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8 古代樹のゲートの秘密

 ゴジはゆっくりとした口調で語り始めた。

 「このジーランディア大陸のほぼ中央、険しい山々と密林に囲まれた場所には、全ての生命の源として信仰される1本の巨大な古代樹がある。その古代樹のうろの中には、太古と現在の世界を(つな)ぐ門が発生する。それが人智を越えたアーティファクト、古代樹のゲートだ」

 女神の祝福メンバーが互いに驚き視線を合わせる。

 「話を続けるぞ。我々ルカの民は、古代樹のゲートの守護者として代々これを守って来た。長い年月を経て、我らルカの民は人口が増えたため、2分割することを決めた。ルカの民の半数が、新天地を求め、この大陸から世界各地のへと移り住むようになった。

 新天地のルカの民は、人類と交わり平穏に暮らしていた。しかし、突然、ルカの民を弾圧するルクゼレ教という宗教が広がり、ルカの民は迫害を受け、多くの者が命を奪われた。

 生き残った者たちは、身を隠そうとしたが、無色透明の瞳は隠しようがなく、弾圧は容赦なく徹底的に続いた。だが、外界のことは、風神の城に閉ざされた我々の先祖は、知る由もなかった・・・」

 「それならどうやって、ルクゼレ教の弾圧のことを知ったのじゃ」

ファンゼムが質問した。

 「迫害を逃れ風神の城を抜け、この地に辿(たど)り着いた者がいたのだ。それは二十数年前のことだ。

 その者の話によると、新天地には、ルカの民はもう残っていないということであったが、まだどこかで苦しんでいる者がいるかもしれぬ、そのルカの民を救いたいと、ダリア様の孫ダディ・ナ・ファウンダ様がルカの秘宝である裁きの杖を携え、守護者の一員である妻と、他の精鋭の守護者14名を率いて、新天地へと向かわれた。

 ダディ様は出航の際に『これまで同朋を救えなかったことは痛恨の極み。何年かかろうと必ず救い出す』と決意を述べられた。

 私はその言葉を今でも忘れることはない。だが、あろうことか、盲目の黒ひげ海賊団にルカの民の生き残りが居ようとは・・・」

ゴジが肩を落として、息を1つ吐いた。

 「裁きの杖とは、4大秘宝のうちの1つやな。やはり実在しとったのやな・・・」

ファンゼムが、マナツに耳打ちした。

 「こら、ゴジ。この方たちに早う古代樹の秘密を話さんか。そこが核心なのじゃ」

 「ダリア様、これは失礼しました・・・古代樹のゲートの秘密とは、ゲートそのものにあるのではない。そのゲートを潜った太古の時代にある、特殊なエネルギー結晶の存在が秘密なのだ」

 マナツが身を乗り出してゴジに尋ねる

 「その秘匿(ひとく)されたエネルギー結晶とは、いかなるものなのだ」

 「我々は、このエネルギー結晶をライフフォースと呼んでいる。太古の昔、我らの神オリジネーター様たちは、このエネルギーを乗り物や樹木の育成に使っていたようだ。風神の城もその1つだ。

 太古の世界にあるライフフォースの多くは、そのエネルギーを使い果たし、現存するものは大小合わせて7つだ」

 「特殊なエネルギー結晶を使った乗り物って、どのような乗り物なのですか」

ダンが好奇心を抑えきれず口を開いた。

 「分からん。それ以上は伝承にもない。神話なのかもしれん。だが、数万年に1度、夜空の星から、その乗り物に乗って、この地に降りて来ると言われておる・・・今となっては、壁画にその絵が描かれているだけだ」

 「盲目の黒ひげ海賊団が、そのライフォースの存在を知って奪いに来たということなのか」

マナツがダリアとゴジを交互に見た。

 「・・・恐らくは」

 「なぜ、狙いがライフフォースだと思う」

 「ライフフォースは特殊なエネルギー結晶で、そのエネルギーで世界を変えることができる。また、生き物を根本から変えてしまう力もある。その偉大な力を知っている者は、手に入れたいと願うはずだ。

 今となっては、それを手に入れるためには、古代樹のゲートを通らねばならぬ。古代樹のゲートを開けられる者は、琥珀色の瞳となったルカの民だけ。だから、ユリス様か、ごく一部の者が必要となる」

 「ユリスは琥珀色の瞳を持ち、古代樹のゲートを開けることができるのか」

 「如何(いか)にも。ルカの民の中でも選ばし者だけだ。その選ばれし者が生まれてくる家系には、それぞれのミドルネームがある」

 「ミドルネーム?」

 「ルカの民の長であり巫女であらせられるダリア・ナ・プロジャナタ様には、ナ。

 守護者の中でも代々ライフフォースを守る、フォースキーパーの任を務める一族のガイ・ア・ファウンダには、ア。

 (さら)われたユリス・ナ・プロジャナタ様には、ナ。・・・だが、家系だけではなく、その者たちの中で試練を乗り越えた者にだけ、その家系固有のミドルネームが与えられる」

 「長のダリアさんとユリスは、同じ家系なのか」

 「その通りだ。ダリア様の直系だ。選ばれし者以外の家系に生まれたルカの民は、ライフフォースには触れられぬ。触れれば体が変異して、ルカの民ではいられなくなる。それは遥か昔からの(ことわり)だ」

 「それは、ホモ・サピエンスや獣人、ドワーフなどに変異するということか」

 「その場合もあるが、それはまだ運が良い方だ。人間でいられるからな。

 数十万年あるいは数百万年以上前から、ホモ・サピエンスや獣人、ドワーフなどの祖に変異した者たちは、当時は陸続きであった大陸へと移動して、独自の進化をしていったと伝えられておる」

 ハフが納得した様に頷いて言う。

 「その者たちが、別の大陸で進化・繁栄した結果、今の私たちがあるのね」

 「そうだ。そこから更に派生した多様な種は絶滅したと・・・だが、突然変異体となった者の多くは、正気を失うばかりか、おぞましい姿の種へと変異し、数日で息絶える。おぞましい姿の種となりながらも生き残った種は、魔族種だけだと伝えられている」

 この事実に女神の祝福メンバーも言葉を失う。

 「・・・・」

 「エネルギーが強いライフフォースに触れても無事な者は、選ばれし者のみだ。選ばれし家系に生まれた者が、10歳の時にライフフォースに触れ、無事であった者のみに、ミドルネームが与えられる。これがルカの試練だ」

 「その家系に生まれた者は、10歳の時に命と人間の尊厳(そんげん)を懸けて、ライフフォースに触れなければならないのか、厳しい試練だ」

 「そうだ。ライフフォースを守る役目を全うするためだ。ライフフォースに触れて無事であった者の外形の変化は、その無色透明の瞳が琥珀色に変色することだ。だが、それだけに留まらず、潜在能力が活性して、凄まじい能力がランダムに1つ開花する。例えば、ある者は剛力、ある者は敏捷性、地獄耳などだ。だから、琥珀色の瞳を持つ者は、年齢に関わらず尊敬の対象となる」

 「ルカの民は、我ら人類の共通祖先で、それはライフフォースの力によって、種の分岐が促進された結果ということか」

と、マナツがゴジの説明に頷いていると、ダンが割って入ってきた。

 「しかし、魔族までとは・・・これは驚くべきことです。ホモ・サピエンス至上主義者は、この事実が許せなかったのでしょう」

 これまで黙って話を聞いていたテラが、ゴジに尋ねた。

 「ねぇ、そこに座っている琥珀色の目をしたガイも、潜在能力が1つ開花しているという事なの?」

 「その通りだ。ただ、ガイは特別じゃ。複数の潜在能力が開花している」

 「へー、ガイは特別なのねぇ・・・・」

 テラはゴジの横に控えるガイを(いぶか)()に眺めた。

 「ライフフォースの件については、女神の祝福内に留める事とする」

 「「「了解、キャプテン」」」

女神の祝福メンバーは、互いに視線を合わせて頷き合った。

 「では、古代樹のゲートまで案内してくれ」

 「分かった。案内兼護衛として守護者のガイ・ア・ファウンダをつけよう」

 ゴジの横で待機していたガイが黙ったまま立ち上がった。


 「うぁー。若頭、助けてくだせえ。このままでは全滅です」

海賊たちが恐怖で尻もちをつきながら、イワンに助けを求める。

 密林で体長5mの肉食恐竜アウカサウルスの群れが、盲目の黒ひげ海賊団を取り囲んでいる。ここは古代樹のゲートを通過した太古の世界である。

 アウカサウルスは小さな前脚を持ち、俊敏で獰猛なハンターだった。小さな生き物や卵などを主な獲物としていたが、複数の敵に対しては、集団での狩りを得意としていた。

 生い茂るシダの茂みの間から、鋭い牙を()き襲い掛かって来たアウカサウルスの眉間を、イワンのサーベルが貫く。アウカサウルスが息絶えて海賊の目の前に倒れてきた。

 「嫌だー」

 「助けてくれー」

海賊は悲鳴を上げながら、包囲の隙をついて走り出した。

 「待て。そこへは行くなー!」

イワンの声が響いた瞬間、30m近くあるヤシの木の様な樹木のアーケオプテリスとシダの陰から、鋭い牙の並ぶ(あご)が海賊の頭をくわえた。アウカサウルスは海賊をくわえバリバリと音を立てながら、頭を左右に激しく振った。その海賊の胴体を別のアウカサウルスが(かじ)り付いた。

 「きゃー」

ダックスがイワンの脇で悲鳴を上げた。

 「奴らには知能があるぞ。罠を張っている・・・囲いの隙は、奴らの狩場へと続く死地だ」

イワンが、血の付いたサーベルを一振りして声を上げた。

 人質となっているルカの民のユリス・ナ・プロジャナタは、この惨状を眉一つ動かさずに見つめていた。

 盲目の黒ひげバルバロスが、海賊たちに命じる。

 「ぐははは、ここは全てが死地だ。生き残りたければ戦え」

 脇では、使役するロングファングイグアナのイグが舌をチョロチョロと出して控えている。

 「イグ、いけ」

 イグは、シャカシャカと両足を動かして前に出た。そして、口から青紫色の毒液をばら()いた。アウカサウルスの数頭が頭から毒液を浴び、悲鳴を上げ口から白い泡を吹き始めた。イグは身を(ひるがえ)しながら、毒液を吐く。流石にアウカサウルスも(ひる)み、後ずさりを始めた。

 包囲網が広がった隙を見たイワンが指さした。

 「あそこから脱出する。退路を切り開けー」

 イワンの号令で、海賊たちが手にした武器を振り回しながら走り出した。バルバロスはイグの背に(またが)る。イグは毒液を左右に吐きながら走る。

 イワンはユリスの手を取り、目を見る。

 「付いてこい。奴らに食われるぞ」

 「・・・・」

 ユリスも駆け出した。ダックスは2人の(つな)がれた手を見ると、視線を下に移して懸命について行く。

 生への渇望(かつぼう)。海賊たちは、手にした武器でアウカサウルスを斬る、殴る、払う。必死に武器を振り回して死中に活を求め走る。

 「ぐぁー」

 「お母さん・・」

 「ここで死んでたまるか」

口々に叫びながら一団となって包囲網からの脱出を図った。

 アウカサウルスに1人、2人と、犠牲となりながらも、懸命に駆け抜けた。アウカサウルスの包囲を抜けても、なおも走り続けた。

 「ハァ、ハァ・・ハァ、大頭、逃げ切ったみたいですぜ」

 バルバロスは目を閉じたままイグから降り、イグの首元を()でた。

 「イグ、よくやったぞ・・・大分疲れた様だな。吐いた毒液の量もこれまでの限界を超えていたな」

 イグは腹を地面につけて横になった。

 「イワン、ルカの巫女(みこ)は無事か」

 「無事です。ここにいます」

イワンがユリスの手を握りながら答えた。

 ユリスは、息を切らしながら手を払うと、イワンを睨みつけた。イワンは無表情でユリスへ水筒を差し出した。

 「ハァ、ハァ・・お前たちに施しはうけぬ。余計なことをするな」

 これを見たダックスは、声を荒げた。

 「その水は、お優しいイワン様の労りだ・・・ハァ、ハァ、ルカの巫女ごときが頭に乗るな」

 「そう言うお前こそいい気になるな。この過酷な世界では、お前はただの獲物だ。すぐに死ぬ」

 「ぬうう・・」

 ユリスの言葉にダックスが目を見開いて掴みかかる。

 「ふははは・・・死にかけたばかりだというのに、まだまだ体力があるようだな」

バルバロスは水筒で口を潤しながら、いがみ合う2人を見て笑った。

 「バルバロス、お前もだ。この世界では、お前も餌に過ぎない。先ほどのアウカサウルスは、この世界では強者ですらない」

 「では、是非食物連鎖の頂点に立つ生き物と出会ってみたいな・・・ふはははは」

 「その時になって、悔やんでも遅いぞ」

 「ルカの巫女よ、聞くが良い。ライフフォースさえ手に入れられれば、この太古の時代に()む生き物など恐れるに足りぬ。そして、悪しきルクゼレ教信者どもをこの世界から一掃できる。この地に(ひそ)むお前たち、ルカの民にとっても悪い話ではなかろう」

 「バルバロス、そんなことのために・・・」

 「そんなこととは何だ。ルクゼレ教信者がルカの民を迫害した時、お前たちは何をした。この小さな大陸に住み、ひと時の安寧(あんねい)に満足していただけではないのか」

バルバロスは黒い杖を握った拳を震わせていた。

 「違うわ・・・私たちは、遥か昔に海を渡ったルカの民たちに起こっている惨劇を、ずっと知らなかったの。それを知った長の直系であるダディ様が、精鋭を率いてルカの民を救いに出たと聞いているわ」

 「ダディ様か・・・いや、違う。仲間の苦しみは、知らないでやり過ごせるものなのか、許されるものなのか。迫害を受けて死んでいったルカの民が、それを聞いたらどう思うかのぉ」

 「・・・貴方は、ルカの民を(あわ)れんでこんなことをしているの?」

 「俺は、宗教、王族、貴族らにも屈しない力がほしいだけだ。人が作り出したこの世の権力や財力、エネルギー、食料などの社会的食物連鎖の頂点に君臨するのだ。そして、我らを迫害してきた者たちに、真の神の裁きをこの手で与える。そのために、ライフフォースの力が必要なのだ」

 「真の神の裁きをこの手で?・・・貴方は正気ではない。そして、ライフフォースの恐ろしさを何も分かっていないのね」

 「ふははは、恐ろしさか・・・ライフフォースの真の使い方を分かっていないのは、お前たちルカの民だ」

 ユリスは盲目の黒ひげバルバロスを(にら)みつけていた。不意にユリスの背後から声がした。

 「キャプテンバルバロス、これまでの戦闘で、我らの犠牲は半数を超えました・・・」

 「イワンよ、俺はまだ生きている・・・(なげ)くでない。ライフフォースは近い」

 「・・・・」

 「さあ、ルカの巫女(みこ)よ、ライフフォースの結晶まで案内いたせ」

バルバロスの首には、ユリスから奪ったルカの民の宝「光明の鏡」が掛けられ、陽の光を反射していた。

ユリスは、その鏡に視線を向ける。

 「案内をしたら、その鏡は返してもらえるのね」

 「無論だ。俺は約束を違えぬ・・・お前が生きていればの話だがな」

 「・・・・」

ユリスは無言のまま歩き出した。

 イワンはユリスを護衛するかのように彼女の脇を歩いた。ダックスはそれを見て、不満げな目をしながら、イワンのすぐ後について行く。

 イグに乗ったバルバロスや海賊たちもこれに従った。


 ルカの民に案内された女神の祝福は、密林の中央にそびえ立ち、天を(おお)うが如く枝を四方に伸ばす古代樹の幹に辿り着いた。

 「遠くからでも古代樹の高さと大きさは分かっていたつもりだったが、真下で見上げると・・・枝と葉が空を覆っている。まるで、山か雲の様だ」

 デューンが顔を上げたまま感嘆していた。

 「ずっと見上げていると、首が痛くなるわ」

 レミが首を抑えながら顔を左右に振った。

 ダンも真上を見上げた拍子に落とした角帽を拾い、被り直しながら言う。

 「生命の源として信仰される理由が分かりますね」

 ゴジが古代樹にできた巨大なうろを指さした。

 「あそこがゲートだ」

 

 うろに入ると、ゴジが松明を照らした。

 そこには、巨大な空間が広がっていた。

 「この絵は、ルカの民が描いたのか」

橙色の光に揺れる壁画の様に描かれた絵を見てマナツが尋ねた。

 「古代のルカの民が描いたものだ」

 「・・・すばらしい・・・星座・・・当時の人々の生活の様子も描かれているわ」

ローレライが興奮気味に声を上げると、テラも指をさしながら呟いた。

 「あれは神様たちなのかな、人々が(あが)めているわ。あそこには人同士の争い。夜空に輝く大きな星もあるわ」

「あれはルカの神オリジネーター様たちだ。あのオリジネーター様たちがルカ種を創り出したと語り継がれている。あれはオリジネーター様同士の争いだ。夜空の大きな星に見えるものは、オリジネーター様が夜空へと旅立った時の乗り物だ」

ガイがテラに1つ1つ説明をした。

 「ルカの神オリジネーター様は何人もいたのね」

 「ああ、そう伝えられている」

 「ルカ種を創り出したとは、どういうことなの」

 「そのままさ。太古に最初の男女のルカ種の祖を創った。それが始まりだと・・・」

 「そのルカ種が人類の共通祖先なのね」

 「そういうことになる」

 「神様同士で争うって、何があったの?」

 「それは伝えられていない。でも、ライフフォースが原因だとも考えられている・・・ほら、あそこの絵・・・オリジネーター様からの神託を描いたものだ」

 「流れ星なの?」

 「いや、太古の昔にいくつかの星が降ってきてここに落ちた。それがライフフォースだという神託(しんたく)だ。そのライフフォースを探しにオリジネーター様たちは、この大地に舞い降りたと言われている」

 「ライフフォースを巡って、神様同士が争いをした・・・」

 「やがて、ライフフォースの守護者として、我らルカ種の祖を創ったとも伝えられている」

 テラは思念会話でマウマウに尋ねた。

 「マウマウ、オリジネーター様たちを(あが)める多くの人々の中には、リッキよりも大きな人や翼のある人、角のある人もいるよね。現代の人類にはいないような気がするのだけれども」

 『そうね。恐らくあの人たちはルカの民から分岐した種ね。現存している人類とは異なり、きっと、今は絶滅してしまった種よ。それと角と翼のある種は魔族かもしれないわね』

 デューンがテラとマウマウの思念会話に参加してきた。

 「やはり、魔族もルカ種から枝分かれした種なのだな」

 『そうなるわね』

 レミがもじもじしながらテラに近づいて来た。

 「レミ、どうしたの」

 「テラ、私は占いをしてみたの・・・そうしたら・・・」

 「何よ。はっきり言って」

 「古代樹の北は鬼門。鶴亀は吉・・・だって」

 「ぷっ、何なのそれ」

 「私にも分からないわ」

 「レミの占いは当たるからね。覚えておきましょう」

 この2人の会話を黙って聞いていたガイがレミに尋ねた。

 「・・・レミは占いをするのか」

 「うん、たまにね」

 「巫女みたいだな・・・その占の動物は・・・まあ、いいか」

 「ガイ、そろそろ出発だ」

 ゴジがガイにルカの民の宝「光明の鏡」を手渡した。

 「それは何?」

 「光明の鏡と言って、古代樹のゲートを通るための鍵だ」

 「鍵が必要なのね」

 「ガイ、頼んだぞ。必ずユリス様をお救いしろ」

 ガイは光明の鏡を大事に握りしめ、頷いた。

 古代樹のうろから一同が退出すると、ガイは光明の鏡で陽の光を反射した。それは一筋の光となって、うろの中へと伸びて行った。うろのから(ほの)かな光が漏れ出してきた。

 「ユリス様の身が心配だ。さあ、行くぞ」

 ガイが女神の祝福メンバーを急かす。

 ガイと女神の祝福は、再びうろへ入った。目の前には、光明の鏡の鏡面をそのまま大きくした様な形の光の面があった。

 「あれが古代樹のゲートだ」

ガイは歩みだすとゲートの鏡面に吸い込まれる様にして消えていった。キュキュもテラの肩から飛び立つと、一直線にゲートへ飛び込んでいった。

 「あ、キュキュ!」

テラが叫んだ。

 ダンが目を見開き興奮している。

 「まさにアーティファクト・・・あの(まぶ)しく光る平面が、太古の世界へと通じるゲートか。どの文献にも記されていない。正に神秘だ」

 ダンは迷いなく古代樹のゲートへ飛び込んだ。

 ファンゼムが吸い込まれていくダンの背中を眺め、ごくりと唾を飲んだ。

 「儂もあそこに入らんといけんかのう」

 リッキがその太い腕で、ファンゼムの肩を叩いた。

 「覚悟を決めろ」

リッキの言葉に背を押され、ファンゼムと他の女神の祝福メンバーたちは、次々に古代樹のゲートへ吸い込まれて行った。


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