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第6話 疑問/カズヒト

 これだけ技術が発展しているのに何故、燃料を鉄輪油に頼っているのか? 


 電気エネルギー国家のヤーマ連合王国なら『リチウムイオン電池』などを開発して『電気自動車』もしくは『ハイブリッド車』くらい簡単に製造できるんじゃないのか? 


 もっと言えば『ソーラーカー』でも構わない。


 俺は日本で『リチウムイオン電池』や『ソーラー電池』の一部を製造している工場に勤めていたので余計にそう思ってしまう。


 それにこれだけの国に飛行機が無いのも不思議で仕方がない。浮遊魔法で空を飛べるから飛行機は必要ないのか? でも国民全員が浮遊魔法を使えるわけではないと聞いている。


 転移魔法……これはめちゃくちゃ便利な魔法だが現在、ムーア大陸でこの魔法を使える者は誰1人いないということらしい。当初の俺は転移魔法を使える人間に元の世界へ戻してもらおうとも考えていたけど、1人もいないのであれば仕方がない。


 それに今の俺には愛するヒメカがいる。だから今更、日本に戻りたいという気持ちは無くなっているしな……



 話を戻すが以前、俺はこれら電気に関する疑問をヒメカにぶつけてみたが答えはこうだ。


「それはね、みんな多かれ少なかれ魔法が使えるからこれ以上技術を発展させなくても不便じゃないってのもあるし……この国の技術者達も現在の兵器などを改良する程度の向上心しか持っていないってのもあるし……それにあまり多くの物を発明しちゃうと敵対国、特に『魔族帝国』などに技術が奪われ悪用されてしまう恐れもあるから……」

 

 この国はとても平和でありながら戦闘になればめちゃくちゃ強い国だからそう簡単に敵が攻めてくることは無いと思うのだが神経質なくらい常に外敵を警戒しているんだよなぁ……


 でもまぁ油断大敵だし、だからこそ2000年もの間、平和国家が維持され続けているのは間違いない。


 特に魔力値・身体能力値100超えがゴロゴロいる『魔族帝国』と魔法こそが全てで科学技術に頼っている『ヤーマ連合王国』は腑抜け国家だと見下している『魔法連邦国』は警戒しないといけない国だとヒメカも国王も言っていたよな。


「そ、そうなんだ……」


「というのは建て前で実のところはこれ以上の開発をしないのも『建国以来の掟』なの」


「え、これも掟なのかい?」


「『建国の祖』いわく、技術の発展は国を潤わせる反面、国を滅ぼすこともある。それ故に電気エネルギー開発、黒油の利用は必要最小限にとどめるよう。また先で今から言う技術が開発できる能力が訪れたとしても絶対に製造しないでほしい……ってね」


 なんという掟だよ。それに先で開発できる技術って……その『建国の祖』の人達は先でどんなものが開発できるのかも分かっていたってことだよな? 


 『建国の祖』ってどんな人達だったのだろうか?


 しかし、それはそれとして、この国の掟を日本人、いや地球人に知ってもらいたい気持ちになってしまう俺がいた。


 別にここまで徹底した掟を真似しろとは言わないが少しでもこの掟通りにすれば各地で起こっている紛争や環境破壊などは激減できるんじゃないのか……


「でもカズヒトが言う鉄輪油を使わずに動く鉄輪車は魅力的だね。匂わないし環境にとても優しいと思う。今度、お父様に提言してみようかしら」


「ハハハ、そうだな……」


 でもおそらく国王はこれ等の技術は知っているんじゃないか?


 しかしこれ等を開発してしまうと、次から次へと開発の流れが止まらず最後には国を滅ぼしかねない技術まで到達してしまうのを恐れているのかもしれない……


 だから今の技術力くらいが止め時なのかもしれないな。


 

 そういった掟を2000年もの間、忠実に守りながらも敵国には無い技術力で外敵を追い払い現在まで平和を維持している『不戦国家』のヤーマ連合王国……


 頭が下がる思いだけど、『不安要素』が無いわけではない。


 俺の不安が当たらないことを今は祈るしかない。

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