5ページ 殺人鬼②
アメリカ
夜の森。
「さっさと本に戻りなさい。青髭!」
ネモフィラは、青い髭をはやした男に怒鳴る。
『青髭』
シャルル・ペロー童話集の一つ。
青い髭を生やした「青髭」は、7回目の結婚で4人兄弟の末の妹と結婚する。
ある日、青髭から開けてはいけない扉を妹が開け、その中には、先妻たちの死体だった。青髭に殺されそうになった時に、二人の兄に倒したことで妹は助かったという話。
ネモフィラは大ハサミで短剣を持つ青髭に向ける。青髭も短剣を持ち直し、ネモフィラに襲いかかる。
大ハサミと短剣がぶつかり合う。
「おい、フィラ!相手はBランクだ。時間をかけるな!」
「分かっている!」
知名度によって魔力の度合いが変わる。
Bランクのキャストは、国内でも知名度が少ないから、魔力も少ない。それにヨーロッパではそれほど知名度が少ないなら、アメリカも変わらない。
苦戦するほどのキャストではない。けど。
「私たち、キャストは登場人物に合った魂。つまり大半が人間だってことよ」
かぐやの言葉に気になって戦いに集中ができなかった。
キャストから人間を守るのが、図書館の管理人の仕事。
だとしたら、キャスト化した人間は対象にならないのか。
分からない。いくら考えても分からない。考えてどうする。
今考えることではない。仕事をしなければ。
けど、目の前にいる青髭も人の姿をしている。だとしたら、元は人間。
「フィラ!」
青髭が短刀を下ろしている。
大ハサミで振れば、本に戻る。
「つまり大半が人間だってことよ」
大ハサミの刃を反対にして、青髭の腹に押し飛ばす。
手の力が抜け、大ハサミが落ちる。
――なんで。切らなかった。
「フィラ!」
チャールズの声だった。
声のした方へと向く。
見たことがない顔をしていた。
驚いたような顔だった。
「なぜ、切らなかった・・・」
地震でも分からない。
確かに切れるチャンスがあった。
けど、切らずに飛ばした。
関わってはいけない。切ってはいけない。保護対象となっている人間かもしれないから、切らなかったのだろうか。
「今はいい。結界の外に出た。早く回収するぞ」
キャストを逃がさないため、人が入らないように張った結界。
このままでは人に襲われる。
「ええ」




