第23章 帰還
第23章 帰還
7月10日、早朝。
ドリアド地方は、昨晩の大雨が嘘のように、明け方には雨が止んでいだ。
ダイチを乗せたカミューがドリアドの街の近くに降り立った。ダイチは雨除けの皮のフード付きコートを着ていた。フードを外すと、ふあーと背伸びをした。
「空の旅は快適だけど、夜明け前の雨は肌寒かったな」
と、カミューに声をかけながら、アイテムケンテイナーからクローと黒の双槍十文字を取り出した。
「クロー、起きているか」
クローの完全睡眠から3日目である。そろそろ目覚めるはずである。
『今、その本に話しかけたが、それは神獣ではないか』
「神獣? これは黒の神書、クローだ。俺が別の世界からこの世界に来た時からの付き合いだ。それにカミューに龍神白石を届けられたのもクローの力のお陰なんだ」
『その本が、主を助けていたのか』
「うん、クローがいなければ、俺は白と闇の色のない霧の森で死んでいたよ。それ以前に力尽きていたかもしれない」
『クローか、なぜ寝ている』
「俺の生得スキルの思念会話をすると3日間の完全休眠となるからさ。そろそろ起きてくるよ」
ダイチはクローを革鞄にしまった。
「なあ、カミュー、俺は召喚術士でカミューは召喚神獣だよな」
『そうだ』
「俺が神獣として召喚するんだよな」
『そうだ』
「カミューはいつ戻るんだ」
『主の脇ずっといるぞ』
「いや、一緒にいたら召喚しないことになるじゃないか」
『そうなるな』
「神獣って召喚するものなのなのだろう」
『我ら神獣は、民の願いを叶えたり、その土地や民、文化を守ったりすることで忙しいからな。そういつまでも召喚術士の傍にいるわけにはいかない』
「俺もそうだと思うけれど・・・なぜカミューは俺のそばにいるのだ」
『我の場合には12年に1度の努めができればよいからだ』
「12年に1度って・・・それって、カミュー様と崇め祈りを捧げてくれる人が悲しむのでは」
『我は破魔神獣。12年に1度の民の危機を救うのが我の努めだ。それで民が救われるのなら問題はない』
「まあ、日々の家内安全とか恋愛成就とかは違うしな。そう言われてみればそうかもな」
『分かればよい。つまり、主は我をいちいち召喚しなくてもよいということだ』
「いつも一緒にいるということか?」
『そうなるな』
「カミュー。俺の後ろに、頭や顎、背に金色の毛を生やした白龍がいたら、見た人は驚くよな。カミュー様と知ったら拝んでくるかもしれないよな。街中ではなんとかならないか」
『我はこのままで一向にかまわん。しかし、主が困ると言うのなら考えよう』
「カミュー、考えてくれよ、そこのところを」
ダイチは取り出した黒の双槍十文字の深紅の穂鞘を外し、無意識にブンブンと振っていた。
『主、その槍の装飾に擬態するのはどうだ』
「この黒の双槍十文字の装飾に擬態?」
『ああ、まあ試しだ』
カミューは30センチ程度に縮むと、黒の双槍十文字の柄の最上部に巻き付いた。黒光りする穂と赤い柄、柄の最上部に金の毛をもった白龍が巻き付いている。見た目にも違和感はなかった。
『主、どうだ』
「縮めるのか・・・・これはいけるかも、一見すると龍の装飾に見えるよな。でもカミュー、これ長時間、いや数日間こうしていられるのか」
『問題ない。容易いことだ』
「それなら、これでいこう。会話は思念会話があるから大丈夫だしね」
ダイチは朝日と重なるドリアドの門を目指して歩き出した。
ドリアドの街並みは懐かしく思えた。
「不思議なものだな。ドリアドの街に住み始めたのは約2ヶ月前、ドリアドを出てから10日間、それなのに懐かしく感じるんだ」
ドリアドの街には違和感もあった。兵士が多いし、住民も不安そうな表情でいる。
「あ、そうかポポイで魔物を撃退して、飢饉を免れたことをまだ知らないんだ」
俺はバイカル親方の鍛冶屋へと走った。中庭に駆け込むと、
「バイカル親方ー。戻りました!」
ドカドカと足音がする。店先からミリアが鍛冶場からムパオとナナイ、モルモ、ガリムが飛び出て来た。水車小屋からもキロとクリも、ペーターもエマも母屋から出てくる。
「「「「「「おかえりなさい」」」」」
「よく無事で帰って来た。よかった」
「心配していたんだ」
「「ダイチ兄ちゃん、おかえりなさい」」
「無事でよかった・・・」
ミリアさんの頬には涙が伝っていた。
「カミュー様に白石は渡せたのかぁ」
ガリムが尋ねた。
「はい、もう安全です」
「西の海岸に魔物が迫っているとバルからの情報があってのぉ。それからキリセクレ山に柱雲が見え、大地を白く照らしながらカミュー様が西に飛んで行かれたので、ダイチは成し遂げたと考えたのじゃが。その後、どうなったか心配じゃった」
「はい、カミューが、いえカミュー様が黒い魔物、麦イナゴの大群を撃退しました」
「「「「「「「やったー」」」」」」
「黒い魔物は麦イナゴの大群だったのか」
「そのことでバイカル親方にまずは報告と思って」
「夫のバイカルは、今、領主様のところへ行っているわ。ポポイの町から救援を求める伝書鳩が来たとかで」
「そうですか、では領主様のところへ行って説明します」
と、ダイチが言ったところへ、バイカル親方が帰って来た。
「あ、バイカル親方、戻りました」
「おおぉ、ダイチ! よく無事で戻った。西から迫る黒の魔物は麦イナゴの大群だとポポイから連絡が来てな、これまでのことがあったので領主様に呼ばれていたところだ」
「カミュー様が撃退しました。ご安心ください」
「そうか、やったな。これでドリアドの民とローデン王国も救われる。ん、ダイチ、撃退しましたとは、お前はそれを見ていたのか」
「ええ、撃退を目撃しています。これにはいろいろと事情がありまして」
「そうか、詳細は後だ。とにかくカミュー様がお力をお貸しくださったのだ。ダイチでかしたぞ」
「この街の民はまだそれを知らずに、不安でしょう」
ダイチの言葉にバイカルは、
「そうであった。領主様に報告して来る。ダイチも来い。ガリムは街の代表へ連絡を頼む」
結局、俺もドリアド領主ウィル・フォン・カリスローズ侯爵に拝謁することとなった。
ドリアド領主ウィル・フォン・カリスローズ侯爵様はたいそう喜び、後日褒美をとらすというと、ローデン国王へ勝利の報をアローピシェンに託した。同時に早馬の使者を各所に送った。
勿論、カミュー様が俺の召喚神獣となったことは伏せてあった。
ドリアド領主ウィル・フォン・カリスローズ侯爵からの勝利宣言にドリアドの街は湧いた。兵士たちも住民たちも肩を組み、歓喜の声を上げていた。いつしかドリアドの街には童歌が響いていた。
♪
実れよ実れ黄金の海よ
実る黄金はカミューの涙
そよぐ黄金はカミューの息吹
鳥が飛ぶ飛ぶ東空
虫が鳴く鳴く西の空
干支の七七柱雲
お天道様を手に持って
天の川を泳ぐよ泳ぐ
風の川を泳ぐよ泳ぐ
実れよ実れ黄金の海よ
見つけた見つけたあの子が見つけた
カミューのお山は黒と赤
滝とお池はカミューのお宿
♪
黒い魔物の危機と飢饉が去ったのだ。
翌7月11日まで、ドリアドでは歓喜の祭となった。
ドリアドの歓喜の祭の明けた7月12日の朝。
ドリアドの街をめざして馬で駆ける1人の男がいた。額に汗をかき、馬の首に手をあて励ましながら疾走する。ドリアドの城門をくぐり石畳を駆け抜け、バイカルの鍛冶屋に駆け込んだ。
そう、この男は「やるときはやる男」鍛冶職人バルであった。
バルは息を切らし中庭でよろめきながら、
「親方ー! 黒い魔物の正体が分かったんだ」
鍛冶屋の皆が出てくる。
バイカルを見ると、
「お、親方、黒い悪魔の正体は、む、麦イナゴの大群でした!」
バイカルは、バルに駆け寄り、
「バル、ご苦労であった。お前が命をかけて手に入れた黒い魔物来襲の情報は生きた。苦労は報われたぞ」
「麦イナゴの大群がポポイの町に迫っています。俺は漁船からこの眼で見たんです。水平線を覆う黒い麦イナゴの大群を」
「ああ、分かっているぞバル。もう大丈夫だ、解決した。落ち着いて話を聞け」
「ジバイ爺さんが呼んだ半月って鯨に漁船を引っ張ってもらって逃げてこられたんです。麦イナゴは、ものすごい数です。早く領主様にご連絡を」
「バル、全て解決したんだ。安心してくれ」
「ものすごい数です。このままではローデン王国に飢饉が」
バイカルはバルを力強く抱きしめると、バルの背を後ろからポンポンと叩いた。
「ご苦労だったバル、全ては終わったんだ。カミュー様のお力で全てが解決したんだ。お前は俺が見込んだ通り、やる時はやる男だった」
バルは抱きしめられたまま、
「む、麦イナゴの大群が・・・・」
バルの瞳から涙が流れてきた。止めどもなく流れた。そのまま地面に崩れるように座った。
「うううぅ、お、俺、親方にこの事を早く知らせなくっちゃ、飢饉を止めなくっちゃってそればかり・・・・うう、ううっ、よ、よかった、ほ、本当によかった・・・」
「バルよくやった。安心しろ。この国は救われた」
「ううううぅ、バイカル親方ー」
バルはバイカルの大きな背中に抱きついた。ムパオもナナイもモルモもガリムもキロとクリもミリアもバルを抱きしめていた。
ダイチはバルの詳細は分からないが、バイカルの命に従いポポイで命がけの任務をこなしていると聞いていた。
「バルさん、おかえりなさい」
と、声をかけると、ダイチもバルを抱きしめる輪の中に加わった。ダイチにも頬をキラリと伝うものがあった。
実際、西の水平線から東へ向かう黒い魔物について、バルからの一報は貴重だった。不安と疑念を危機として認識させたのだ。
バイカルの鍛冶屋では、皆の労をねぎらい中庭で酒宴が設けられていた。
バイカルも、ガリムも、バルも、他の皆も笑顔でこの平穏を心から喜んだ。
「「ダイチ、よくやった。もっと飲め、飲め。バル、よくやった。飲め、飲め」」
キロとクリがラームの入った酒瓶を持って、陽気に注いで回る。ダイチもバルも無事帰還し、不安から安堵の気持ちとなり、盃が進む。
ダイチはラークの酒瓶一本とパンのベグル、焼いた鶏肉、ソーセージ、茹でた野菜を大皿に盛り、中庭から自室へと戻って来た。カミューの前に酒と食べ物を盛った大皿を置いた。
カミューは、
「腹が減っていたところだ。遠慮なくいただく」
と、食べ始めた。
「カミューは何を食べるか分からなかったから、パンと肉、野菜を持って来たけれども、全部いけるんだな」
『ああ、民の供えるものは全て食す。酒もいけるぞ』
「お供え物って、感謝の気持ちを受けるだけではなく、実際に食べていたのだな」
カミューはベルクと焼いた肉を頬張り、ラームを飲み干した。
「クロー、ありがとう。お陰でカミューに龍神白石を渡せたよ」
『黒の神書よ、ご苦労であったな。我も神龍となり、ドリアドの民を救うことができた。我からも礼をいうぞ』
クローはピクピクと揺れた。
「クローも喜んでくれたみたいだな」
『ところで、黒の神書。そなたも神獣ではないのか。微かだが神獣の魔力を感じるぞ』
「カミュー、最初にクローを見た時からそんなこと言っていたな。クローは黒の神書だよ。不思議な能力を持っているが・・・不思議な能力・・・・神獣?」
『黒の神書も慣れない思念会話を強行したから完全休眠が必要となったようだが、今の主は、召喚術士レベル50を超えている。思念会話の質も上がっているはずなので、普通に思念会話ができると思うが』
「俺のレベルが上がったので、デメリットなしで思念会話ができるということ?」
『我も滝流しの時から、主と思念会話をしたであろうが』
「あ、そういえば、クローが完全休眠覚悟で思念会話をした時は、確か棘のある赤い茂の中にある大樹のうろでのことだ。レベル22だった記憶が」
『そうであろう。主が成長した今、黒の神書が神獣ならば思念会話による負の効果はないはずだ』
「本当か」
『おそらく・・・。試してみろ』
『クローだ・・・・おぉ、ダイチ、大丈夫みたいだ。負担も違和感もない』
クローが思念会話で話しかけてきた。
「クロー! 思念会話で話せるのか。よかったー。ってお前は神獣だったのか」
『私はダイチと一緒にこの世界に飛ばされて来た。神獣になっていたとは知らなかった』
「俺と一緒にって、同じ世界から同時に飛ばされたのか」
『ああ、多分そうだ。前の世界では私には自我がなかったようで、記憶はない。飛ばされて来た、そんな感じがする』
「でも、この世界のことをいろいろと知っていたじゃないか」
『ああ、ダイチに尋ねられると、その回答が浮かぶんだ。でも最初のうちは詳しくは分からなくて、短い回答になっていた。それに、定められた回答文形式からは外れられなかった』
「だからクローは今までの我とか、汝とかだったのか。今の思念会話では私、ダイチ、に変わったんだな。もう、違和感はなくなったけれども」
『でも、黒の神書として回答する場合には、前と同じ回答文形式だが』
『我は神龍のカミュー。黒の神書よ、同じ召喚神獣としてよろしく頼む』
『カミュー、私のことはクローでよい。ダイチがつけてくれた名だから』
『あい分かった』
「なな、同じ召喚神獣としてって言ったよな。クローも召喚神獣になったということか」
『まあ、そんなところだ』
『私も召喚神獣だ』
「まだ久遠の契約をしていないけれど」
『契約は儀式と意思の双方があるからな。我の場合は儀式だったが、クローは意思だな』
『そうだな』
「久遠の契約って、その命が果てるまでとか仰々しい契約の割には、手続きはアバウトでワンストップなんだな」
『私とダイチの意思が大事なんだ』
『我もそう思うぞ』
「召喚神獣にもステータスとかレベルとかあるのか」
『私のステータスを見てみろ』
ダイチは頷くと、
「黒の神書のステータスを示せ」
クローのページをめくった。
氏名:クロー 年齢:0歳 性別: 所持金:0ダル
種 :智神獣黒の神書
称号:
ジョブ・レベル:生活百科・レベル 47
体力 372
魔力 51
俊敏性 1
巧緻性 1
カリスマ性 1060
物理攻撃力 0
物理防御力 1601
魔法攻撃力 0
魔法防御力 1907
生得スキル
ジョブスキル
目的達成回答
特異スキル
完全感知
百科全集
「クロー、お前にもステータスがあるのだな。年齢がまだ0歳って新生児じゃないか」
『うるさい。黒の神書に年齢は関係ない』
「ジョブは生活百科だったのか。すごく便利なジョブだよな」
『我もこのように偏りの大きいステータスを見るは初めてだ』
『私は動けないのだから、仕方がないだろう。お前たちとは、根本的に作りが違うのだから』
「そうだよな。クローは直接戦えなくても、その知識や完全感知は俺の生活を支えたり、戦闘を有利に運んだりできる独創的なサポート能力だよな」
『分かればいいんんだ。私とお前たちでは、能力もその生かし方も違うのだ』
「特異スキルの百科全集って何だろう」
『私が所有者または主の求める書に転職できる特異スキルだ』
「ジョブを変えられるってことか、転職可能なジョブの一覧はあるのか」
『まだ無理だ。レベル50になればこの特異スキルは発動される』
『ほほー、如何なるジョブとなるか、我も楽しみだ』
「それもそうだけど、クローは今レベル47だよな。どうやってレベルを上げた。戦闘なんてできないし」
『私のレベルアップは、所持者の、今は主持ちとなったので、ダイチへの貢献度となる』
『ほほー、貢献度とはこれまた面白い』
「俺への貢献度って、分かり易いようで、漠然としているな」
『私は、神獣だからそんなもんだ』
「評価規準が明確でないと客観性や公平性に欠けるものだけどな。クローが納得しているならそれでよいけれども」
教員の人事評価に似ている気もするな、売上げとか新商品製造とか、その成果が数値や貢献度で表せない部分も多いからな。俺が評価する訳ではないのでよいか。
『我のステータスも見よ。我は自らステータスを見ることはできるが、主に知っていてもらった方が、今後の役に立つだろう』
「神龍のステータスを示せ」
ページをめくった。
氏名:カミュー 年齢:1002歳 性別:男性 所持金:0ダル
種 :破魔神獣神龍
称号:
ジョブ・レベル:神龍・レベル 92
体力 5024
魔力 5500
俊敏性 2177
巧緻性 1001
カリスマ性 32060
物理攻撃力 3311
物理防御力 3903
魔法攻撃力 4962
魔法防御力 4989
生得スキル
水魔法
風魔法
雷魔法
ジョブスキル
神龍の息吹
神龍の逆鱗
神龍の加護
龍神白石の力
特異スキル
咆哮
鑑定
「カミュー、お前1002歳だったのか。それにこのステータスの高さはなんだ。カリスマ性なんて三万もあるぞ」
『当然だ、言ったであろう神龍は4000年以上生きる。カリスマ性も当然だ。信仰の対象になっているからな』
「4000年って、人間にとっては永遠の時間だな」
『私も驚いた。こんなステータス。まさに神龍としかいいようがない』
『民の願いと祈りが込めらた龍神白石の力を使えば、ステータスは10倍以上になるぞ』
「ああ、あの台風並みの風と水竜巻、雷の嵐か。あれが直撃した魔物のことを思うと気の毒になるな」
『我は務めを果たしただけだ』
カミューは得意げな表情で牙を光らせた。
「龍神の加護と逆鱗って、どんなスキルなのだ」
『龍神の加護は、加護の対象者を禍や敵からの攻撃から守る。神龍の逆鱗とは、まあ全力で暴れることだな』
『カミュー、簡単すぎる説明だな。神龍の加護は、呪いや状態異常をかなり防ぐ。攻撃のダメージもかなり軽減する。カミューのレベルが上昇すれば、効果は高くなっていく。神龍の逆鱗は、一時的にステータスを倍にするが、我を忘れて本能のまま、気が済むまで暴れる。仲間が近くにいる場合には禁忌となるスキルだ』
『禁忌のスキルとはなんだ。我ら神龍が授けられたスキルだぞ。クローごときに愚弄されることではない』
『ごときとはなんだ。事実だろうが。逆鱗を使ったら傍にいるダイチは安全なのか。主殺しにならないのか』
『うぐぐっ、しかしだな』
「おいおい、仲間同士だろう。これから命を託す仲間だろう。クローもスキルの解説はいいが、私見をいれずに客観的に話せよ。カミュー、スキルは使い方次第だろ、一々噛みつかない。口喧嘩はクローのフィールドだから、誰も勝てないよ。仲直りしろ」
『私は、主殺しなど口が過ぎた』
『主がそういうなら・・・我もだ』
「それならよい。次は俺のステータスだ」
神獣はプライドが高くて面倒臭いな、それが神獣なのかと、ダイチは感じていた。
氏名:野道 大地 年齢:25歳 性別:男性 所持金:10,210,446ダル
種 :パラレルの境界を越えたホモ・サピエンス
称号:神龍を導く者
ジョブ・レベル:召喚術士・レベル 57
鍛冶上級職人・レベル 51
体力 1614
魔力 1(固定値)
俊敏性 309
巧緻性 4712
カリスマ性 3273
物理攻撃力 529
物理防御力 487
魔法攻撃力 728
魔法防御力 953
生得スキル
アイテムケンテイナー
無属性魔法
ジョブスキル
召喚無属性魔法:エクスティンクション
思念会話
神獣召喚
整形の妙技
特異スキル
学び
召喚神獣:神龍
黒の神書
「俺のステータスに召喚神獣として、カミューとクローがある」
ダイチはステータスページを指さして言った。
『当然だ。我もクローも主の召喚神獣となった』
『ダイチもこれでやっと召喚術士だな』
「召喚術士って、ダークエネルギーを召喚するエクスティンクションの使い手のことだと思っていた。と言うことは、召喚対象はこれ以外にもあるかもな」
『召喚術士は、ダイチ限定ジョブだから全てが未知だ。ダイチ自身で可能性を模索するしかないな』
「え、召喚術士って俺限定ジョブ? 他にはいないのか」
『正確には、過去にも召喚術士がいたようだけど。今はダイチ限定ジョブかな』
『800年前の魔王ゼクザールとの大戦では、召喚術士が6つの召喚神獣を従えて戦ったという』
と、カミューが語った。
「800年前の大戦、魔王ゼクザール、6つの召喚神獣を従えて戦った? 何だそれ、初めて聞いたぞ」
『カミューの洞窟で主から龍神白石を受け取った時に、龍神白石から先代の神龍の記憶も受け取った。先代も召喚神獣として、その大戦に参加していた』
「そんな歴史があるのか。魔王ゼクザールはその大戦で討伐されたのか」
『我の受け継いだ記憶では、魔王ゼクザールは強大で討伐には至らなかった。その力をかなり削り、封印することがやっとだったようだ』
「封印。ではまだ魔王ゼクザールは封印されたままなのか」
『そうではないようだ』
「封印の中で息絶えたのか」
『いや』
「まさか、封印が解けたのか」
『まあ、そんなところだ』
「まあ、そんなところだではないよ。めちゃくちゃ危険じゃないか」
『そうなるな』
『カミュー、お前、先代の記憶を授かって理解したということは、先代は封印の解けた魔王ゼクザールに倒されたということか』
『まあ、そんなところだ』
ここでクローが口を挟む、
『おいおい、ダイチの召喚神獣となったのは、ダイチに800年前の召喚術士のように神獣を束ねて魔王ゼクザールの討伐を狙ってのことだな』
『・・・・・』
「おいおい、召喚神獣の話が唐突でおかしいと思っていたんだ。やっぱりそれが別の目的だったのだな」
『如何にも、召喚術士の能力は必須だ。主、改めてお願いする。魔王ゼクザールを一緒に倒してくれ』
「いや待て、カミューそれでは騙し討ちだろう」
『魔王ゼクザールを倒さねば、この世界の民は滅ぶ』
「俺にはそんな力も意思もないぞ」
『・・・・それならば、我1人で行くまで』
「800年前は、6つの召喚神獣と召喚術士で、やっと封印ができたのだろう。カミューだけでは無理だろうが」
『それでもやれねばならん』
『ダイチ、この世界で逞しく生きていくことはダイチの目的だろう。人に助けられ、助けていく生き方を目指すのだろう。この世界の民の危機だぞ』
「あぁー、もうクローには口では勝てない。その正論は的を射ている。クローは知的、合理的で、理屈っぽいなぁ」
ダイチはカミューを見ながら、
「分かった。一緒に戦おう。しかし、2つだけ約束をしろ。1つ目は、もう騙し討ちはするな。すべて正直に話せ」
『承知した』
「2つ目は、カミュー、クロー、絶対に死ぬな」
『承知した。主もだ』
『ダイチ、もちろんだ』
「カミュー、魔王ゼクザールについて知っていることを全て話せ」
『承知した』




