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第10話

驚いた女性にちょっと待っててほしいと言われ、ベッドに座って待っている。


「お邪魔するよ。」


さっきの女性とは違う声が聞こえたので、顔を向けると、見知らぬ男性とさっきの女性が部屋に入ってきた。


「始めまして。私はこのダンジョンのマスターやってるをサランという者だが、クスタ君だね?」


サランは、近くにあったイスに座り、その後ろにさっきの女性が立ってこちらを見ている。


(ダンジョンマスターだって!? それじゃあここはダンジョンの中ってこと?)


「はい・・・あの、ここってダンジョンの中なんですか?」


「そうだよ。ここはダンジョンギルド内の休憩室だよ。クスタ君はダンジョンの中で倒れていたからね。」


(倒れていた? マシュー兄妹に倒されたんだけど・・・)


「あの、近くに誰かいませんでしたか? 2人組の冒険者とか・・・」


マシュー兄妹は冒険者だけど、近くにいたのか? それとも・・・僕を置いてどこかに行ってしまったのか・・・


「マシュー兄妹のことかい? 彼らが君をここに連れて来たんだよ。」


「マシュー兄妹が? 彼らは冒険者ですよね? どうしてここに連れて来たんですか?」


マシュー兄妹が連れてきたと聞いて僕は理由が分からなかった。彼らが連れていくなら冒険者ギルドじゃないのか? 


「それは、彼らがダンジョンギルドの一員だからだよ。」


「えっ・・・」


僕は言葉が出なかった。

ダンジョンギルドがあるのは知っているが、会うことは一生ないと思っていたのに、まさか、ダンジョンギルドのマスターと会うだけじゃなくて、マシュー兄妹もダンジョンギルドの一員だって?


「それってスパイってことですか・・・?」


ダンジョンマスターのサランは苦笑する。


「そうだね。スパイ活動をやってるよ。でも、マシュー兄妹はそういった活動は苦手だからね。私からお願いしているのは、冒険者ギルドでランクを上げて活躍するように言っていたよ。」


サランの話に納得する。マシュー兄妹がスパイ活動なんて似合わないし、できないだろう。

考えるより行動するタイプだしね。


「たしかに。2人の冒険者としての能力はとても高いですね。冒険者としての能力は・・・」


「ハハハ・・・本当にそうだよね。戦闘能力は高いからねマシュー兄妹は。それ以外はあれだけど。」


僕もサランも苦笑いしてしまう。マシュー兄妹ってダンジョンギルドでも力で解決するタイプだったんだね。


「すいません、助けていただいてありがとうございました。また、助けてもらったお礼にお伺いしようと思います。とりあえず、街に戻ろうと思いますので、街への戻り方を教えてもらえますか?」


僕の質問に、サランは後ろを振り返り、女性と顔を見合わせている。女性は、首を横に振って何かを話している。僕の耳には何を話しているか、内容までは聞こえてこない。


(どうしたんだろう・・・)


僕が疑問に思っていると、サランが話し合いを終えて、こちらに振り返った。


「街に戻るって言ったけど、街に戻って何かやり残したことがあるのかい?」


「やり残した? ・・・街に宿を取っていますし、冒険者ギルドをクビになったので、街で仕事を探そうと思っていますけど。」


(やり残したことってどういう意味なんだろ?)


僕は、首をかしげながら答える。同じようにサランも首をかしげながら答えた。


「仕事を探してって・・・ここで仕事してくれたらいいんだよ?」


「ここって・・・ダンジョンで働くってことですか?」


「そうだけど・・・えっと・・・契約したでしょ? 契約書にサインしたでしょ?」


(契約ってなに?)


「いいえ。契約した覚えとかありませんけど?」


契約書にサインって・・・そんなことをした記憶はないぞ。


サランは驚いた様子で身を乗り出してくる。


「・・・えっ? ウソでしょ?」


「本当です。 契約書にサインした覚えはないので街へ帰らせてください。」


「それ本当? 念のために聞くけど・・・一度契約したら、ダンジョンから出られないこと知ってるよね?」


「えっ?」


「えっ?」


俺とサランはお互い驚いた顔をしながら見つめあった。誰も話さない、誰も動かない静かな時間が流れる。


「・・・街に戻れないのですか?」


「うん、そうだよ。それも契約書に書いてあったんだけど?」


「・・・契約書を見ていないので分かりません。」


「・・・ちょっと調べてみるよ。少し待っててね。」


ダンジョンマスタ―のサランは女性に声をかけて、部屋から足早に立ち去って行った。


(ダンジョンから出れないってどういうこと?)


残された僕は呆然として体をベッドに預けることしかできなかった。

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