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第16章 魔族の本能

 第16章 魔族の本能


 首都ロドの東北東のマイゼク山脈の麓の防衛陣地。

「・・・・・遅かったか」

森の茂みから丘を見てタジが言った。

 タジの視線の先には、防衛陣地の丘があった。西日の射す丘の上は、崩れた柵が黒い炭となり、所々に残り火が淡い橙色を浮かべ、青い煙が静かに立ち上っていた。人、魔族の焼けた鼻を刺すような臭いが丘から風に運ばれてきていた。兵士と魔族の死骸が至る所に散乱していた。大砲は横たわり、壊れた馬車の荷台からは、砲弾らきしものが崩れ落ちていた。

 「魔族の生き残りは、190匹といったところか」

タジが白狐の里製の双眼鏡を覗きながらカガリに囁く。

 「ええ、186匹。その内19匹は負傷で戦闘継続不能」

カガリも双眼鏡を覗きながら囁く。


*******************************************

 ジルク子爵率いる防衛隊は、防衛陣地への布陣途中で魔族との遭遇戦となった。魔族300匹に対して4500人の兵で応戦した。魔族は圧倒的な戦闘力を誇るため、状況や兵力差を考えると、防衛隊は圧倒的に不利ではあったが、奮戦した。魔族東別動隊から半数近く戦力を削いだ。そして、王都襲撃への時間的な猶予をつくった。

 ジルク子爵は、本陣の後方に配置した無傷の騎兵50と魔導士兵50、歩兵300を王都決戦への兵力として残すことに成功していた。激戦の最中に、ジルク子爵から厳命を受けた若き参謀マクレール男爵が指揮を執り、王都に向けて撤退させていたのだ。

 若き参謀マクレール男爵はジルク子爵から王子へ向けての言葉を託されていた。

 「今の私が、ナギ王国の未来に残せるものは兵400の命だけです。アルベルト王子、ナギ王国の未来をお創りください」

*******************************************


 丘の下では、魔族5匹が生け捕りにされた男を取り囲んでいた。魔族の1匹が男の頭髪を鷲掴みにしてなぶりものにしていた。男は既に両手足を失い、馬車の荷台に背を預けながら、頭や腹を殴られていた。

 瀕死の男は、魔族に、

 「・・・こ、・・こ、殺して・・くれ」

喘ぎ声を出す。

 タジとカガリは読唇術で言葉を聞いた。魔族は、悦に入って弄ぶ。

 「魔族に生きて捕まれば、屈辱ではなく、苦痛と後悔しか許されない」

タジの言葉に、

 「・・・惨い。これが魔族の本性なのね」

そう言ってカガリが、ピクリと動く、

 タジは、カガリの腕を握り、横に首を振りながら、

 「止めろ・・・もう、あの男は助からない。もっても数分の命だ」

 「・・・・でも」

 カガリは目を伏せた。

 丘の山頂を双眼鏡で覗くと、左右の側頭部から闘牛のような角が生え、屈強な体躯をした魔族が重ねた死体に腰を下して、大盃で何かを飲んでいるのが見えた。恐らく魔酒だろう。近くには地面に刺さる大斧があった。椅子の替りにされた死体には指揮官らしい肩章が付いていた。タジとカガリはその魔族の唇を読んでいた。

 「思ったより手こずらせやがって、寿命の短い人間にしては老獪な戦術だったな。途中からは、守りに専念しやがって、お陰で結構な時間を食っちまったじゃねえか。あと1時間したら進撃開始だ。ふう・・・・魔酒をどんどん持ってこい・・・いや、変更だ。進撃は今夜の10時だ。俺の勘がたった今そう告げた」

 「・・・死体を椅子替わりにするなんて、そんな冒涜は許せない」

カガリは、爆薬を付けたクナイを手にしてそう呟いた。

 「カガリ、止めろ。ここから山頂までは、俺たちの武器や魔法では届かない」

 「兄さん、それは分かっているわ」

そう言うが早いか、カガリはクナイを投げた。

 クナイは、丘の下で魔族5匹にいたぶられていた手足のない男が寄り掛かっていた馬車の帆を突き破り、荷台の中に刺さった。

 ドドドォーン

荷台が激しい炎と共に爆発した。周囲50メートル程が炎の爆風で吹き飛んだ。

 荷台の中は炸裂火炎砲の砲弾が詰まれていたのだ。そこにカガリの爆薬を付けたクナイが誘発したのだ。

 「敵襲か」

 魔族たちは騒然となった。武器を手に取り辺りを見回す。半数近くの魔族が、上空から偵察を開始する。

 タジとカガリは、光学迷彩布を被り、既にその場から離れていた。森を抜けて、馬に跨ると、王都ロドへ向けて駆けて行った。


 翌日の明け方、首都ロドの西。封魔結界外の魔族西オルバ本隊。

 東の空に、陽が昇ろうとしていた。草原は、薄暗さの中で、水分が多くひんやりとした空気に満ちていた。

 「朝早く、失礼します。六羅刹、円舞のオルバ様に申し上げます。封魔結界が消滅しました。見張りに立たせた者から報告がありました。我が隊の出発は既に整っております」

ピピンが、オルバに跪いて報告した。

 「あら、ようやく舞踏会ね」

オルバは、そう言って寝台から立ち上がった。


 ホージュス魔族兵100は、オルバに吸収されオルバ魔族本隊として指揮下に入っている。

パリピ率いる魔族兵50とゲオーグ率いる魔族兵60は、既に移動は完了して南西の侵攻待機地点に到着している。

 オルバは、魔族兵140匹の前で言った。

 「ロドの王宮を包囲して、そこで円舞をエレガントに決めるわよ。出陣!」

 「おおぉー」

ピピン率いる魔族兵40が、日の出と共に行軍し始めた。このまま東へと進軍して、そこから南下して王都ロドを目指す。

 オルバ率いる魔族兵100は、ピピン隊の出発から2時間遅れて、朝の濃い霧の中で行軍を開始した。オルバは4匹の魔族が担ぐ輿に乗って上機嫌でいた。

 魔力温存のため、偵察兵以外は徒歩の進軍であった。


 王都の最終防衛線。神聖国家防衛隊。

 アルベルト王子は、神聖国家防衛隊総司令官として、王都ロドの北の深い森を出た草原に陣を敷いていた。

 軍務大臣兼近衛長官ホワイト侯爵は、ここを王都ロドの最終防衛線とした。総兵力6400名の内、王都ロドの南口を守る難攻不落の軍事都市ガイに2000名の兵士を派遣した。この北の入口を守る兵士は4400名と炸裂火炎砲45門だった。

 魔族を迎え撃つ防御陣は柵を建て、塹壕を掘り、土嚢などで強化を図っていた。

 朝に立ち込めた濃い霧の中で、神聖国家防衛隊に1つの部隊が合流してきた。王都ロドからではない。戦場となった東北東からの部隊であった。


 神聖国家防衛隊作戦本部。

 「アルベルト王子、東方防衛隊長ジルク子爵の参謀マクレール男爵が戦場より戻り、ジルク子爵の言葉をお伝えしたいとのことです」

 「通せ」

 マクレール男爵がアルベルト王子の下に跪いて申し述べる。

 「アルベルト王子に申し上げます。東方防衛隊の奮闘虚しくジルク子爵は、全滅を覚悟で王都侵攻への3時間の猶予をつくりました。そしてアルベルト王子へ向けての言葉を託されました。

『今の私が、ナギ王国の未来に残せるものは兵400の命だけです。アルベルト王子、ナギ王国の未来をお創りください』」

 アルベルト王子は、ジルク子爵の顔を思い浮かべた。そして、ナギ王国とその民のために亡くなった兵のことを思い、胸に熱いものが込み上げてきた。

 「マクレール男爵、よくぞ生きてジルク子爵の言葉を伝えてくれた。私はジルク子爵のナギ王国とその民への愛と希望、亡くなった兵の志を決して忘れぬ。大儀であった」

 「恐れながらアルベルト王子に申し上げます。ジルク子爵が託された未来の創造のために、我ら400名の命をお使いください」

 「民の生きる未来が、ナギ王国の未来だ。マクレール男爵、ジルク子爵の遺志と共に未来を創ろう」

 「ははっ」

マクレール男爵が下がろうとした時に、ホワイト侯爵から声がかかった。

 「ナギ王国は400年間魔族と戦闘をしておらぬ。マクレール男爵、其方が戦場で観て来た全てを伝えてほしい、そしてそれをナギ王国の未来のために生かしてほしい」

 「我が命、ご自由にお使いください」

 「マクレール男爵、其方を神聖国家防衛隊の参謀本部付の参謀に任ずる」

ホワイト侯爵が任命した。

 「謹んで拝命致します」

若き参謀マクレール男爵は恭しく拝命した。

 これで神聖国家防衛隊は、総兵力4800名、騎兵1250、魔導士兵500、弓兵1000、歩兵1690、砲兵360、炸裂火炎砲45門となった。

 神聖国家防衛隊参謀本部で新参謀マクレール男爵から、

「魔族は宙を飛びながら高い火力の魔法を使う。しかし、魔族はその本能から接近戦で己が武器や魔法で切り刻むことを好む。戦術よりも個の戦闘を優先する傾向にある」

という一言で、作戦は修正され、防御陣手直しのための検討に入った。

 「魔族はやはり魔族じゃ。本能には逆らえないのだな・・・・400年前と戦闘スタイルに大差はないことが分かった」

 初老のエルフ参謀がぽつりと呟いた。

しかし、魔族の侵攻してくる方角や部隊数、兵数が不明であった。斥候を四方に放ってはいるが、今のところ有益な報告はなかった。


 ナギ王国北西の上空。

 地表には濃い霧が立ち込めている空をダイチはカミューに跨り飛んでいた。上空には陽が射していても、まだ肌寒く感じられた。

 「ううっ、少し寒い・・・地表の霧はかなり濃いな」

 『主、封魔結界が消失した』

 「何だって、この辺りの一部ではないのか」

 『ダイチ、ナギ王国の全てから封魔結界が消失した』

 「そうなると東からも西からも魔族兵が侵攻して来るな」

 『主、封魔結界の消失を待ちわびていたのだ。奴らはもう侵攻を開始したであろう』

 『前回は、封魔結界内外の差で、こちらの魔法探知による索敵距離は長く、魔族の索敵距離は短いというアドバンテージがあったが、それは失われた』

と、クローが言う。

 「魔法探知能力の勝負となるのか」

 『クロー、少し違うぞ。我の場合には、魔法探知で索敵はするが、気配でも索敵する』

 『そうだったな。神龍は気配を感じる能力が高かった。それなら、索敵はこちらにアドバンテージがあるな』

 「気配で索敵・・・って、人間には理解できない感覚なのだろうな」

 『主、人間のことは分からないが、遠くからでも強い魔族の気配、弱い魔族の気配とかを感じることができる。魔物についても同じだ』

 「クロー、カミュー、期待しているぞ」


 『主、多数の魔物の気配がする。南南西だ。ゆっくりと移動している。やはり侵攻を開始しているな』

 「カミュー、こちらのことは気付いていないか」

 『気付いた気配はない』

 「魔族の兵数に変わりはないか」

 『主、前に偵察した時と同じだ。敵は100匹のままだ。だが、・・・妙だ。計り知れない強さの魔族が1匹いるぞ。此奴はこの西分隊にはいなかったはずだ。しかも、単純な戦闘力ならホージュスの上をいく。加えて、かなり強い魔族は2匹だ』

 「部隊編成替えがあったのか・・・・いや、計り知れない強さの魔族は1匹しかいなかった。そのホージュスを倒したのだからここにいるはずがない」

 『ダイチ、これは増援部隊が派遣されたと見るのが自然だ』

クローが言う。

 「クロー、それなら、魔族兵も増援されたということか」

 『残念ながら、そうなるだろう』

 「くっ」

 『主、大丈夫だ。魔族が何匹増えようが、我が全て倒す』

 『カミュー、ダイチが懸念していることは、把握していない部隊が、あらぬ方向から王都ロドに侵攻することだ。これは、迎撃に苦労するぞ』

 「戦力差も開きが大きくなって、戦術では補えないほどになってはいないのか」

 『それは考えられる。当初から戦力では、ナギ王国が劣勢で、私たちが北本隊と西別働隊を奇襲することで、勝機が生まれる程度だったからな』

クローが冷静に答えた。

 『主、倒すしかないのだろう』

 「カミューの言う通りだ。敵が圧倒的に有利でも、倒すしかない。ナギ王国とその民のためにも」

 『今のところ1隊しか発見できていない。しかし、それは最も脅威となる計り知れない魔族がいる隊だ。断定はできないこれが、これが本隊の可能性は高い。ダイチどうする』

 「ここの隊から倒す」

 『それが正解だ』

 『主にしては決断が早いな』

 「・・・・クロー作戦を」

 『敵の配置も把握できないので、作戦といっても特にない。ただ、ナギ王国の防衛線は森の手前の草原だと考えられる。だから、そこの前に倒すのがよいだろう』

 「なぜ、森の外で」

 『森の中では、空を飛ぶ魔族が見にくくて、攻撃ができない。それに、魔族の強力な魔法で森を焼き払われたら、兵は焼け死ぬ。だから、どんなに不利でも森の外で決戦を挑むはずだ』

 「カミュー、敵に魔法探知されるまでには、あとどの位いだ」

 『あと2分弱だな』

 「クロー、あと1分で戦術を」

 『・・・ダイチは優柔不断のくせに、私に対しては即答を強要するのか・・・・』

 「時間がない。早くしろ」

クローが即答で戦術を支持する。

 『カミュー、ここで可能な限り高度を上げろ。真上に飛べ』

 『クロー、了解だ』

 『最高高度なら、真上に行っても魔法探知はできないか』

 『恐らく、敵部隊の真上から降下したらやがてばれるが』

 「また、真上からの急降下爆撃か」

 『下は濃い霧だ。前回よりも視界的には有利だ』

 「俺の体がGに耐えられない」

 『主、我慢しろ』

 「精神論では無理だ」

 『ダイチよく聞け。戦術だ。濃い霧であちらからは見えない。それはこちらも同じ。だから、カミューの気配探知を頼りに攻撃する。初撃、1の矢は・・・』


 「くっ、かなり寒くなって来た。空気も薄いぞ」

 『この辺りが最高高度だな』

 「3時の方向、下にピラミッド型のアディア山の山頂が見えるぞ。美しいな・・・ブルッ、うー寒い。それに空気が薄くて、じっとしていても息苦しい」

 『主、このまま3分ほど移動する。そこが敵の真上だ』


 『主、行くぞ』

 ダイチは、カミューの角を両手で力いっぱい握った。ダイチは競馬の騎手の様に前傾姿勢になった。

 カミューは、急降下した。視界に映るものは、大地に満ちた白い霧だけだった。カミューはグングン加速していった。強烈なGがダイチを襲う。ダイチの髪が後ろに靡く、全身の血液が後頭部と背中に集まる。冷たい風が圧力となって頬を押す。眼球に強い圧力を感じ、辛うじて目を開いていることがやっとだった。ダイチは大気の壁に押され、改めて大気の存在を実感する。

 ダイチは、カミューの初撃、1の矢に全集中をしていた。濃い霧の中では、大地には魔族部隊は見えない。魔族の気配でその存在を感じるカミューの一撃の着弾点右横20メートルがダイチのポイントであった。

 ダイチはカミューの急降下で気が遠のくのを感じている。

 「・・・い、意識が・・・」

 『主、あと10秒だ』

 「じ、じゅ、じゅう・・」

 『ダイチ、耐えろ』

 カミューが、地上に浮かぶ白霧へ、神龍の息吹を撃った。

 ピーッ

カミューの口から出た白い閃光が白霧に吸い込まれる。

 ドゴゴゴゴゴゴゴーッ

と、大気を裂く衝撃波と轟音が空中まで伝わって来る。

 神龍の息吹が着弾した周辺の霧は、高熱で一瞬にして水蒸気となって散霧した。それよりも遠くに存在していた霧は、水面に落ちた雫が水の波紋を生むように衝撃波が高速で広がっていくことを示していた。

 『ダイチ、2の矢だ』


 ガスタンク

  「エクスティンクション」


 魔力がわずか1の魔法使いであるダイチは召喚術士である。

 召喚無属性魔法エクスティンクションは、目標の1点に反発エネルギーであり、負の圧力を持つダークエネルギーを召喚する。

 神龍の息吹の着弾点右20メートルの地面の1点から透き通った球が膨張した。それは瞬きよりも短い出来事だった。球形が目に見えた訳ではない。ダイチの想定した効果範囲であるガスタンク大の直径30メートルの透き通った球が存在を示すかのように、球形の輪郭内で背景が歪んだのだ。その刹那、球形の輪郭が1点に収縮し消滅した。後にはガスタンク大の半球面に抉り取られた地面があった。同時に、隊列を組んでいた魔族22匹が一瞬にして消滅していた。

 ダイチは、エクスティンクションのリキャスト9秒を心でカウントを開始する。

 ダイチにとって9秒は果てしなく長く、それは時が止まり、永遠に続く時のような感覚になっている。全てがスローモーションのように見える。

 バリ、バリ、バリ

目が眩む5本の閃光が空を裂く。

 3の矢。カミューの雷魔法が魔族兵たちに直撃する。

 ドゴゴゴゴーン

 雷鳴が轟き土煙が舞う。

 4の矢、神龍の咆哮。

 グオォォォォォォォォォー

カミューは、地上から逃げようと飛び立ち始めた魔族兵たちに向かい咆る。

 猛り狂う咆哮を聞いた魔族たちは恐慌し、思考と身体能力の全てが停止して地上に落下する。

 カミューは、自身の落下速度を落とし体の向きを変える。

 5の矢。天から竜巻が伸びる。

 天から伸び大地まで達した竜巻は、ダンスを踊るように揺れながらくねり出す。

 恐慌で動けない魔族に恐怖の表情だけが浮かぶ。

 竜巻は、ダンスを踊るかのように四方に揺れながら、大地の草木や石、魔族たちを次々に巻き込んでいく。

 カミューは、ダイチを乗せたまま地上に降り立つ。

 ダイチはカミューから飛び降りた瞬間に、カミューはその場に倒れた。

 「カミュー、どうした」

 『魔力切れだ・・・』

 カミューは荒れ狂う竜巻の中で仁王立ちしている魔物を見た。

 「やっぱり、8時間では魔力回復が少なすぎたのだ。しっかりりしろ」

 『・・・今・・最後の魔力で・・・主にかけてある神龍の加護を強化した』

 「カミュー、しっかりしろ。ここで倒れたら、魔族たちに倒されてしまうぞ。カミュー」

 カミューは、目を閉じたまま動かなかった。

 竜巻が消えると、倒れていた魔族数匹が起き上がって来た。

 竜巻の中で唯一仁王立ちしていたオルバが、

 「ハァ、ハァ・・・は、派手に踊ってくれたじゃありませんか。あ、あなたたち、ちょっと目立ち過ぎよ。嫉妬と興奮で胸が張り裂けそうよ・・・ハァ、ハァ、あら、頼りの神龍も魔力切れでお寝んねしたのね・・・あと一息だったのに残念ね。今度は私がエレガントな踊りを披露する番だわ。貴方、ご一緒に踊ってくれませんこと」

六羅刹円舞のオルバが右肩を押え、苦痛の表情を浮かべながらも、ニヤリとした。


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