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17 ヘッドウインド号VSミネルヴァの揺り籠号

 翌日からは、キャラベル船のヘッドウインド号とキャラック船のミネルヴァの揺り籠の航海に向けての必要物資や交易品の購入、交易ギルドの依頼で配達や借金回収など、多忙な日々を送った。交易ギルドの個人級については、テラとデューンそろぞれ1階級の昇級をした。

 グリーンドラゴン討伐の折に、ノドガルのギルドマスターと約束をした日の朝、冒険者ギルドへ訪れた。そこで、グリーンドラゴンの討伐報酬とドラゴンの心臓以外の素材代を受け取った。希少なグリーンドラゴンの素材は高額で、討伐報酬の1億ダルを遥かに上回る金額となった。

 収益の半額は、この遺跡の調査と保存にための資金となり、半額はメンバーで公平に分けていた。一人当たり1,800万ダルとなった。

 女神の祝福は、これまでの依頼とグリーンドラゴンの討伐もあり、チームB級からA級へと昇級した。マナツは冒険者個人A級からS級に昇級し、テラは個人E級からC級に、デューンは個人H級からF級となった。また、女神の祝福のメンバーもそれぞれ個人2階級の昇級を果たした。ローレライは、これまでの個人F級からのスタートとなった。併せて、キュキュの従魔登録も済ませた。

 冒険者ギルドからの情報では、この街にも多数の難民が避難して来ているという。

 「どこの国からの難民なのだ?」

マナツがギルド職員に尋ねると、

 「隣国ザーガード帝国からの難民ですよ」

ギルド職員の答えを聞き、デューンの顔色が変わった。デューンは、職員とマナツの会話に入って来た。

 「隣国ザーガード帝国からの難民って、ティタンの民も含まれているのか」

 「ティタンの民って、ザーガード帝国に滅ぼされた薄い桜鼠色の肌に白藍色の髪をした人たちですよね・・・あぁ、貴方もそうですね」

 「ティタンの民が含まれているのか」

 「そこまでは分かりませんが、難民は中央の公園の仮設キャンプ地にいますので、確かめてみればよいのでは」

 デューンは、冒険者ギルドと飛び出していった。その後をテラも走って追って出て行った。

 「なぜ、難民がこの街に?」

マナツの問いに、

 「なんでも、ザーガード帝国で皇帝エンペラードⅡ世が崩御し、次期皇帝のガブリエルが希望する民を国外に難民として送り出す施策をとっているからだ聞いています」

 「皇帝の崩御・・・次期皇帝の施策」

 「近隣諸国では、大量の難民を受け入れているみたいですよ。ザーガード帝国は強大な軍事国家で国内の機密事項は漏らしませんので、確かなことは分かりませんが、延べ十万単位の難民だとの噂があります」

 「そんなにもか。それに魔族は関係しているのか」

 「そこまでは分かりません」

 「そうか、ありがとう」

マナツは礼を述べると、女神の祝福のメンバーと共に冒険者ギルドから出て行った。デューンとテラの後を追い、街の中央公園に向かった。

 「キャプテン、儂らが生贄(いけにえ)のデューンを救ったことが原因で魔族との間に揉め事が生まれて、その結果の難民かのう」

 「それは、まだ分からない。元々、民を抑圧しての帝国だったから、破綻したのかもしれない」

 「デューンもティタンの民の事を気にかけていたから、気が気ではないでしょう。デューンには、親類のティタンはいないと言っていましたがどうなのでしょう」

ダンも心配をしている。

 「ああ、デューンは、肉親も親類もいないと言っていた。だが、この先何年かかろうとも、ティタンの民を開放することを目標としている」

リッキが目の前の人盛りを見て言った。

 前方に中央公園が見えてきた。


 中央公園で役人に話を聞くと、このノドガルの街で既に1万人を超える難民が避難して来ていて、今後も増えていく可能性が大きいという。難民から話を聞くと、民の蜂起によって、皇帝エンペラードⅡ世が自死に追い込まれた。次期皇帝のガブリエルが希望者に対して、難民として他国への移住を認めたということだった。ほぼ全ての奴隷は移住したのではないかと言っていた。

 デューンとテラを見つけることができた。

 「デューン、この中にティタンの民はいたか」

リッキが尋ねた。

 「・・・いなかった。千人位いの集団で避難するティタンの民を見たと言う人はいた」

 「それは誠か」

 「ティタンの民は、誇り高い民族だったので最後まで抗戦した。征服された時には全滅に近かったと死んだ父さんから聞いた。生き残った僅かな人たちも奴隷として過酷な使役により、その多くが死に、また生贄として死んだ。やがて、ティタンの民は、帝都ビューヒルトに集められたが、千人足らずにまで減っていたという」

 「それならば、生き残っているティタンの民の全てが帝都ビューヒルトにいて、全員が難民として国外に避難したということか」

 「そうかもしれない。ティタンの民の集団は北東を目指していたとも言っていた」

 「こことは真逆のゲルドリッチ王国だな」

 「・・・無事に辿り着ければの話だけれども」

 マナツが口を開いた。

 「よし、それならゲルドリッチ王国へ向かうぞ。そこで聞き込みだ」

 「え、いいのですか」

 「当たり前だ。それにゲルドリッチ王国は我々の次の目的地だ」

 「ありがとう」

 「何を遠慮しているのよ。デューンらしくもない」

ハフが、デューンの頭を撫でた。ファンゼムもダンもリッキも撫でた。ローレライも加わり、テラも撫でた。

 「テラ、お前は気易く触るな」

 「デューンが、お礼を素直に言えたご褒美よ」

 キュキュ キュキュッ、キュキュッ、キュイーンとキュキュが鳴いた。

 「ねえ、この子は、言葉がわかるのかな。キュキュが鳴く時は、こんなタイミングが多い」

マナツもハフも首を斜めに傾げた。


 2日後の早朝 

 昨日は、ロンさんの元を訪れ、これまでのお礼と出発の報告をした。チョコさんも息子のジレス君、娘のパリスちゃんとも話をした。造船会社『ロン&チョコ』の主任設計士のダッチロイさんと一緒に最後の点検を済ませた。

 「ねえ、母さん本当に私がキャラック『ミネルヴァの揺り籠号』の船長で良いの?」

 「何度も話し合ったことじゃない」

 「そうや。あの船は少人数で操船できる優れものじゃ。しかし、魔力がないと操船はできん。それに、新しい時代のための最新船じゃけん、そのクルーも未来を航海する者が適任なんじゃ」

 ファンゼムがテラの頭をくしゃくしゃにした。

 「テラ、そんなことより、ミネルヴァの揺り籠のクルーは大丈夫なの?かなり大変よ」

 「うっ、ローレライとマウマウ、キュキュは良いとして、デューンか・・・いざとなったら海に放りだすわ」

 「あははは、それでいいわ。デューンは、こちらのヘッドウインド号で拾い上げるから」

 「あはは、その時はお願いします」


 澄み渡った空気に濃い青色の空がいつもより深く見えた。空からは、白いカモメの声が響く。穏やかな波が打ち寄せては2隻の船を揺らす。心地よい揺れであった。海は見渡す限りマリンブルーの染まり、水平線には白く薄く見える雲が浮かんでいた。

 ノドガル出発の時がきた。

 マナツのセミロングの黒髪は潮風に靡いている。マナツは深く息を吸い込んだ。

「これよりゲルドリッチ王国を目指す。途中でザーガード帝国と魔大陸ラゴン大陸の海域を進まねばならない。気を抜くな。ヘッドウインド号、出航!」

 キャプテンマナツが声を上げた。

 「「「「了解」」」」

 テラの朱色の長い髪が風に靡く。黒い瞳で遥か遠くの海と空との境を見つめた。テラは操舵を握ったまま、大きく息を吸い込んだ。

 「いよいよだ」

胸の高鳴りが抑えられない。デューンもローレライも高揚を隠せない。

 「これよりゲルドリッチ王国を目指す。ミネルヴァの揺り籠号の処女航海となる。ミネルヴァの揺り籠号出航!」

 キャプテンテラの声が響く。

 「うおおぉぉー、おっしゃ!」

 ヤードとセイル操作装置に手を置いて、デューンが雄叫びを上げた。

 「抜錨(ばつびょう)

 「了解」

 ローレライが船首から船先の水面を見ながら答えた。ミネルヴァの揺り籠号の錨を上げた。


 「デューン、港内で帆張り過ぎー」

 「魔力の調整が難しいんだよ。細かい事を言うな」

 ローレライは、長い銀色の髪を潮風に靡かせ、緑の瞳で水平線を眺めた。

 「あははは、仲間との航海は最高―!」

と、声を張り上げ、両肩を揺さぶった。

 誰ともなく笑い出した。3人の笑い声は次第に大きくなる。

 「「「あはははははっ」」」

 キュキュ キュキュッ、キュキュッ、キュイーン!

 高らかな笑い声が青い空とマリンブルーの海にこだました。笑いながら3人は眼と眼を合わせた。


 復路は主に向かい風となる。先頭に三角形のラティーン・セイルを持つキャラベル船ヘッドウインド号。続いて、フォアとメインマストに横帆、ミズンマスト(後方のマスト)に縦帆キャラック船ミネルヴァの揺り籠号が出航した。

 港から出てから数時間後には、先頭を航行するヘッドウインド号が、遥か遠くに見えた。向かい風を浴びて、ヘッドウインド号は船足を速めながらジグザグに進んで行く。後方のミネルヴァの揺り籠号は、フォアとメインマストが横帆のため、向かい風を受けての航行角が横方面に大きくなりヘッドウインド号から離れるばかりであった。デューンのヤードとセイルの操作に不慣れなことが大きく影響していた。

 「ハァ、ハァ・・全然追いつけない」

デューンは、最新式の魔石を動力とする帆の操作を繰り返し、既に疲労困ぱいである。

 「デューン、根性を見せなさい」

テラが操舵を握り叫ぶ。

 「向かい風で、このキャラックは、真っ直ぐには進めない。無駄に斜めばっかり行き来している。どでかの鈍足だ」

デューンが嘆く。

 「取舵いーぱーい」

テラと叫ぶと、舵を切った。ミネルヴァの揺り籠号が左に旋回していく。

 「デューン、もっと速くヤードの向きを変えて」

 「ぐっ、この調整が難しい・・・」

 ヤードが向きを変え、セイルが風を捉えて膨らむ。

 ローレライは、船首に立ちその長い銀髪を潮風に泳がせていた。手には航海器具をもっている。

 ローレライが振り向き、デューンに大声で言った。

 「デューン、この船は良い船よ。この船は構造上、向かい風では船速が出ないけれども、貴方がヤード操作に慣れてロスを減らせれば、3倍のスピードで前進できそうよ」

 「ぐっ、分かっているって」

デューンは、息を切らしながら叫び返した。

 「でもね、デューン。安心して、後30分程の辛抱よ」

 「よく聞こえなかった。何だって」

 「30分経てば楽になるって言ったのよ。そして、その1時間後にはヘッドウインド号に追いつくわ」

 「ローレライ、いくら俺がヤード操作に慣れてもそれは無理だろう」

 「今に分かるわよ」

ローレライは航海器具に目をやりながら呟いた。

 その時、遥か彼方を進むヘッドウインド号から、手旗信号が見えた。

 「コ ノ テ イ ド ツ イ テ キ ナ サ イ、 ヒ ヨ コ ド モ」

ヘッドウインド号の見張り台では、ハフが両手で小旗を振っていた。

 「ハフ、勝手にメッセージを変えたわね」

マナツがニヤリとしてハフを見た。ハフの焦げ茶と茶色の縞のある尻尾は真っ直ぐ上に伸び。パタパタと左右に揺れていた。

 「キャプテン、追加しただけですよ。ヒヨコども、と」

ハフも見張り台からニヤリとした。尻尾は勢いを増して揺れている。

 「あ、キャプテン、ミネルヴァの揺り籠号から返信が・・・」

 「ハ ン デ ハ コ レ ダ ケ デ ヨ イ ノ カ、 イ チ ジ カ ン ハ ン ゴ ニ ハ オ イ ヌ ク」

 「何それ」

ハフが呆れている。

 マナツは、意地悪そうな笑みを浮かべ、クルーに向かって指示を出した。

 「ヘッドウインド号、50から70%へ船速アップ」

 「おー怖、子連れ女豹の本性が出た出た」

ファンゼムが笑いながら潮風に向かって言った。リッキがヤードを上げる。

 ヘッドウインド号は加速し、逆風の中を突き進む。これまでは、処女航海のミネルヴァの揺り籠号とその若いクルーたちを案じて、半速で航行していたのだ。

 「しかし、驚きやなー。『ロン&チョコ』の防水加工一つで、船速がこんなにも上がるなんて・・・夢のようや」

ファンゼムが上機嫌で言った。

 「ああ、全くだ。素晴らしい技術だ・・・ハフ、手旗信号を。ケントウヲイノル」

と、マナツが言った。

 「了解」


 ミネルヴァの揺り籠号では、デューンが荒い息をしながら大声を出した。

 「おい、ローレライ、何を勝手に返信しているんだよ。ヘッドウインド号がスピードを上げたぞ」

 テラも不安になって、

 「ローラライ、これ以上離されたら、迷子になるわよ」

 「テラ、私は航海士よ。この船を決して迷子にはさせないわ。それにね、1時間半後には追い付けるわよ。ミネルヴァの揺り籠号の航海士を信じて」

両手に旗をもつローラライがテラを見つめた。

 「へいへい、分かりましたよ。もしも、ヘッドウインド号に追いつけなかったら、ローレライは夕飯抜きな」

デューンが睨むようにローレライに言うと、

 「いいわよ。でも、追いついたらデューンが夕飯抜きよ」

 「その言葉を忘れるなよ」

 ローレライの視線とデューンの視線がバチバチと火花を散らす。

 「2人とも何を言っているのよー。ヘッドウインド号に勝ったら、今夜は皆でお祝いよ。豪華にいくわよー!」

と、テラの言葉に、

 「「了解」」

デューンとローレライは、白い歯を見せ、拳に親指を立てた。

 そう話をしている間にも、速度を増したヘッドウインド号は、前方洋上で更に小さくなっていた。


 30分後に、風が止まった。

 「テラ、風が止まったぞ」

 「ローレライ、これは何?」

 「いよいよ反撃の時が来た。来るわよ追い風の突風が・・・デューン、セイルは半分で半速。風を捕まえたら、一気に行くわよ」

 「え、追い風・・・?」

テラが聞き返した。

 「航海士を信じて」

 「分かったわ、デューン、追い風に備えて」

 「本当かよ・・了解」

 その時、緩やかで心地よい風がテラの背を押した。テラの朱色の髪がサラサラと風に靡いて前方に揺れた。

 「追い風?」

 「来るわよ。・・・衝撃に備えて」

 突風がミネルヴァの揺り籠号のセイルを膨らませた。ミネルヴァの揺り籠号は衝撃と共に、加速を続け、船首で波を裂き、一直線に海面を滑って行った。

 デューンがセイルを満帆に張った。白い波しぶきが船側に飛ぶ。最早、波の上を跳ねているようにさえ感じた。テラやデューン、ローレライは近くの物にしがみつく。

 「凄い速さ・・・こんなに速いなんて・・・」

テラが操舵を握りながら興奮を隠せない。首に抱き付いているキュキュも喜んでいることが感じられた。

 「素晴らしいわ・・・これがミネルヴァの揺り籠号の速さよ」

ローレライが髪を乱しながら叫んだ。

 「すげー、凄いぞー。ひゃほぉぉぉー!」

デューンが白い歯を見せて声を張り上げた。

 全身が桃色の短い毛に覆われ、雪だるまの様な体型のキュキュが、背中に生えた藍色のコウモリに似た小さな翼を広げた。キュキュはテラの首から手を放した。

 「あ、キュキュどうしたの」

テラが振り向くと、キュキュは翼を広げて甲板の上を滑空していた。

 「あぁー。キュキュが飛んだー。飛んだー」

テラが歓喜の言葉を発すると、デューンとローレライも滑空するキュキュを見た。

 「おおぉ、キュキュが飛んでいるぞ」

 「素晴らしいわ。感動的瞬間」

 キュキュはそのまま旋回してテラの首に抱き付いた。

 「キュキュ、素晴らしいわ。私、嬉しい」

テラはキュキュを抱きかかえて頬擦りした。

 キュキュッ、キュイーンとつぶらな瞳で鳴き声を上げた。

 「もうー、かわいいー」

テラがきつく抱きしめると、ローレライもキュキュを撫でていた。

 キュキュッ、キュイーン

 テラは、思念会話でマウマウに話しかける。

 「ねえ、マウマウ。今、キュキュが初めて飛んだの。飛んだのよー」

 『見ていたわよ。順調な成長ね』

 「赤ちゃんが、初めて歩いたところを見た親の感動って、これなんだね

 『すっかり、キュキュの母親ね』

 「うん、でもね、こんなに小さな翼で飛べるのが不思議なの」

 『そうね。キュキュは翼で飛んでいるのではなく魔力で飛んでいるのよ』

 「魔力で飛んでいるの?」

 『そうよ、キュキュは膨大な魔力を持っているわ』

 「そうなんだ。私と違ってたくさんの魔力があるのかー。嬉しいー」

 

 「キャプテン、大変です。見失いかける程離れていたミネルヴァの揺り籠号が、あそこまで迫っています」

ハフの驚きの声を上げて後方を指さした。クルーたちは訝し気に後ろを見る。

 「この追い風に乗ったな」

とリッキが言った。

 「この追い風の強風を読んでいたのか・・・あのローレライだな・・・」

マナツが一人呟くと、ダンが隣で、

 「実に有能ですね。この風を予測出来るなんて・・・一体どうやったのか興味深い」

ダンが眼鏡を指で上げながらマナツに話しかけた。

 「おーい、皆よく聞けー。テラたちが言っていた1時間後に、このヘッドウインド号がミネルヴァの揺り籠号に追い抜かれるなんて事が起きたら大惨事だ。そしたら全員夕飯は抜きじゃぞー」

ファンゼムが追い風の中、甲板によく響く声で言った。

 「えー、それは困るなー」

ハフが笑顔で応じる。まだ表情には余裕が窺えた。

 「飯抜き、そんな大惨事が・・・よし、気合いをいれていくぞー!」

リッキが咆えた。

 「抜いた飯は、そのままミネルヴァの揺り籠号に祝いの品として献上するぞー。じゃが、儂らは、かーーつ!」

 「「「おぉー、 儂らは勝ーっ!」」」

 マナツは口元に笑みを浮かべると、

 「ヘッドウインド号。最大速度!」

 「「「「了解」」」」

 ヘッドウインド号は満帆になり、マリンブルーの海に2筋の白波が描かれていった。

 「ヘッドウインド号も船速を上げたようだけど、近づいている」

テラが喜々として言った。

 「ええ」

 「こうして眺めると、ヘッドウインド号もかなり速い船だったんだなー」

 「そうよ、ヘッドウインド号は冒険者仕様の快速船なのよ。それに喫水(水面から船底までの距離)が浅いから川を遡ることもできるの」

テラが自慢気に話す。

 「ええ、確かにヘッドウインド号も素晴らしい船。そして・・・そのクルーも」

ローレライがヘッドウインド号に憧れの眼を送りながら言った。

 「さあ、勝負よ」

テラはそう言うと、キッと口を結んだ。テラの周りでは、キュキュが楽しそうに旋回を繰り返していた。

 ジパニア大陸の南端の海を、トビウオのように2艘が滑走して行った。


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