された可能性ありとして、ダンジョンギルドの調査員がクスタ君の元にやってきて、取り調べの後に監視対象としてある程度の期間をダンジョンで過ごしてもらうことになるんだ。それなら、契約が有効なまま、しばらく過ごしてもらってから解除した方が、早く街に戻れるだろう。」
スパイなんかじゃないけど。そんな疑いをかけられたまま過ごすのは嫌だな。
「スパイじゃないのは分かっているけど、ルールだからね。だから、契約を解除するには、しばらくはダンジョンで過ごしてもらう必要がある。」
「ダンジョンで暮らすんですか・・・あの、実はお金があまり無くて・・・」
「お金かい? 心配しなくてもこちらの不手際だから生活は保証するよ。かかった費用は全てマシュー兄妹に払わせるから、安心してお金を使ってくれて良いよ。」
(それは、少し気持ちがスカッとするな。)
「そうですか? ありがとうございます。では、街に戻れるのは、どれくらいの時間がかかりますか?」
「・・・今回は内容が悪いからね。他にも悪用された形跡がないか調べないといけないから、時間がかかるかも知れないね。」
地面に開いた穴を見つめながらダンジョンマスターのサランは話してきた。そうか、悪用されたことも報告するから時間がかかるのかな。
「早めることって・・・できないですよね?」
「クスタ君に迷惑がかかっているのは分かっているけど、これは無理だね。」
ダンジョンマスターのサランはスパッと言い切った。
(そうかぁ・・・どうしたらいいか・・・)
「あの、サラン様、クスタ様の処遇について、ご提案があります。」
僕が早く街に戻れないかと悩んでいると、リリさんからサランさんに提案? しかも僕のことで?
「どうしたリリ?」
「クスタ様に仕事を斡旋してはいかがでしょうか。クスタ様は冒険者ギルドで働かれていたと聞いています。ダンジョンギルドでお仕事をしていただいてはいかがでしょうか?」
(えっ? 僕がダンジョンギルドで働くの?)
「リリ。クスタ君は被害者だぞ。ダンジョンギルドで働いてもらうってどうしてだ?」
「クスタ様は、早く街に戻りたいと希望されています。ダンジョンギルドで働くと、社員の特典を利用してもらうことができるのではないでしょうか?」
(社員の特典って何?)
僕が首をかしげていると、ダンジョンマスターのサランは両手を組み、目をつぶって考えている。
「ふむ・・・社員の特典か・・・優秀な社員の願い事を叶えるというものだが・・・まぁ、評価をするのは私だから、普通に仕事をしていれば特典をクスタ君に与えることは可能だな。リリ、次の評価時期は・・・」
「1ヶ月後です。」
「なるほど。それなら試してみるのも良いかも知れないな。どうだクスタ君。1か月だが、ダンジョンギルドで働いてみないか?」
ダンジョンマスターのサランから、仕事の斡旋を受けた。
(それで早く街に帰れるなら・・・)
「早く街に帰れるなら、働きます。」
僕はすぐに答えた。
そう伝えると、ダンジョンマスターのサランは腕を組みながら頷いてくれた。
「そうか・・・それなら好意に甘えるとしよう。もちろん生活の保証は行う。その上で仕事をしてくれるのなら、給料を渡そう。働いたら働いた分稼げる。それだと地上に戻った際に多少のお金を持って帰れるから困らないだろう。」
(お金がもらえるのならダンジョンを出ていった後の生活も安心だな。)
「はい、それでお願いします。」
僕は、ダンジョンマスターのサランと握手をした。サランさんの後ろでは、リリがパチパチと手を叩いて喜んでいる。
こうして、僕はダンジョンで働くこととなったんだ。




