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01.少女は、俺を指さした

 

 連日の残業がようやく終わると、フロアに一人残った俺は照明を消し、守衛に挨拶をしてビルを出た。終電間近の街は死んだように静かで、街灯だけが騒がしい。

 しばらくはこんな生活が続くのだろう。オンラインゲームの制作だけではなく、専用の運営システムA.I.まで同時に開発するとなると、息を継ぐ暇もない。


 空を見上げると、ポツリポツリと小さな星が瞬いている。点滅しながら真っ直ぐに移動する光は飛行機だろうか。しかし、急に方向を変えて向かってくるように見えるのは疲れているせいか……。


 しばらく駅に向かって歩いていると、小さな靴音が聞こえた。

「お前が押本(おしもと) (さかえ)だな?」

 背中の声に驚いて振り向くと、一人の女の子が立っていた。小学校の5〜6年生ぐらいだろうか? 背は低いが、幼い顔立ちにもかかわらず意思の強い目をしている。セーラー服は学校の制服なのか、塾の帰りらしい。最近では小学生でもこんな夜中まで勉強をするのか。


「28歳、男、BBソフトウェア開発株式会社の企画主任兼プログラマーで間違いないな?」

「あ、ああそうだけど……なぜ俺のことを……」

「私はお前を救いに来た」


〝ビシュン!〟

 少女は左手の人差し指から一筋の光を放つと、俺の体を二つに切断した。

「プガッ……」

 腰で上下に分かれた俺は、血を吐いてアスファルトに崩れた。不思議と痛みはない。


 少女が俺の目を覗きこ込んでいる。

「まだ意識があるのか? まあ、あと数分で完了するから、安心していいぞ」

 何を言っているんだこいつは……殺し屋? 誰かが俺を殺せと……。 

「……だ、誰が俺を……殺せと命令……したんだ……ゲプッ」

 すると少女は、また俺に左手の人差し指を向けた。


「お前だ」


「!?」

 何故……俺が、俺を……?。

「ついさっき、お前は〝自分を救ってくれ〟と、私に()()したじゃないか。もう忘れたのか?」

 入力? 何の話だ……。

「私はこの時代の文明については十分に調査したからな。人間は死によって救われることを知っているぞっ。ほら、あと数十秒だ。何だ、泣くほど嬉しいのか?」


 意識が薄らいできた。とても寒い。


「まだ……死にたく……ない……」

「おい……まさか死では救われないとでも言うのかっ?」

「…………」

「おいっ、押本っ、返事をしろっ!」

 そうだ……明日は有給を取って……日帰りの温泉旅行にでも行こう……。

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