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#7


 祭り上げられたスーパースター。

 つくられたスーパーアイドル。

 類稀に見る道化師。

 客寄せのピエロ。

 運営の思惑は当たった。いや、当たったなどという生易しいレベルではない。

 “最果ての流刑地”は廃止を免れたどころではなかった。そしてそれは溢れ者の吹き溜まりが確保されたことということでもある。

 私は道化であっても聖人などとは程遠い。人間に恨みがないと言ったら噓になる。これ以上ないほどに私の精神は踏み躙られた。それは虐待などという生易しいレベルではない。そうしたのは他でもない。人間だ。彼らは私という存在を真っ向から否定した。真っ向から私のメンタルを破壊した。私が我が種族の末裔として前例のない失敗作であることと手段を択ばず世に喧伝してみせた。それなのに、私という奴は人間という種の全てを憎み切れない。勿論、私を決して望まない種類の晒し者にした運営に対しては呪詛以外の言葉はないし、私が敗戦のみを連ねる姿を喜ぶ人間に好意を持てはしない。しかし、私の走る姿に自らの姿を重ね、生きる励みとし、明日への活力としてくれている人々には、素直に感謝しているし頑張って欲しい。そして私を支えてくれている人々。彼らは私を勝たせるべきではない。否、勝たせてはいけない。彼らにも生活があり、食べていかなければならないとすれば、私に手を貸すのはフリだけでしかなければならない。それなのに彼らは勝たそうとしている。本心から。この私を。彼らの私に対する愛情は否定のしようがない。複雑な思いはあるだろうに。

 こんな私でも彼らの役に立っていると思うと……。

 ただ、ここを存続させてしまったことに関しては……。運営の私に対する仕打ちを脇においておいたとしても。我らが種族最低の出来損ないとして意見させて頂くとするのならば。

 最速の機能美――ただそれだけを追求された誇り高きエリート中のエリートが、流されに流された果ての吹き溜まりで、己の絶対的な才能の欠如、あまりにも無能力に向き合わされる日々、それは地獄でしかない。そうまでして生きる意味とは何だろう? 生き続けなければいけないのだろうか? 私は、生きていたくなんかない。現状のように地獄の底の底に叩き込まれる前から生きていたくなんかなかった。我が同胞ならば皆、私に同意することであろう。何故ならば我々は何よりも――死ぬことよりも――速く走ることを欲するようデザインされた種なのだから。生き恥を晒すようにはつくられてはいないし、そんな場所など要りはしない。

 ところが人間の視点からすればそうではないらしい。我々を我々たらしめた造物主でありながら。

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