第24章 新たな旅の始まり
第24章 新たな旅の始まり
カミューの話では、魔王ゼクザールの封印は破られたものの、その力は完全に復活してはいない。先代の神龍を倒した時に更に負った傷と魔力の回復のために、魔大陸と呼ばれているラゴン大陸に潜んでいる可能性が高いということだった。
ダイチたちが魔王ゼクザールを倒すためには、
・体力と魔力が不十分な今の魔王ゼクザールを急襲して倒す。
・召喚神獣を集めてから魔王ゼクザールと戦う。
の二択である。
問題点は深刻である。
・魔王ゼクザールはラゴン大陸にいるのか。
・魔王ゼクザールの回復までに6つの神獣を召喚神獣にできるのか。
という、場所と時間の問題だった。
最悪のシナリオは、魔王ゼクザールの潜んでいる場所を探している間に、魔王ゼクザールが回復してしまうことだった。少しでも戦力は強化しておきたい。
ダイチとクロー、カミューは、結論を出す。
「魔王ゼクザールの回復までに6つの神獣を召喚神獣とする。それから魔王と戦う」
『その選択は合理的だ。私は賛同する』
『我の考えと同じだ』
「よし、バイカル親方には正直に話をしよう。信頼には信頼で応えなければならないし、お願いしたいこともある」
翌朝、ダイチは鍛冶屋の店の奥にある部屋でバイカル親方と話をすることにした。
バイカル親方は、二日酔いなのか顔が腫れぼったかった。
「なんだダイチ、改まって」
「バイカル親方、俺はこれから旅に出ようと思っています」
「なんだとー! 鍛冶職人としての未来が見えてきた矢先だぞ」
「バイカル親方やご家族、職人の皆様には、俺の生きる目的に気付かせてもらったり、生きる術を与えてくださったりした。感謝しかありません」
「それなら、突然どうした。どんな理由があるのだ」
「バイカル親方を信頼して、全てをお話しします。他言は無用でお願いします」
「ああ、その理由を言ってみろ」
「800年前の魔王ゼクザールとの大戦はご存知ですか」
「いきなり800年前の大戦とはどういうことだ。おとぎ話とも伝説とも言われている話のことだな。激戦の末に、六神獣が世界を滅ぼそうとする魔王を倒したという話だろう。それから魔王ゼクザールは3つの首をもつ恐ろしい化け物で悪さをするとやって来るぞと、子供のころは俺の親から聞いていた」
「六神獣は、魔王ゼクザールを倒していません。封印したのです。ところが魔王ゼクザールは、その封印から目覚めました。そしてこの世界の民を滅ぼそうとしているのです」
「何をいきなり言っている。あれはおとぎ話のことだろう」
ダイチは、真剣な眼差しで続けた、
「いいえ、事実です。信じてもらうためにお見せします」
アイテムケンテイナーからクローと黒の双槍十文字を取り出す。クローはテーブルの上に置き、黒の双槍十文字は壁に立てかけた。
「クロー、少し動いてみろ」
カタカタとクローは震えた。
「なんだこの本は、今、動いたぞ」
「私の召喚神獣です」
「召喚神獣?」
「カミュー」
黒の双槍十文字の柄の上部にあった龍の装飾がスルスルと動き出し、宙に舞うと体長4メートルの白い神龍となった。
「な、な、なんだ。これは」
バイカルは仰け反るよに椅子の背に体をもたれ、ズルズルと下に落ちそうになっているが、指先だけがカミューを指していた。
『我は神龍、名は、カミュー』
「か、か、カミュー様」
バイカルは慌てて床に平伏した。元冒険者で、若かりし頃のメルファーレン騎馬隊の経験もある猛者のバイカルであっても、目の前の出来事が理解できず、カミューと聞き体が反射的に平伏をしていた。
「バイカル親方、どうぞ椅子に腰かけてください」
「ダ、ダイチ、な、何をいっているのだ。カミュー様だぞ、お前もこっちへ来てカミュー様を敬わんか」
ダイチは平伏するバイカルの前で片膝をつき、バイカルの肩へ手を伸ばした。
「バイカル親方、安心してください。カミューは俺の召喚神獣です」
「カ、カミュー様が、召喚神獣?」
『我は、ダイチを主として、主に仕える神獣である。まずその椅子に座り、我が主の話を聞け』
「はっ、はー」
バイカルは、平伏する。ダイチに促されて、ゆっくりと体を起こし、椅子に腰掛けた。虚ろな目でダイチを見ている。
ダイチはバイカルの目を見ながら、ゆっくり語り始めた。
「カミューは、バイカル親方たちがカミュー様と呼んでいるものです。魔王ゼクザールが復活したので、俺たちは他の神獣も集めて討伐に向かいます。そのための旅です」
「まさかカミュー様がここに・・・・魔王ゼクザールが封印から目覚め・・・・討伐の旅か」
バイカルはカミュー様の存在に、思考が追いついていないが、話は徐々に理解し始めたようだ。
「バイカル親方には、お願いがあります。魔王ゼクザール討伐はどのくらい先になるかは分かりませんが、カミューを助けてほしいのです」
「俺がカミュー様をお助けする?」
「はい、バイカル親方だけではありません。ローデン王国いや大陸すべての民の力が必要となるのです」
「俺たちにカミュー様をお助けできるならなんでもするぞ」
「カミューへ、民から平和への願いと祈りを捧げてほしいのです。それがカミューの力となります」
「分かった。それなら領主様へ、そして領主様から国王陛下にもお伝え願おう」
「俺はこれから他の召喚神獣を求めて旅をします。俺の行動に制限や妨害が生じる恐れもあります。俺のことは伏せておいてください」
「ローデン王国兵に護衛されていれば安全な気もするが」
「必要と判断した時は、お願いします。魔王ゼクザール配下の強力な魔族の動向も気になります。多くの人々を巻き込んでしまう恐れもありますので、可能な限り隠密で行動したいのです」
「分かった。領主のカリスローズ侯爵様にもそう伝えよう」
「バイカル親方、それからもう一つお願いがあります」
「もう驚かぬ、なんでも言え」
バイカルはダイチの後ろに浮いているカミューが気になって、視線が交互に移動している。
「1週間程、俺に鍛冶場で剣造りをさせてください」
「そんなことならお安い御用だ。それにダイチはまだこの鍛冶屋の職人だしな。黒の双槍の次は剣か。どんな剣を造るんだ」
「キリセクレ山への道中で、襲ってきた魔物の牙を槍で防がざるを得ない場面がありました。また、魔物が俺を挟むようにして双方向からの攻撃を受けました。その時はバイカル親方が鍛えた逸品のソードでなんとか切り抜けることができました。槍の他にも武器が必要なのです。居合いで抜ける剣、いえ刀を造りたいのです」
「分かった。カミュー洞窟までで、死線に継ぐ死線を潜ってきたんだな。アダマンインゴットを使え。どうせダイチのものだ」
「材料はあります。ただ、キロさんとクリさんにはまたインゴットにしてもらわないといけません。今回はオリハルコン鉱石を使います」
「な、なん、なんだとー! オリハルコン鉱石って実際にあるものなのか。そして、伝説の古代文明が加工製法を編み出したというオリハルコンは、極軽量でアダマンを凌ぐ硬度をもっているってことだ。誰も見たことがない伝説上の話だ。その鉱石を手に入れたのか」
「はい、カミューから貰いました。騙し討ちで」
『くっ』
カミューが視線を斜め下に落とした。
「騙し討ち? まあ、オリハルコンインゴット作りはキロとクリに大至急やらせよう。またあの2人は失われた製法、いや、今回は伝説の製法へのチャレンジに喜ぶぞー」
「お願いします」
ダイチとバイカルが部屋を出ると、バイカルはキロとクリを呼んだ。その後、悲鳴にも似た歓喜の声が鍛冶屋に響いた。
それから数日後の昼前、ドリアド領主のカリスローズ侯爵からの使者がバイカル鍛冶店に来た。今回のカミュー様へ龍神白石を届けたことと、漁港ポポイでの情報収集で国難を防ぐために健闘をしたことへの褒章を授けるので、バイカルとダイチは、カリスローズ侯爵の元へ来るようにとのお達しだった。
バイカルがカリスローズ侯爵からの使者を見送った直後、
「「できたわー。オリハルコンインゴットの精錬ができたわー」」
キロとクリの歓喜の声がバイカルの中庭に響いた。ガリクスを燃料にして、アダマンインゴット精錬を応用したとのことだ。
ダイチは水車小屋まで駆け寄り、
「ありがとうございます。こんなに短期間で、感謝の言葉もありません」
「「アダマンインゴットとオリハルコンインゴットの精錬、もうこれで私たちが史上最高の精錬職人ですわね」」
「お渡ししたオリハルコン鉱石のすべての精錬にはどれくらいかかりますか」
「「完成した瞬間からもう続きの作業をしているわよ。今日の夕方には渡せるわ」」
そう言い残して、水車小屋へと去っていった。
「バイカル親方、カリスローズ侯爵の元へ参りましょう」
ドリアド領主のカリスローズ侯爵からは、西から迫る危機を知らせ、飢饉を未然に防ぐことへ貢献したバイカルに大判金貨300枚。命を賭してカミュー様へ龍神白石を届け、カミュー様のお力を復活させ、飢饉を防ぐことに貢献したとしてダイチに大判金貨200枚が与えられた。
「汝らの働きは誠に見事であった。ローデン国王もたいそうお喜びになられ、汝らに褒賞をお与えくださるということじゃ。私も鼻が高い。フォホッホッ」
と、リアド領主のカリスローズ侯爵様からお言葉をいただいた。
俺は全額をドリアドの街にある教育施設への寄付を申し出たが、
「カリスローズ侯爵様のご恩に失礼であろう」
と、バイカル親方に一喝されて思い留まった。
帰宅の途中の馬車で、
「もっともな話でした。考えてみれば、カリスローズ侯爵様の教育費が足りないと暗に言っているようなものでしたね」
バイカルは、馬車の手綱を取りながら、
「ダイチの気持ちは分かるが、そういう捉え方もあるからな。この場合には、ありがたく収めることがよいな」
と、口にした。
鍛冶屋に戻るとバイカルは、今回の特別報酬としてバルに大判金貨50枚、ガリムに20枚、他の職人たちに5枚ずつ手渡した。
更に数日後にカリスローズ侯爵を通して国王の謁見の名誉を賜ったので、すぐに首都へ向かうよう命が下った。
ローデン王国フリードリヒ・ローデン国王が一際高い玉座についた。
国王の足下の段にいた細身で鼻の下の髭が左右に伸び、くるっとカールされた男が、
「ガイゼル領主ジーク・フォン・メルファーレン辺境伯、此度の魔物侵攻におけるポポイでの撃退戦勝利の第1勲功といたす。国王陛下より侯爵の爵位を授ける。また、ガイリを新たな領地として加増する。その武勲を讃え大勲位二等獅子章を授ける。そして金20億ダルを下賜する」
「ありがたき幸せに存じます。今後もフリードリヒ・ローデン国王陛下にこの命を捧げてまいります」
ジーク・フォン・メルファーレン侯爵はうやうやしく述べた。
「次に第2勲功・・・」
ジーク・フォン・メルファーレン侯爵などが退出した後に、バイカルとダイチはフリードリヒ・ローデン国王陛下への謁見が許された。
玉座の後ろには、見覚えのある白い布地に黄色い獅子2頭が互いに背を向けながら後ろ足で立ち、その間には麦が三本実る意匠の大旗があった。謁見の間の中央にはこれと同じ意匠の大きな絨毯、玉座から伸びる赤い絨毯には豪華な金色の刺繍があった。部屋の両脇には銀色の兜と鎧に身を固めた衛兵が剣を帯びて直立して並んでいた。
バイカルとダイチは、主のいない玉座に向かい片膝を着き主の国王が御成になるのを待った。
バイカルは紅騎士四等十字勲章と金4000万ダル、生涯国税無税の特権。ダイチには紅騎士五等十字勲章と3000万ダル、生涯国税無税の特権。紅騎士十字勲章は一代に限りナイトの称号を与えることを意味する。ナイト以上の称号があれば、出入国は自由にできるという特権があった。
謁見の間を退出すると赤の絨毯が敷き詰められた廊下でジーク・フォン・メルファーレン侯爵がダイチに近づいて来た。
「メルファーレン侯爵様、此度の戦勝と侯爵の爵位、誠におめでとうございます」
ダイチの言葉に、メルファーレン侯爵は、
「我はポポイでカミュー様の背に乗る其方を見た」
「え」
あの死地の状況でもカミューの頭に跨る俺を見定めることができるとは恐れ入った。ここはどう答えるのがいいか見当もつかない。
バイカルが横から、
「さすがはメルファーレン侯爵様。夜戦それも激戦にも関わらずカミュー様の背に乗るダイチが見えておられるとは感服いたします。あの時は、カミュー様に眩しいばかりに輝く白石をお返しに伺い、その功でカミュー様の背に乗り魔物討伐を観戦することをお許しいただいたそうです」
「・・・・此度は国王陛下から第1勲功を賜ったが、ダイチよ、本来は其方だ」
「メルファーレン侯爵様、お戯れを。国王陛下の論功行賞に間違いがあるはずはございません」
ダイチは慌てて取り繕った。
「・・・・まあよい。其方もこれでナイトの称号を得た。戦場での再会を楽しみにしておるぞ」
「ご壮健をお祈りいたします」
「バイカル、西の魔物についてのお前の予想と初報は見事であった」
「恐れながら、その情報は我が鍛冶職人のバルが命を賭して手に入れたものです」
「分かった。バルに伝えてくれ。見事だったと」
メルファーレン侯爵は深紅のマントをひるがえすと小気味よい歩調で王宮の廊下を歩いて行った。
「バイカル親方、助かりました」
「ああ、メルファーレン侯爵は勘の鋭いお方だからな。おまけに人望も厚い。敵となれば恐ろしいが、味方となればこれ程頼りになる方はおられまい」
「はい、俺もそう思います」
数日後、ダイチはオリハルコンインゴットから刀を完成させた。片刃で反りのある日本刀そのものだった。白銀の刀身は60センチで脇差よりやや長い程度であり、刀身には白波のような波紋があった。更に極めて軽量かつアダマンを遥かに上回る強度を誇っていた。黒の双槍十文字を主力の武器として使用するが、懐に飛び込まれた場合には、この刀を左手で逆手の居合い抜きで切ることを想定していた。
この刀を白菊と命名した。オリハルコンインゴットを精錬した2人の職人キロとクリの双子の頭の文字をとって菊、白波のよな波紋から白菊とした。
旅立ちの日。
俺は右手に黒の双槍十文字、革製の肩掛け鞄の中にはクロー、左腰には白菊を差していた。また、カミュー洞窟への行ったときの服装と装備をそのまま再購入していた。柄にもなく縁起をかついだのだ。
バイカル親方から残りのアダマンインゴット四本、オリハルコンインゴット四本はお前の物だと言われ、ガリムさんからは残りのガリクスはお前の物だと言われ、鍛冶道具は餞別だから持っていけと言われてアイテムケンテイナーに入れていた。ミリアさんからは10日分の水と食料、ポーション5本、毒消薬3本をいただいた。
バイカル鍛冶店の前でバイカル親方とミリアさん、ペーター君、エマちゃん、ガリムさん、ムパオさん、バルさん、ナナイ、モルモ、キロさん、クリさんが見送ってくれた。
1人ひとりと握手をかわした。どれも鍛冶職人らしいごつくて太い指と掌だった。モルモの手もマメだらけになっていた。ペーター君もエマちゃんも最近は怖い夢を見なくなったらしい。家族とモルモ、キロさん、クリさんの温かい配慮で、徐々に心が安らかになっていったのかもしれない。ムパオさんは、来年には自分の店を出す予定だそうだ。バルさんは、あのポポイへの任務を完了してから、自信を深めどっしりとしてきた。鍛冶職人らしくなったなとムパオさんに言われると、俺は海の男だと豪快に笑う、別人の様だった。ナナイは相変わらずおちゃらけだが、仕事には真摯に向かう姿勢があるのでメキメキと腕を上げている。土産は肉にしてくれなんて最後まで軽口を叩いていた。
この過酷な世界に突然放り出された俺が生きる術と安らぎと得た場所だ。もう俺の家族と言っていい。皆の顔がぼやけて見えてきた。
「健康には注意しろよ」
「手紙書けよ」
「今度会う時は驚くような俺の逸品を見せてやる」
「・・・・・(笑顔)」
「「いつでもどこでもインゴットを精錬しに行くからね。お礼は葡萄の酒ワイインがいいな」」
「ダイチお兄ちゃんまた会えるよね」
「ダイチお兄ちゃん早く帰ってきてね」
「・・・・ダイチ、行ってこい」
「大変お世話になりました。必ずここに、この家族の元に帰ってきます。いってきます」
城門までの見送りは堅く固辞していたので、ここが別れの場だ。
ドリアドの街を1人で歩いていると、ドリアドの街はいつもと変わらない日常だった。活気のある商店街や威勢のよい声のする屋台。この日常こそが大事に思えた。日々の営みの中に幸せがあると感じていた。
ダイチは城門を抜けると、遥か遠くには、ロジ山脈が見えた。薄紫の山々と真っ青な空のコンストラストが鮮やかで、嶺の稜線は霞んで見えた。目の前には一面の麦畑が広がっていた。畑の手入れをしている人たちもあちらこちらに見えた。
黒の双槍十文字の装飾に偽装しているカミューに向かっていった。
「カミューもこのドリアドにはしばらく戻れないな」
『ああ、よい街、よい民である』
「クロー、神獣がいるのは、北のナギ王国で間違いないな」
『そうだ。エルフの国だ』
「さあ、ナギ王国へ出発だ」
「クロー、俺の生きる目的は、この世界で逞しく生きるだ。これは変えん。目標は、魔王ゼクザール討伐。そのために召喚を探す。そして、よりよく生きていくためにもっと手に職を付けたい。それにしてくれ」
『ダイチ、了解した』
汝の欲するところを示さん
目的
この世界で逞しく生きる
目標
1.魔王ゼクザールの討伐
2.神獣を探す
3.手に職を付ける
『ダイチ、鍛冶特級職人になっているな。鍛冶の腕前が上がったな』
「それは嬉しいな。オリハルコン製の白菊を試行錯誤しながら完成させたからな」
『ダイチ、そう言えばナギ王国は、指輪やイヤリング、ペンダントなどの彫金技術が高くて有名だぞ』
「おお、それはいいな。是非、技術を身に付けるか。クローとカミューにも俺の彫金で造った物をプレゼントするよ。何がいい?」
『私は飾りのついた栞がいい』
「よし、凝った意匠にするぞ」
『我は金の盃がよいぞ』
「カミュー、金製は高いから金メッキで我慢しろ」
『我は、神獣カミューなるぞ。メッキは断る』
『贅沢いうなよ。飲む酒は同じだ』
クローの冷静な言葉に、
『・・・・むう、し、しかしだな』
「あはははははっ、次はエルフの国か、楽しみだな」
『主、あくまで神獣を探すことが先決だからな・・・』
盛夏のドリアドから北へ向かうダイチの前には、真っ青な空と白く柔らかそうな雲、まだ緑色の麦畑の地平線がどこまでも広がっていた。
2024.1.16
ANOTHER EARTH
― 魔力がわずか1の魔法使い ―
色のない世界編
終




