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5 白翼の魔女

 レミとケンが港で見送りしてくれた。テラは胸がキュンと締め付けられるような不思議な心の痛みを感じながら、甲板で腕を振り続けている。レミもケンも懸命に腕を振っている。

 レミが桟橋から叫んだ。

 「テラ! 本当はすごく嬉しかったのー」

 「何がー」

 「冒険者に誘ってくれたことー」

 「ありがとうー」

 「いつか、私を冒険に連れて行ってねー」

 「約束するー」

 「約束よー」

 「レミー、ケンー、一緒に遊んでくれてありがとうー。楽しかったわー」

 「テラー、私もよー」

 「僕もー」

 涙の別れ。これまで自由に友だちと遊ぶ機会をほとんど持てなかったテラにとっては、友だちとこの様な別れは初めての経験であった。

テラは、もう人が見えなくなる程離れた港をいつまでも眺めていた。テラの朱色の髪は、馴染みのある潮風に靡いていた。


 「レミとケンは良い友達だったな」

と、マナツが笑顔で言った。

 「うん、別れるのは寂しいけれども、また会えるから」

 「そうだな」

 「テラさん、ゲルドリッチ王国の首都オーブルでも友達をたくさん作れますよ。友だちは多過ぎても、抱えきれなくなることはないのですから」

テラがプテラレックスから助けた馬車に乗っていたエジックス王国首都アクネの商人ジム・タナーが言った。ジムとジムの片腕であるビンセントは、ゲルドリッチ王国での絹の販路拡大を目的に乗船していた。ゲルドリッチ王国は、比較的自由に商売ができる国で、商人の才覚が発揮できる希望に溢れた都市であった。

 ヘッドウインド号は、アジリカ連邦国の特産品となるダイアモンドとサファイア、鉄などを交易品として積み込み、ゲルドリッチ王国の首都オーブルに向かっていた。海岸線沿いに7日間の航海であった。

 テラが卵を抱えながら、それに話しかけていると、

 「テラ、化粧をしているね」

マナツの言葉にテラは照れたように下を向いて頷く。

 「うん、日焼け止めと薄い色の口紅を・・・でも、母さん、これ無香のやつだよ。バラザさんから教わったものなの」

 「高かったろうに」

 「倒したプテラレックスを交易ギルドに売った金貨で買ったの・・・」

 「テラも知らない間に大人になって行くのだね。日焼け止めは母さんも塗っているよ」

 「怒らないのね」

「テラはもう12歳だから、化粧やファッションには興味が出てくる年頃だ」

 「私は来月で13歳よ」

マナツは頷きテラの頭をそっと撫でた。

 ファンゼムが舵を握りながら、いつものように陽気に船乗りの歌を歌っている。リッキは樽を叩きリズムをとる。

 「長閑な船ですね」

ジムがそう言うと、

 「今日は海が穏やかだしね。3日後は、コルボック諸島だ。そこは海賊船の出現する海域になる。そこはかなり緊張する海域だ。だから、他の商船はこの航路を避けたがる。つまり、うちらに利益が生まれるのだ」

マナツがそう答える。

 「海賊が出ると聞いてはいましたが、本当に大丈夫なのですか」

エルフのビンセントが不安そうに尋ねた。

 「海賊には会いたくないね。だから、諸島から離れた海岸線の比較的安全なコースを航海している。しかし、絶対はない」

 「海賊に出会ったら、逃げるのですか」

ジムが尋ねた。

 「逃げ切りたいね。そこで命を賭けて戦うほど安い命ではない。それは海賊も同じで、高いリスクは犯したくない。だから、この船は戦闘にはなりにくい」

 「この船は? 何かあるのですか」

 「絶対ではないが、少しはね。白翼の魔女さ」

 マナツはマストで靡いている赤布に2つの白い翼、その中央に白の輪の意匠のチーム旗を見上げた。ジムとビンセントもマナツの視線の先のチーム旗を眺めた。

 「キャプテン、2時の方向、距離400、鯨の群れです」

見張り台のハフから声がした。

 マナツが2時の方向を見ると、テラとリッキが左舷に回り、既に海面を覗いていた。

 「ハフ、鯨の群れの後方に注意しろ」

マナツが声を張り上げる。ハフは尻尾を立てて答える。

 「了解」

 「鯨の群れの後方とは・・・」

ジムが尋ねると、マナツは、

 「鯨の群れが魔物に追われて逃げていることもあるからね。鯨の後方への注意が必要なのだ」

ジムとビンセントは、マナツの言葉に驚いて、

 「鯨の群れを追う魔物って・・・一体どんな魔物なのですか」

 「考えるだけでも、恐ろし過ぎます」

 マストからハフの声がする。

 「キャプテン、何かいる。鯨の群れの後方100m・・・巨大な背ビレが見える。おそらくメガロドア」

 巨大な背ビレが海面を裂き、高速で移動している。

 「鯨を追うメガロドアの背後を擦れ違う様に横切る。取舵、11時」

 「取舵。メガロドアとは厄介じゃな」

舵を切りながらファンゼムが言った。

 メガロドアは全長30mの獰猛な古代サメの魔物である。口にびっしりと並んだ三角形の歯は、その1つが30cmを超える。海の捕食者の頂点に君臨する生物の一つである。また、高速で泳ぐことができるため、逃げ切ることは不可能とされるSクラスの魔物であった。

 「ダン、テラ、両舷の砲、葡萄炸裂弾準備」

 鯨の群れが背を出しては潜りながら前方を駆け抜けていく。その後を追うメガロドアが船の前方250mを横切って右に抜けて行った。

 「全速前進。このまま擦れ違い、やり過ごす」

 マナツとリッキがセイル操作をする。ヘッドウインド号は、速度を上げて紺碧の海を疾走する。船首は波を切りながら上下に浮沈する。ジムとビンセントはよろけながら、甲板の縁を持った。

 「キャプテン、鯨が進路を変更して、こちらに向かって来ます。距離200m」

 「セイルを下せ。総員戦闘準備。テラ左舷の砲を右舷に移動、右舷を砲2門としろ。船首に私、リッキとファンゼムは左舷で浮き槍準備、ハフは船尾で魔法。ダンとビンセントは船室へ」

 セイルが巻き上げられ、ヤードがスルスルと降ろされた。ヘッドウインド号に搭載された大砲は2門。対船用の砲とは異なりやや小型の対魔物用で、甲板を移動できる可動式の砲であった。通常は両舷の甲板に1門ずつフックに鎖で固定されているが、固定用のフックから外して他舷のフックに鎖で固定することができた。クルーは声を掛け合いながら手早く準備をして、各配置へ着く。時間との勝負だった。テラの移動した砲を甲板のフックに鎖で固定して弾を込める。

 前方2時の方向から鯨が迫って来る。その後ろには鯨の群れを追うメガロドアの背ビレが見える。

 「目標メガロドア」

右舷に配置した砲門の照準を合わせる。テラは荒い呼吸を繰り返した。照準を合せる手に汗をかいていることに気付いた。

 『テラ、背ビレの前5mを狙え』

 「分かっているわ」

テラは掌の汗を拭きながら思念会話で答えた。

船は惰性で進んでいる。鯨の群れが船尾の後ろを通り抜けていく。マナツは船首に立ち、メガロドアがこのまま鯨の群れを追うのか、この船に向かって来るのか、進路を慎重に見極めている。海面で波を切る背ビレの向きが船首のマナツに向いた。

 「撃てー!」

 ドドォーンと砲門が火を噴いた。葡萄炸裂弾は、葡萄の粒の様に詰まった無数の弾が、まるでショットガンの様に炸裂する。葡萄炸裂弾がメガロドアの背ビレの前方に着弾する。海面に白と赤の飛沫がいくつも上がり背ビレを包む。ハフの雷魔法の雷撃が強い光の筋となって背ビレを直撃した。

 「総員、衝突の衝撃に備えよ」

マナツが叫ぶ。ヘッドウインド号にメガロドアが接近して来る。船の大破も考えられた。

海面を進んでいた背ビレが海中に沈み、メガロドアの位置が確認できなくなった。クルーたちは衝撃に備えて息を飲んだ。数拍の後、ヘッドウインド号の浮かぶ青い海の真下を黒い影が横切って行くのが見える。

 「これはこの船よりも大きい。30mはあります」

ダンがヘッドウインド号の真下を通過していくメガロドアの黒い影を見ながら叫んだ。ダンの報告がなくてもクルーの全員がその大きさを目視して、沈黙していた。

 「次段装填、銛弾。リッキとファンゼムはそのまま浮き銛で左舷。ハフは船尾で魔法」

ダンとテラは、先端に火薬のついた銛弾を準備している。リッキとファンゼムは、長いロープのついた銛をそれぞれ構えている。そのロープの端には海面に浮かぶ3つの木製の浮き輪が結ばれていた。

 クルーは自分の受け持つ海面を凝視した。静寂の海面には大きな波のうねりが見えた。

 「葡萄炸裂弾の威嚇に驚いて逃げてくれれば良いのじゃが・・・あの大きさの魔物には、大した効果は望めからのう」

ファンゼムが独り言のように言うと、リッキも同意した。

 「そうあって欲しいものだ」

 その時、ファンゼムとリッキの眼の前に巨大な水柱が立った。メガロドアが海中から頭を持ち上げ、口を開いた。開いた下顎から上顎までの高さは4mにも達し、そこには40cmの歯がぎっしりと並んでいた。ファンゼムとリッキは必死の形相で、メガロドアの開いた口の中に見える喉めがけて銛を投げ込んだ。メガロドアはグゥと悲鳴の様な声を上げて、また海中に姿を消した。銛についていたロープが伸びてピンと張った。ロープと結ばれている浮き輪が海面を滑るように移動する。浮き輪は次々に海中に沈んでいく。浮き輪6つ全てが海中に消えた。

 「喉の奥に浮き銛が命中した。あれは抜けないぞい」

ファンゼムが叫んでクルーに知らせた。

 「ロープは40m。浮き輪を6つ海中に引き込んだぞい」

リッキも大声で言った。

 「浮き輪が1つ浮いた。3時、距離150、奴が来るぞ」

 浮き輪が2つ、3つ、4つ・・6つと浮きながら、白波を立ててこちらに向かって来る。浮き輪を引きずっているため、水の抵抗で速度はかなり遅くなっていた。ダンとテラが砲の向きを変える。背ビレが海面から浮上した。背ビレの前5mに砲の照準を合わせた。

 「撃てー!」

 2本の銛弾が背ビレ前方に刺さった。その瞬間に火薬が炸裂して血と水飛沫、肉片、銛が弾け飛んで宙に舞った。ハフの雷撃も2発、3発と命中する。それでも、メガロドアは海水を赤く染めたまま直進して来る。

 「総員、衝撃に備えよ」

 メガロドアは、船の右舷に迫り、船体を噛み砕こう大きな口を開けた。メガロドアの頭の右脇に、宙に浮かぶテラが突然現れた。飛願丸の黒光りする刀身が陽に輝く。メガロドアの頭部から下顎にかけて、一瞬の煌めきが走った。頭の殆どを切り裂かれ、メガロドアがそのままヘッドウインド号の右舷に衝突した。ヘッドウインド号は大きく左右に揺れる。マストが振り子のように動く。ヤードが回転して甲板で暴れた。バランスを崩したダンは悲鳴を上げ、身を屈めてヤードの弧の下を潜った。クルー全員が夢中で船体にしがみ付いていた。

 メガロドアは千切れた頭部を甲板に残して、胴体がゆっくりと沈み始めていった。メガロドアの沈む赤い海をクルーは見つめていた。

 「ダメージ報告とコントロール」

マナツが叫ぶと、クルーたちは甲板を走り、ヘッドウインド号のダメージを確認した。

 「右舷上部に亀裂あり」

ダンが声を張り上げて報告した。

 マナツもファンゼムも右舷の損傷を確認に甲板を走った。小さな亀裂が見られたが、ゲルドリッチ王国の首都オーブルまでの航行には支障がなさそうだった。ヤードを戻し、セイルの張り具合を確認すると、順風を受けて航海を再開した。幸いなことに船倉の交易品に被害はなかった。

 マナツは船室にいるジムとビンセントに声をかけた。2人は血の気の引いた顔をしていたが、よろよろと甲板に出て来て、クルーたちに感謝と労いの言葉を掛けていた。

 「メガロドアが向かって来た時にはどうなることかと思いましたが、何とかなるものですね」

ダンがそう言うと、

「皆のお陰だ。奮闘に感謝する」

マナツが労わりの言葉を述べた。

 「テラ、メガロドアの突進をよく止めた。良い判断だった」

リッキがテラの背中を叩いて言った。ハフが続けて言う。

 「命拾いをしたよ」

 テラは、クルーとして皆の役に立てた自分を誇らしく思ったが、照れて下を向いた。

 『テラ、よくやったね』

 「飛願丸を1振りではなく、2振りできれば船の被害ももっと少なかったかもしれない」

 『ふふ、あれで精一杯だっただろう。あれが出来たことを素直に喜んでいいと思うよ』

テラとマウマウは思念会話をしていた。

ファンゼムは、

 「何とか命拾いをしたが、これでまた船の修理に金がかりよる。頭が痛かぁ」 

 「魔物がいる海は、命がけの航海ですね。でも、この交易品が届けば国も民も我々も潤う」

ジムが一人一人を見ながら言った。

 「全く商売は大変だ。懐が潤う前に目が涙で潤いそうだ」

ハフはそう言って背伸びをすると、マストの見張り台にスルスルと登っていった。


 3日後、コルボック諸島が左舷に見えてきた。

 「間もなく海賊の海域だ。ダンは右舷を、テラは左舷を見張れ。ハフ、近づく船舶を見逃さずに報告しろ」

 マナツは、弓と火薬のついた矢を握って、船首に立って指図した。

 「海賊の海域を半日ほど進めば、後は西に2日でオーブルです」

マナツが船首にいるジムに話した。

 「私は船酔いがやっと収まってきました。それにしても航路は厳しい」

 「あははは、時化や嵐も経験できるといいですね」

 「マナツさん、止めてくださいよ・・・天候と魔物、それに海賊、恐ろしいことばかりです」

 「その分、航路には旨味もある。それに本当に恐ろしいのは、魔物や海賊よりも、陸にいる人間ですよ」

 「それはまた奇なことを・・・それって私も含まれていますか」

 「勿論。陸の貴族や商人、これは実に恐ろしい」

 「・・・確かに、権謀術数が渦巻きますからね」

ジムも両手を上げて賛同していた。

 「敵味方がはっきりしていて、互いの力で勝負する単純な争いではありませんから」

 「全くです。富や権力、名声などの欲、嫉妬から静かにしかも周到に準備された罠をしかけてきますからね」

ビンセントも頷きながら言った。

 西に浮かぶ小島から船影が現れた。

 「キャプテン、3時に帆を張った小型ガレー船が見えます」

ハフはワクワク感を抑えきれずに、焦げ茶と茶色の縞のある尻尾を左右に振りながら叫んだ。

 「それは海賊船だな」

 「ええー。海賊ですか」

ジムが狼狽えだした。

 「進路は維持」

マナツが指示した。

 「キャプテン、小型ガレー船がオールを出してきました。この船を狙っているみたいです」

 「テラ、小型火薬筒をもって船尾に移動」

マナツがテラに指示を出すが、メガロドアの時の様な張りつめたものが感じられなかった。

 「はーい」

テラの返事も同様だった。

 「海賊船ですよね。緊張感が足らないような・・・」

と言って、ジムとビンセントがおろおろしている。

 テラは船尾で小型火薬筒を手に持って、小型ガレー船を眺めていた。小型火薬筒は火薬を詰めた筒に導火線を付けたもので、ダイナマイトの様な武器であった。対船戦闘になった場合には、テラがこの筒で空爆をすることになる。

 『空爆はやったことがないだろう。イメージは出来ているのかい』

 「うん、右舷のオールの破壊を目的とした空爆。小型火薬筒の導火線にこの火種をつければ5秒で爆発するわ。海賊船のマストの上から投げて狙うつもり。いざとなればヤードやマストも斬る」

テラが思念会話で智佐神獣白の神書のマウマウと話をした。

 マナツは、不安そうにしているジムとビンセントを横目で見て、

 「戦闘になれば戦うしかないですが、それは最後の選択です。ジムさん、落ち着いて」

余裕のある顔で言った。

 「この船のチーム旗は海賊船からはまだ見えていないのか・・・総員、海賊迎撃態勢。ファンゼム、海賊船に砲撃させない位置取りを続けろ。ハフ、距離400になったら教えろ」

マナツがそう指示すると、

 「「了解」」

ファンゼムとハフが答えた。

 「海賊船は大丈夫なのですか」

ジムが不安そうに言うと、

 「相手によりますね。矢を1本撃てば、海賊船が海戦をやる気か、止めて逃げる気になったかが分かります」

と、マナツが気軽に答えた。

 「海賊船が海賊旗を上げました。距離400」

 海賊船から大砲が3連射された。ファンゼムの巧みな操船で、砲弾の当たらない位置取りをしているため、ヘッドウインド号から離れた水面に水飛沫が3つ立ち上った。

 「うぁー」

ジムとビンセントは頭を抱えて叫んだ。明らかに恐怖の色が顔に出ていた。

 「この船に当てる気はないですよ。今のは降伏勧告の大砲です」

と、マナツが冷静に説明した。マナツは真っ青な空に向かって弓を引き絞った。矢が放たれて一直線に上空に飛ぶ。矢はパンという音と共に上空で赤い炎を伴って爆発した。

 ハフが海賊船を凝視している。マナツや他のクルーも海賊船の動向を探っている。

 「キャプテン、海賊船が転舵しました」

 「分かった。ハフ、目だけは離すな。ファンゼム、全速前進」

 「「了解」」

 マナツとハフのやり取りを見て、ジムが言う。

 「海賊船はこの船を諦めたのですか」

 「そのようですね」

 「なぜ、1本の矢で諦めたのですか」

 「以前、この海域で海賊船に遭遇した時に、同じように矢を撃って警告をしてから、テラが能力を使って海賊船右舷のオールを切りました。必然的に右旋回し始めた海賊船のマストも1本切り倒して、次はないぞと警告を入れておきました。それ以後、海賊たちはこの船のマストに掲げてある赤地に白の翼のチーム旗から『白翼の魔女』の乗る船と恐れているようです。海賊も大きなリスクを背負ってまで、この船を襲うことはしないでしょう」

 「一度、お灸をすえておいたのですね。その噂が仲間の海賊にも広がった・・・効果抜群のお灸になったと言う訳ですか。でも、海賊船を放置してもよいのですか」

 「こちらが命を賭けて討伐に挑めば、向こうも命を賭けて抵抗してきます。こちらにとっても、あちらにとっても命は重いのです。討伐依頼があれば別ですが、ゲルドリッチ王国の海軍が海賊を狙っていますので、今は海軍に報告をするだけです」

 「なるほど」

 「キャプテン、海賊船が完全に戦闘可能海域から離脱しました」

 「総員、海賊迎撃態勢を解除」

 クルーたちが通常配置に戻ると、ジムもビンセントも胸を撫で下ろした。

 「やはり、子連れの女豹の船だ。見込んだだけのことはある。これだったら・・・」

ジムはマナツの横顔を見て呟いた。

 

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