1ページ 開幕③
たどり着いた先は洞窟だった。
子供たちが洞窟の中へと入っていく。
ネモフィラは木陰に隠れ、様子を見ていた。
あの中に子供たちがいる。けど、キャストの姿がまだ見えない。洞窟の中かもしれないが、ネズミで襲撃された時点で、もう敵に気付かれているはず。
子供の行く先をわざと見せたとしか思えない。
どこにいる。
背後に気配が感じる。
振り向けば、一人の少女が立っていた。手に銃を持っている。
銃を少女の頭に向ける。
「ま!」
その時、背後から重みを感じる。そのまま倒れてしまう。
ネズミの鳴き声。大量のネズミが体を抑え付けられている。
「あなたが管理人ですか」
男の声がした。
顔を上げれば、枝の上にピエロのような格好をした者が座っている。
ピエロの姿。笛の音。ネズミ。音に誘われる子供たち。事件がハーメルンから始まった。
キャストの正体は。
「ハーメルンの笛吹き男でしょ。あなたは」
ネモフィラは睨みつける。
『ハーメルンの笛吹き男』
グリム兄弟が書いた童話。
ドイツのハーメルンで大量発生したネズミに困っていた時に現れた笛吹き男が、報酬をもらう代わりにネズミを追い払うことを町と約束した。笛でネズミを操り、川に落とした。
ところが、町は約束を守らなかった。怒った笛吹き男が笛で子供を操り、町から子供は消えたという。
「管理人は人間を守るのも仕事なんですよね」
「子供を使うなんて。それにまた誘拐して何をするつもりよ!」
ハーメルンの目的はなんだ。わざわざ子供たちを集めてどうする。
もう一冊感じる。
「この本を試したくなりました」
ハーメルンの手に本を持っていた。
「原本・・・」
「この本はですね。『子供たちが殺しごっこをした話』というものなんですけど、ご存知でしょうか」
『子供たちが殺しごっこをした話』
グリム童話の一つ。
子供たちがと殺ごっこをして、ある子供がナイフで殺す事件が起きる。
議会にかけられたが、幼い子供のため、難航していた。
そこでリンゴと金貨を選ばせることにした。リンゴは無知無分別としてみなし、無罪とし、金貨は価値判断ができるから死刑にするという。
子供は笑顔でリンゴを選び、無罪放免となった。
「この本を見たくなりましてね」
笛吹男は、不適な笑みを見せる。
『子供たちが殺しごっこをした話』がキャスト化したら、子供同士で殺し合いが起きるかもしれない。
「待っ!」
ネズミが体を噛みつく。体が徐々に削られていく。
「動いたら、その子はどうなりますかね」
銃を持った少女はまた自身の頭を向けられている。人質。動いたら、少女の頭を打つという。
「それにしても我慢強いですね。叫ばないとは」
その時、銃声が鳴った。
少女が撃ったかと思ったが、少女が持っていた銃が弾いた。
さらに笛吹男は原本をずらし、何かが目の前にまで飛んできた。
それは印鑑だった。
印鑑を押して先に図書館に転送しようとしたのか。
つまり。
「そうでした。管理人は二人組でしたね」
笛吹き男が振り向きながら、長い笛を召喚し、向かってくる剣を受け止める。
「外したか」
チャールズが睨みつける。