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09. 接近遭遇

 街へと続く坂道をぼちぼちと歩いたが、別荘地であるためかタクシーは捕まらなかった。

 

 そのうち賑やかな大通りに出ると、通行人の数が増えてきたので街路樹の影に身を隠した。走ってくるタクシーが遠くに見えたら道に出て手を挙げればいいのだ。


〝ガチャン、ガチャン〟

 どこからか変な音が近づいてくる。


〝ガチャッ、ガチャッ〟

「本当にこの辺りなのか?」

「だって、僕のマップにはちゃんと表示されてますよ」


 深く被ったフードから(のぞ)くと、甲冑を着て大きな剣をぶら下げた二人組が歩いていた。


〝ガチャン、ガチャン〟

〝ガチャッ、ガチャッ〟

「でも、縮尺が大きいから大雑把にしか分かりませんね」

「俺たちのレベルが低すぎるんだな、もっとレベルを上げたらピンポイントで表示されるんじゃないか?」


 兜の隙間から見えるその顔と声を、俺は知っている。


「この使えないマップ機能って、押本さんの設定ですよねー」

「だな。まあいきなり詳細が分かるとバランスが崩れるからな」

〝ガチャン、ガチャン〟

〝ガチャッ、ガチャッ〟


 二人は俺と凛子に気づかず行ってしまった。デザイン部の折原と大井田だ。さすがと言おうか、かっこいい騎士と戦士を選択したようだ。そしてありがちだが、自分の目で周りを確認せずにスマホだけを見ていると、そばにいる目標物に気づかないのだ。

 ちなみに、二人が話していたマップ機能というのは、ログインしているプレイヤーの位置を表示できるスキルのことだ。レベルが低いと拡大できず、あまり役に立たない。


「あの二人は昨日、私がスカウトしたんだ」

 なるほど、凛子が俺の屋敷に帰って来た理由が分かった。プレイヤーが討伐対象である魔王を探すのであれば、凛子は俺のそばで待っているだけで全員を観察できる。テストプレイを評価するには都合がいいわけだ。

 それにしても、よくもあんな格好で街を歩けるもんだ。案の定、周りにいる人たちから注目を浴びているおかげで、こっちは目立たずに動きやすい。


 タクシーの運転手と気まずい時間を必要以上に過ごした俺と凛子は、ようやくのことで会社のビルに到着した。間の悪いことに、何故かあちこちで交通事故が発生していたため、長い渋滞に巻き込まれてしまった。しかし、日曜日なのでビルの中に入って待つことはできず、やむなく行き先を俺のアパートに変更した。街をうろついてN.P.C.と出会うのは避けたい。


 なんとか部屋に着いたところでマップ画面を確認すると、俺がいる中心から離れた位置に、並んだ二つと一つの光点が表示されていた。並んでいるのは折原と大井田だから、他にもう一人いるのだ。とにかく、余計な遭遇を避けるにはこのアパートの中で静かにしているのが一番だ。


〝ピンポーン!〟

 ちょっと待て。

 静かに息を殺してドアのスコープを覗くと、デザイン部の海乃幸がいた。大きな帽子を被り、全身をコートで隠しているので顔しか見えないが、どうやら俺と同じケースらしい。彼女が残りの一人か。それにしても、本当に役に立たないマップ機能だ。一体誰が設定を……。


〝ピンポーン!〟

「押本くーん!」

 なぜか声がいつもより綺麗に聞こえる。とても滑らかで心地がいい。

 だが、どうやって俺の居場所を突き止めたのだろう? 住所は知らないはずだから、何かのスキルか? やはり俺を討伐しに来たのか?


「ママー、お腹空いたー」

「もうちょっと待ってね」

「!?」

 もう一度スコープを覗くと、後ろに男の子が立っていた。たしか小学四年生だったか。

 俺は意を決して、ドアを開けた。

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