13 啐啄(そったく)
朝早く、ダンとデューンは袋を抱え、エメラルドシードの採集に出発した。タフロンの街から徒歩で30分程の森の奥にエメラルドオレンジの野生の親樹があった。初夏ではあるが、森の木陰は涼しく感じられた。樹々の枝や葉の隙間から木漏れ日が輝き、小鳥の囀る声がしていた。時折、樹々の根元にある茂みからガサガサと音がし、ハーフラビットの駆ける姿が見え隠れした。
「この森は豊かですね。樹勢旺盛で形もよい。野草も多種生長しています」
「ダンさんは、森の中が怖くはないのですか」
ダンは歩きながらずれた肩掛け鞄を戻しながら言う。
「大丈夫ですよ。野草の採集は慣れていますし、今日はデューンもいるから。それに森の外から中に向かって風が吹いています。緩やかなテイルウインド、つまりフォローの風ですね。実に良き日です」
森の中の道端の草を摘みながらダンは言った。
「そう言えば背に風が当たっていますね。これって・・・風上にいるこちらの臭いを森の中に潜む魔物に伝える危険な風向きではないのですか」
「そうとも言えますが、何事も良し悪しがありますよ。置かれた環境をどう味方につけるかです」
「肝が据わっていますね。俺なんかまだまだですよ」
デューンは、茂みから飛び出し、駆け去るハーフラビットを横目で見ながら言った。
「私は貴方を信頼しています。あ、これは・・・貴重なペンギン草だ。これだけでもこの森に来たかいがあった」
「俺の炎魔法は森の中では、よほどの好条件でなければ、使えないと思いますよ。業火は森林火災になりますから」
「ほほぉ、面白いことをおっしゃいますね。貴方はティタンの民ですよね。ティタンは本来土属性の魔法が得意のはずです」
「俺は土魔法を使ったことはないです」
「大丈夫です。ティタンの血で土魔法を扱えますよ・・・たぶん」
ダンはペンギン草を採集しながら言った。
「大丈夫かな・・・まあ、魔物がでたら、威嚇のために小さな炎でもいいか」
「小さな炎を使えれば十分。戦術次第ですよ。それに、貴方は土魔法が使えますよ・・・だとよいのですがね。はははは」
角帽と眼鏡の男性ダン・ウィートは、薬学者である。交易・冒険者チーム女神の祝福においては、航海士を務めながら冒険の地ではその場所の詳細な製図を担当している。上背はあるものの細面の如何にも学者といういで立ちの非戦闘要員である。冷静で穏やかな性格であるため、デューンは不快な思いを抱くことは無かったが、こと戦闘に関しては期待できない。今回は皆に上手いことを言われて、ダンの護衛として自分が参加する羽目になったと考えていた。
デューンは、「魔物に出会ったら、ダンは逃げ回るだけだろうから、俺が倒せば良いだけだ。さっさとエメラルドシードを採集して、タフロンの街へ帰りたい」と内心では考えていた。だが、ダンは森に入ると各種野草の採集に夢中になり、目的地までは長い道のりとなっていた。
とんだ貧乏くじだ・・デューンはそんな考えが頭を過ぎっていた。
2人は森の中を進んでいった。鳥の囀りが止み、辺りは静寂に包まれた。ダンの野草を摘む手が止まった。辺りを見回している。
「ダンさん、どうかしましたか」
すると、ダンは人差し指1本を口に当て注意を促した。デューンも辺りの気配を探る。
前の茂みがガサガサと音を立てた。デューンは、息を殺して身構えた。
茂みからブラックタイガーが飛び出して来た。デューンは咄嗟に、ダンを庇う様に前に出た。ブラックタイガーは森の道を塞ぐようにして、低い体勢でグルルルッとこちらを威嚇し始めた。
デューンはナックルグローブをつけた左右の拳を胸の前で構え、ブラックタイガーに正対した。
「ダンさん、この虎の魔物を倒さなければ危なそうです。俺1人で倒しましょうか」
「かなり危機的状況ですね。でも、戦って勝つ必要はありません」
「周りに茂みがあって業火は使えないのですよ。格闘で・・・え? 勝つ必要がない?」
デューンは顔をブラックタイガーに向けたまま、横目でダンを見た。
「ええ」
ダンはそう言うと、肩掛け鞄に手を入れて、中から直径3㎝程の球状の丸薬をいくつか取り出した。ブラックタイガーの前に冷静に転がし始めた。
「あの丸薬に小さな炎を撃ってください」
「ブラックタイガーではなく、あの丸薬に炎で良いのですか」
「はい、急いで」
ダンは口に布を当てて答えた。
デューンは、ブラックタイガーの前に転がる丸薬に極小の炎魔法を撃った。ブラックタイガーは炎に驚き後ろに跳躍したが、2人に狙いを定めてまた威嚇し始めた。
丸薬から白い煙が激しく立ち上った。その白い煙には激しい刺激臭を伴っていた。風上のデューンですら、それが目にしみ、咽るような息苦しさを覚えた。白い煙は緩やかなフォローの風に乗って、道を塞ぐブラックタイガーへ向かって行った。やがて白い煙がブラックタイガーを包んだ。
ブラックタイガーは、ガフッガフッと咽る様な声を上げると森の奥へ跳び去って行った。
「ゴホッ、ゴホッ、この白い煙って・・・あの丸薬は火薬ではなかったのですね」
「ふふっ、私の作ったただの防虫用の丸薬ですよ」
「防虫用の丸薬であのブラックタイガーを・・・ゴホッ」
「この煙の刺激臭には鼻が曲がりますからね。ブラックタイガーも災難でした」
「・・・もしも、俺らがアゲインストの風を受けていたら、どうしたのです」
「まあ、その時は、別の方法です」
「・・・ダンさんの戦闘力は、正直に言って期待をしていませんでした。むしろ不安でしたが、これが長年に渡ってB級の女神の祝福のメンバーを張ってきた力・・・個人の攻撃力のみに頼る俺の考えは浅いと感じました」
「買い被り過ぎですよ。でも、素直なところはよろしい。強い力はそれだけで素晴らしい。ただ、それに頼り過ぎると、それを上回る力の前では敗北しかない。今のは、己の弱さを知る弱者の戦い方です」
「・・・弱者の戦い方」
「さあ、目的はエメラルドシードを採集です。ぐずぐずしてはいられません。進みますよ」
「遅くなった原因は、今の今まで野草採集に夢中だったダンさんの行動ではないですか」
デューンがそう応じたが、ダンは涼しい顔をして既に歩き始めていた。
爆発的な火力をもつデューンは、敵を己自身の力で捻じ伏せることしか考えていなかった。ティタンの民の開放という大望がある以上、遠い未来には、ザーガード帝国との闘いは避けられない。その戦いでも、この考えの延長線上での発想しかなかった。仲間の能力と環境を戦術に組み込み、それを最大限に生かし、敵を倒さずとも目標の達成をする弱者の戦い方。デューンにとって、目から鱗が剥がれ落ちることであった。
先ほどのダンの言葉が頭を過ぎった。
「私は貴方を信頼しています」
仲間への信頼があればこその戦術なのか。
「俺、この依頼をダンさんと一緒にできて良かったと思います」
デューンは、ゴホッ、ゴホッと咳き込みながら言った。
2人はエメラルドシードの採集を無事終えてタフロンの街に帰って来た。冒険者ギルドの受付嬢にエメラルドシードを渡した時に、受付嬢から2人を避ける様な素振りがあった。丸薬の強烈な臭いがまだ漂っていたのだ。初夏であるにも関わらず、暫くの間、2人は虫に刺されることはなかった。
「母さん」
女神の祝福のメンバーと酒を飲んでいたマナツに向かい、宿屋の食堂に駆け込んで来たテラが叫んだ。
「テラ、どうしたの?」
「卵が動いているの。それに中からカチカチと音が聞こえてくるの」
「おお、いよいよじゃな」
ラームを片手にファンゼムが言った。
「どうしたらよいかな」
「もう少し観察をしなさい。卵にヒビなどが入ったら、孵化の時」
ダンがそう言うと、
「だって鉱石の様な硬さの卵だよ。あんなの内から割れるはずがないわ」
不安そうなテラを見てマナツが言う。
「大丈夫よ。どんなに硬い卵でも、割って出てくるわ。そうやって命を繋いできたのだから。テラ、
卵にヒビが入ったら啐啄ね」
「啐啄?」
「卵の中から雛が出ようとして卵を割る。親はそれに呼応して外側から殻を割ることよ」
「分かった」
慌てて部屋に戻ろうと駆け出したテラの背中に、
「テラ、生き物にもよるけれども、インプリンティングがあるかもしれないので、テラが1人で啐啄をして、孵化した雛を撫でてあげるといいよ。生まれて初めて見る動くもの、テラを親と認識するかもしれない。それから山羊のミルクとパンを持っていきなさい」
マナツの声に、テラは了解と言って、ウエイターからミルクとパンを受け取ると走って行った。
「テラは孵化を楽しみにして、片時も手放さなかったからね。もう親の気分なのね」
ハフが走り去ったテラの残像を追う様にして、笑顔で言った。
「マウマウ、もう啐啄をした方がいいかな」
『もう少し観察してみましょう。何の卵か分からないから、そのタイミングを見た方がよい』
「う、うん」
テラは居ても立っても居られなかった。ベットの上に置かれた卵を横目に、その周りをうろうろと歩くばかりだった。
卵が、カリカリ、コツコツ、ゴトゴトと音が聴こえ断続的に揺れる。
「もう、いいかな」
『まだよ。テラ、落ち着きなさい』
また歩き始める。フーッと1つ大きな息を吐くと、音をたてる卵を見つめ、
「もう、いいかな」
『まだよ』
テラは飛願丸を抜いて黒光りする刀身を眺めた。
『飛願丸で何をするつもりなの』
「この卵は鉱石の様に硬いから、もし割れなかったらこの飛願丸で殻を割ろうかと・・・」
『馬鹿な真似は止めなさい。どこに世界にアダマンタイト製の長刀で啐啄する人がいるのですか。雛の頭が割れるかもしれないわ。冷静になりなさい』
「・・・・」
テラは飛願丸を鞘にしまうと、また行ったり来たり歩き出した。
テラは椅子の背を胸に当て、座りながら卵をじっと眺め出した。静かな時の中で、カツカツという音とテラのフーッと吐き出す深い息だけが聴こえた。
カツッ、カツッ、パリッと卵にヒビの入る音がした。
テラは身を乗り出して卵の表面を食い入るように眺めた。
「マウマウ、今、パリって音がしたよね。この細い線はヒビ?」
手に取ったマウマウに興奮した声で確認する。
『ええ、私にも聞こえたわ。孵化の時がきたのよ。啐啄をして』
テラはコツコツと音のする場所を外側からコンコンと手で叩いた。鉱石の様な硬さであったが、雛が内側から削っていたのであろうか、殻が凹んだ気がした。
「待っていてね、私の赤ちゃん。もう少しよ、もう少しだから。さあ、殻を一緒に割ろうね」
テラは祈る気持ちでまだ見ぬ雛に語り掛けた。コツコツ、コンコンと卵の内側と外側から、交互に、まるで呼応したように殻を叩く音がする。卵も大きく揺れている。
「卵の上の殻が崩れたわ」
テラは声を上げた。
『テラ、焦らないで。もう少しよ』
「うん、分かっているわ」
コツコツ、コンコン、
「さあ、出ていらっしゃい。私のベビィちゃん」
キュキュッ、キュキュッ、キュイーンと卵から声がした。
「わぁー! キュキュッだってー。マウマウ聴こえた?」
テラは歓喜の声で尋ねた。
『聴こえたわ。キュキュッと鳴いていた』
「キュキュちゃん。もう少しよ。お母さんと一緒に頑張ろうね」
キュキュッ、キュキュッ、キュイーン
殻の内と外からコツコツと叩いて硬い殻を崩していった。殻に開いた穴から雛が顔を出した。丸い頭に真ん丸の黒い瞳、短い桃色の毛に覆われていた。
「キュキュちゃん、私のキュキュちゃん。なんてかわいいの」
テラは両手を口に当てて叫んだ。
そこからは殻を剥がすように割って雛を殻から出した。
テラはキュキュを両掌で包み込むように持ち上げて頬擦りをした。テラは感動で目頭が熱くなるのを感じていた。視界がぼやけて、キュキュをよく見ることが出来なかった。雛はキュキュッ、キュキュッ、キュイーンと鳴いていた。
テラは腕で目を拭うと、
「あなたはキュキュよ。私はあなたのお母さんのテラ。よろしくね」
キュキュッ、キュキュッ、キュイーン
掌に座るキュキュを改めて見ると、体長は掌サイズ、全身が桃色の短い毛に覆われていて、雪だるまの様に丸くボヨンとした胴体に丸い頭がついていた。胴体からは短い手と足が2本ずつ生え、背中には藍色のコウモリに似た小さな翼がついていた。全身を撫でてみると頭に2つ、尻に1つ微かに突起らしきものがあることに気付いた。
キュキュッ、キュキュッ、キュイーンと鳴いて、テラの腕を伝い肩に上がってきた。テラの首筋の後ろ側にペタンとしがみ付いた。
「キュキュ、なんてかわいいの。私がお母さんと分かるのね」
『テラ、おめでとう。次よ。何を食べるかだわ。取りあえずミルク。飲まなかったらパンをあげてみましょう』
テラは首からキュキュを下すと、カップに入ったミルクを小皿に移し替えてキュキュの前に置いた。キュキュは小皿に近づくと、ミルクの臭いを嗅いているようだった。キュキュは小皿にもたれ掛かるようにして1口ミルクを飲んだ。キュキュは全身をブルブルと震わせた。
キュキュッ、キュイーン
それからは小皿に顔を埋める様にして、休むことなく飲み続けていた。
「ミルクを飲んでいるわ」
『キュキュは不思議だわ。卵生なのにミルクを飲むとは。まるで哺乳類のよう』
「よかったわ。ミルクを気に入ってくれたみたい」
キュキュは顔を上げると、ゲブッとゲップを吐く。そして、テラの腕を登りはじめた。テラがじっとしていると、首筋に抱き付き、そのまま寝始めた。
「キュキュ・・・寝ているの? マウマウ、キュキュは落ちないかな」
『なんとも言えないけれども、そこに自分から登り寝始めたのだから、大丈夫かもしれない』
「サク様と黒雲にキュキュが生まれたことを知らせないといけないね。そうそう、コモキンにいるレミとケンにも知らせなくっちゃ」
テラは、視線を斜め上に向け、満面の笑みを浮かべてその喜びを分かち合える瞬間を、想像していた。
コンコンとドアをノックする音がした。
テラはキュキュを起こさないように、そろりそろりと歩き、ドアを開いた。外にはマナツがいた。
「母さん、生まれたわ。キュキュが生まれたの」
マナツがテラの後ろに回って、首に抱き付いているキュキュを見た。
「まあ、なんてかわいいの。テラ、おめでとう」
「ありがとう。母さん」
マナツがドアの外に顔を出して声を掛けた。
女神の祝福のメンバーも部屋に入ってきた。
「これがあの卵から孵ったのか」
「キュキュです」
「儂も初めてみる生き物やわ」
「私も初めてみる生き物です。非常に興味深い。どのような生き物に成長するのだろうか」
「かわいいわね。触ってもいい」
「どうぞ」
「モフモフ、ぷよぷよしているわ。かっわいいー」
「テラ、よかったな・・・」
「デューン、ありがとう。かわいいでしょう・・・キュキュ、これがおじさんのデューンよ」
「お、おじさんとは何だ」
デューンが腹を立てていると、
「デューンは私の弟。そしてキュキュは私の子供。だから、デューンはキュキュのおじさんよ」
「弟とかおじさんとか勝手に決めるな」
「テラ、ということは、私がおばさん?」
ハフが不満そうに言う。
「聞き捨てならないわね。私はおばあさんになるのかい」
マナツがたたみかけた。
テラは真っ赤な顔をして、ばつの悪そうな顔で、
「あ、あのぉ・・・それは・・・キュキュのお姉様。そう、お姉様たちよ」
「それなら儂はお兄様かいな」
ファンゼムが笑いながらテラに言った。
「え、・・・まあ、そうなるわね・・・」
「なんでマナツさんやハフさん、ファンゼムさんが、お姉様とお兄様で、俺がおじさんなんだよー」
デューンが頬を膨らませて不満を露わにした。
「デューンの主張はもっともだな。これで女神の祝福に新メンバーが誕生したのだ。テラ、デューンも気持ちよく祝福できるようにしてやれ」
リッキがテラを見つめた。
「デューンごめんね。お姉様やお兄様はなしでいきます」
「儂はお兄様でもよいのじゃがな・・・」
「あははは、では、ファンゼムさんだけお兄様で」
ファンゼムは白い歯を覗かせて、サムズアップをした。
女神の祝福のメンバーは、口々にあれは何の生き物だろうかなどと、詮索しながら退室して行った。
『テラ、キュキュがどのような生き物かを知りたければ、鑑定をすればよい』
「生まれたので鑑定ができるようになったの? ・・・あ、でも、今は止めておくわ」
『どうしたの』
「キュキュが、成長していく姿を見守る方が、驚きと喜びが大きそうだから」
『それはそうね。鑑定はいつでもできるからね。暫くの間は、ミルクでよしとしても、その後も考えないとね』
「うん、楽しみ。サク様から託されたものだし、食べ物も手に入り易いものだと思うわ」
『あれこれ考える楽しみがまた1つ増えたわね』
「ふふっ、キュキュ、ゆっくり、大きく育ってね」
キュキュはテラの首に抱き付いたまま寝ていた。
翌日の朝
テラは陶器製の哺乳瓶と小皿、布団などの用品を買いに街に出た。
テラの首に抱き付く謎の生き物を見た人々は、キュキュに気付くと避ける様に道を空けたり、近づいて来たりしながら、
「あれは、人形?」
「魔物の子供? 危険はないの?」
「かわいいー」
「ママ、私もあの子がほしい」
「こら、指をさしてはダメよ。噛まれるわよ」
と、ひそひそと話す声が聞こえてきた。
テラはまんざらでもなかったが、危険の言葉には反応していた。
「この子は、キュキュ。危険はありません。人を噛んだりもしません」
テラは声を張り上げて繰り返し言っていた。
タフロンの警備兵に誰何されることもあったが、テラがB級の交易・冒険者チーム女神の祝福のメンバーだと知ると、テイムされた獣魔かと勝手に納得し、
キュキュッ、キュキュッ、キュイーンとキュキュが鳴くと、「はいはい、ミルクがほしいのね」
と、献身的に面倒をみるテラを微笑ましく見ていた。
「従魔登録がまだなら、必ずするように」
テラに警備兵が話していた。
2日目ともなると、キュキュにかわいいと声をかけたり、触ったりする人たちも増え、テラもホットしていた。
幼い子に、
「キュキュちゃんのお母さん、キュキュちゃんお昼寝なの? かわいいね」
などと声を掛けられると、テラはしみじみと幸せを感じていた。
女神の祝福メンバーは、タフロンの街に滞在していた8日間に、冒険者ギルドの依頼を3つこなした。この街での依頼達成によって、テラは個人冒険者として級が上がり、交易G級・冒険者E級となった。また、デューンも個人交易I級・冒険者H級となった。
女神の祝福は、ドリアド経由でヘッドウインド号を停泊させている港町ノドガルを目指して出発した。




