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第32話 英雄の息子/カイシ

「―――という作戦なんだがどうだグリス? 良い作戦だと思わないか?」


「はぁ……カイシ、君は毎日そんなことを考えているのか? そろそろヒメカ王女のことは諦めたらどうだ? どう見てもヒメカ王女はカズヒト殿を好いている。おそらくカズヒト殿も……先日のヒメカ王女の台詞を忘れたのか? カズヒト殿のことを『専属パートナー』と言っていたんだぞ。これはそういうことだろう? だから私はあの日からきっぱりと諦めたぞ……」


 グリスの野郎、平気な顔をして嘘を言いやがる。

 この男は昔から食わせ物だからな。きっと俺を油断させておいて……


「そうだよ。グリスの言う通りだぜ。でも俺はまだヒメカ王女のことを諦めてはいないが、奴を陥れてまでヒメカ王女の気を引こうとは思っていないぜ。将来俺はカズヒトが尊敬している父上を超える文官になって、いずれは父上と同じ内務大臣になりヒメカ王女を経理面から手助けをするんだよ。そうすればそんな俺のことをヒメカ王女は……フフフ……」


 ダルゴお前……先日カズヒトに言われた言葉に影響されまくりじゃないか。となると俺もダルゴ同様、父上を超えるような戦士になれば……って、俺は何を考えているんだ!? これではダルゴと同じ『単純バカ野郎』じゃないか。


 俺が父上を超えるのはカズヒトうんぬん以前に当たり前のことだ。

 父上を超える……ん!?


 そうだ。父上の魔剣はあの一流刀鍛冶師のアッソー・モリゴスが作った剣だったよな? 


 それで最近、その息子のグリゴスが独立してアスカールで鍛冶屋を始めたと聞いたぞ。そして何故かカズヒトに魔剣を作ったという噂も……


 グリゴスも一流鍛冶師だし、そう簡単にどこの馬の骨とも分からない奴の魔剣なんて作らないはずだ。どうせヒメカ王女の口添えがあったのだろう。


 よし、俺もグリゴスに魔剣を作ってもらおう。俺のような身体能力値95の男にならグリゴスも喜んで魔剣を作るに違いない! 次の休日にでもグリスとダルゴを連れて行くとしよう。


――――――――――――――――――――――――

そして休日……


【鍛冶屋 アッソーですか】


「帰れ! 貴様のような奴に魔剣など作らん!!」


「な、なんだと!? 俺はただ『なんというふざけた名前の店だ』と言っただけけじゃないか!!」


「だからじゃ! ワシの店の名を侮辱する奴に魔剣だど作るわけなかろう!! この店の名前は前の武術大会にて圧倒的強さで優勝した『ヤーマ連合王国の英雄二世』と名高いカズヒトが付けてくれたのじゃ!! そんな英雄が付けてくれた店の名をふざけた名前だと貴様は言ったんじゃ!!」


 しかし『アッソーですか』のどこがふざけていないというんだ!?

 それにカズヒトのことを『英雄二世』と呼んでいるのも気に食わねぇ。

 英雄の息子……英雄二世は俺だ!!


「おい、グリスにダルゴもこのおっさんに何か言ってくれ!!」


「誰がおっさんじゃ!? ワシはまだ30歳になったばかりだぞ!!」


「おい、グリス! ダルゴ!」


「いや、私はこの店の名はアリだと思うぞ。なかなか面白い名前じゃないか……」


「そうそう、俺も逆にいいじゃんって思ったぞぉ。それに鍛冶屋って堅いイメージがあるから、こういう名前の方が身近に感じて客も来やすいんじゃないのぉ……」


「おーっ、連れの2人はこの名前の良さが分かっているみたいだな。そうなんじゃ。カズヒトが言うにはこれからの時代は腕が良くても普通の名前で商売をしたって儲かる保証はない。なるべくインパクトのある名前にした方が客の目にも入りやすくなり来店してくれる確率が上がると言って考えてくれた名前なんじゃ。あんたらには要望があればどんな武器でも作ってやるぞ。勿論、2年保証付きでな」


「 「よしっ」 」


 お、お前等……腹黒コンビめ……


 俺は2人の助け舟は諦めて再度、店主のグリゴスに文句を言おうとした時、事件は起きた。


 ドッカーンッ!! ドンッ ドンッ ドッカーンッ!!



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