第7話 謎の種族/カズヒト
ヤーマ連合王国が建国されたのははるか2000年も昔……
当時、辺境の弱小国家だったヤーマ王国が中心となり周り小国家が次々と連合国に加盟するいう形のもと実質はヤーマ王国に帰属したのが始まりだという。
何故、弱小国家であったヤーマ王国が周りの小国家を帰属させれるくらいになったのか……それは現在のヤーマ連合王国を見ても分かる通り、化学技術力、医学が急激に発達したのが原因だ。
2000年前のヤーマ王国は文字すらなく、国とは言えないくらいの集落みたいなものだったらしい。なので周りの国に攻められるたびに逃げ回り拠点を変えていた『放浪国家』だったそうだ。
しかしある時、転機が訪れる。
流れ流れてようやく辿り着いたムーア大陸西側の辺境の地、現在首都のある『アスカール山』の頂上で暮らしていたヤーマ人の前に突然、迷彩柄の服を着た『謎の種族』が数百名ほど現れたのだ。
やっと落ち着ける土地に巡り合え心身ともに疲弊していたヤーマ人に得体のしれない『謎の種族』と戦う気力など無かったヤーマ人達はこの地で滅びるものと覚悟をした。
しかし彼等はヤーマ人に対して意外な行動をとってきたのだ。
そう、彼等はヤーマ人達を攻撃するのではなく手振り身振りで『友好』を求めてきたらしい。
最初は『謎の種族』のことを警戒していたヤーマ人達も彼等の態度や初めて見る文化に触れていく中で少しずつ少しずつ警戒心が薄れていき彼等との交流が始まった。
そうした中、ヒメカの先祖で当時のヤーマ人の長だった『オーラス』の娘『テーラス』と『謎の種族』の中で若手のリーダー格だった『オーガ』と名乗る男がとても気が合ったみたいでオーガはテーラスからヤーマ語や大陸の地理や歴史について学び、テーラスはオーガから文字の必要性や科学技術、医学などを学んだそうだ。
そしてオーガとテーラスの2人は頻繁に会っているうちにお互い惹かれあい密かに愛を育むこととなる。今の俺とヒメカの関係とそっくりだ。
それから数年後に2人は結婚し、テーラスは結婚後『オーガ・テーラス』と名乗るようになる。当時苗字の無かったヤーマ人にとってテーラスが苗字第一号のヤーマ人になったのだ。そしてその後、2人の間に子供も授かった。
2人の間に生まれた長男『オーガ・カズマ』が後の初代ヤーマ連合王国の国王となる。ちなみに母親のテーラスはカズマを生んでしばらくしてからあの『転移魔法』が使えるようになったそうだが、文献にはその魔法を使用した詳細は記されていないそうだ。
こうして瞬く間にヤーマ王国は科学技術や医学が向上したと同時に『謎の種族』が森に隠していたという見たこともないような兵器や武器などにより自分達の国を外敵から守ることができるようになった。
そして前にも説明したが『黒油』を掘り当てたお陰で『謎の種族』の兵器の燃料も開発することができ、その後、同じ兵器を大量生産できるようになったのだ。それにより戦争では負け知らずと恐れられていた大国の『魔族帝国』や『魔法連邦国』に何度も敗北の文字を刻みつけることができるようになる。
俺からすればミサイルなんかで敵の防御魔法を破れるがはずないと思ってしまうのだが、実はそうでもないらしい。ミサイルの威力や敵の魔力値との差によっては防御魔法が効かないというのは普通だそうだ。
ただ逆もしかりだ。魔力値の高い敵がヤーマ連合王国の防御魔法を破るくらいの攻撃魔法をしかけてくることもある。しかし、彼等はことごとく『謎の種族』達に返り討ちに合う。それも彼等の武器だけで返り討ちに合うのではなく彼等の身体能力に歯が立たなかったのだ。
『謎の種族』は俺と同じく一切魔法は使えなかった。
当時は測定機械が開発されていなかったので数値は謎だがおそらく俺と同じで魔力値は0だろうとヒメカが言っていた。
しかし、これも俺と同じで身体能力はヤーマ人どころかムーア大陸の人々の数倍の能力があったと文献にも残っていて……
今の俺で説明するとおそらく100mを5秒以下で走ることができる。
握りこぶしくらいの石を投げれば恐らくだが時速300キロは出ていると思う。小石を大量に投げるだけで機関銃のような凄い武器になってしまうのだから驚きだ。
更にジャンプするとえげつないことになる。
普通にジャンプしただけで数10メートルは飛び上がれるのだ。
ただジャンプに関しては問題がある。今の俺もそうだが飛ぶ瞬間と着地をするたびに大きな衝撃が起こり地面に大きな穴を作ってしまうのだ。
だから俺もそうだが当時の『謎の種族』達も本当の戦い以外ではジャンプは控えていたらしい。
そんな彼等の存在やヤーマ王国の科学技術力を知った近隣諸国やこの間まで敵対していた国でさえ、自分の国を『魔族帝国』や『魔法連邦国』からヤーマ王国の技術力や『謎の種族』達に守ってもらいたいという思いで、こぞってヤーマ王国に同盟を申し出てきたのだ。
表向きは同盟国という形にはしているそうだが実際は各国、ヤーマ王国に帰属し各国王達はヤーマ国王に忠誠を誓っている。
そしてここから今の『ヤーマ連合王国』へと歴史が受け継がれていったのだ。