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第23話 絶対神ムーア/カズヒト

 今日は久しぶりにヒメカと2人きりで出かかている。ヒメカがどうしても行きたいところがあるから一緒に来てほしいとお願いされたのだ。


 といってもデートではなくヒメカの護衛だと俺は思っている。


 今日はこの大陸大半の人間が信仰している『絶対神ムーア』の月に一度のミサにお忍びで参加するために首都アスカールの最南端にあるアスカール教会に来ているのだ。


 2人とも変装した姿でだ。ヒメカは王女様だから参拝者にバレるとパニックが起こるかもしれないが、俺まで変装する必要はないと思うのだがヒメカが言うには「カズヒトも剣術大会で優勝して有名になったから変装した方がいい」とのこと……でも俺だとバレて何かあるのだろうか?


 まぁ、いずれにしても俺は今回初めてその絶対神ムーアを信仰する『ムーア教』のミサに参加する。


 『絶対神ムーア』は名前の通り、このムーア大陸を創った絶対的神と言われていて、そのムーアには『三神』と呼ばれる3人の弟子がいた。


 『魔法神まほうしんセレマーン』魔法連邦国のみが信仰している神、そして『竜神りゅうじんドレイク』この神は龍族のみが信仰しているそうで、最後に『悪魔神あくましんボロス』この神は魔族帝国のみが信仰している邪神と呼ばれる神でヤーマ連合王国では絶対神ムーアを裏切った神だと言い伝えられている。


 俺がいた世界の歴史を紐解けば『宗教戦争』が頻繁に起こっていたが、ヒメカいわく「この世界も同じようなものだよ」とのこと……


 神の名のもとに戦争をして本当に神様が喜ぶのか? という疑問が常に俺の心の中に付きまとっているが、今日はそんな難しいことは考えずにヒメカの護衛に集中しようと思う。


 まぁ、今日のヒメカは俺を護衛だとは思っていないみたいだが俺にとっては常にヒメカの護衛、ボディーガードだと思っているので真剣だ。


 真剣ついでに今回はヒメカには内緒でアルスにも陰から護衛を頼んでいるくらいだからな。


 いくら変装をしているといっても俺はともかく、ヒメカはやはり王女様だ。本人は気づいていないみたいだが他の参拝者よりも貴賓があって『ただ者ではないオーラ』が湧き出ているので通り過ぎる参拝者は皆ヒメカの方を振り向き見入っている感じがする。だから万が一にも外敵に襲われてもおかしくはない状況なのだ。


 しかしこの国の守りは厳重なので外敵はそう簡単には侵入はできない。だから襲ってくるとしても金品目当ての強盗か身代金目当ての誘拐犯くらいだろうけど……まぁ、そんな輩だったら俺でもなんとかできるだろう。


 ただ俺は魔力値がゼロなので広範囲での敵の気配を察知することはできない。離れた場所からの狙撃なども防ぐ自信はない。でもその点、アルスは俺とは違って魔力値は高くはないが察知魔法が使えるからとても助かるのだ。


 ほんとアルスは俺よりも護衛に向いていると思う。ほとんど彼の気配が感じられないもんな。このレベルなら国の秘密部隊やアサシンとして働けるんじゃないのか?


 アルスに陰からの護衛を頼んだ時、「うわっ、1度そういうのをやってみたかったんですよぉ!」と言ってめちゃくちゃ喜んでいたけど、こういう仕事が好きなのだろうか?


 しかしアレだな。さすがに参拝者達もあまり派手さのないアスカール教会に王女が来ているとは思ってはいないみたいだな。おそらくどこかの貴族がお忍びでミサに来ているのだろうといった感じで見ているようだ。


 まぁ街中にヒメカのポスターさえ貼りまくらなければ目元だけしか見えない状態の変装をする必要もないんだけどな。


「ねぇカズヒト?」


「ん、どうしたヒメカ?」


「今日はどうして手を繋いだり腕を組んじゃいけないの?」


 今のヒメカは可愛い瞳しか見えないが俺には膨れっ面をしているのがよくわかる。


「それはお忍びだからだな。それに神聖なミサをデートと一緒にするのもどうかと思うし……」


「でもカズヒトはこの国の神『絶対神ムーア』を信仰している信者ではないから気にしなくても……」


「イヤイヤ、君は信者じゃないか」


「今の私はカズヒトの信者よ♡」


「オイオイ……こんなところでドキッとするようなことを言わないでくれるかな? バチが当たっても知らないぞ」


「フフフ、その時は私を助けてねカズヒト?」


 俺に絶対神ムーアと戦えっていうのかい?

 はぁ……ほんとヒメカは可愛いすぎるよ。

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