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#5

 私に携わる者、私の周りにいる者たち。デビュー以来、彼らがいつも私を勝たせようと尽力していてくれたことに対して一切の疑いを持ってはいない。しかし、私が稀代の道化師、いや、この“流刑地”のスーパースターとして財政を潤し、彼らの食い扶持を賄い、ひいいてはその懐をこれまでになく豊かにしている現状を顧みるに、「未だに嘗てと変わることのない想いを共有出来ているものなのだろうか?」と疑念を挟まないではいられない。今となっては、私が「勝つ」ということが意味するところは……。

 「『勝ったらダメだ』とは知りつつも、取材の方が来るようになり、以前にも増してより勝ちたいと思うようになった」。「連敗記録ばかりが話題になるが、一度でいいから勝って欲しい。その為に世話をしているのだから」。……本気でそう思っているのであろうか?

 「全てを犠牲にしてでも次のレースで兎に角『勝つ』という調教は行えないものなのか?」との問いに対して、「それをやったら一勝は出来るかもしれないが、故障は避けられない。勝つ為に故障させてしまう調教は絶対にしたくない」との答えを耳にしたこともある。彼らの私に対する思いやりはわかるし、その愛情は知っている。それは今日においても変わりはあるまい。だが、彼らが私のことを本当に理解しているかというと……。

 思い出して欲しい。

 私の宿命は誰よりも速くゴールを駆け抜けること。しかし、逆説的に言うのならば、私のような不自然な生物、私のような著しくバランスを欠いた奇形種、私のような人の――そう君たち人間の――極めて限定的な目的の為に意図的に組まれた果ての血統に求められているのはただそれだけなのである。故に、ただ全力で走る――それこそが、否、それだけが、我々という種族の“売り”だというのに――だけのことが、自然ではあり得ない可能性で死に直結する存在なのである。だけれども、我々は決してそれを避けたりはしないし、寧ろ積極的に受け入れる。走ることは喜びであり、誰よりも速くゴールを駆け抜けることこそが全てなのだ。我々の血脈にはそう刻印されているのだ。

 そして、それはこの私とて例外ではない。 

 だとすれば、察して欲しい…………。

 だから、察して欲しいのに…………。


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