第22話 グリゴスの魔剣/カズヒト
俺は剣術大会で余裕の優勝を果たしたが、それを客席から見ていたグリゴスは俺の剣がかなり刃こぼれしていることに気づいたらしい。そして大会終了後に声をかけてきたのだが……
グリゴスいわく、俺の剣は『ヤーマ鉱石』と呼ばれている地球で言えばただの鉄で作られたもので刃こぼれは勿論のこと、戦う相手によって剣が折れる可能性も高くなるということだった。
魔法が使える者は魔力値によって差はあるが普通の剣に『防御魔法』をかけ、攻撃からの衝撃を和らげることができる。更に剣から『攻撃魔法』も放てるので前に軍務大臣の息子、ソーガ・カイシが言っていた「大会で魔法も併用して使用できれば俺に勝てた」ということだ。
まぁ、カイシくらいの魔力値では魔法を発動する前に俺の攻撃を受けて気絶していたのは間違いないが……
いずれにしても国内レベルなら今まで使っていた剣で十分だが、それが外敵相手となるとそうもいかないとグリゴスが強く主張してきたんだ。
特に魔力値、身体能力値いずれも100超えがゴロゴロしている『魔族帝国』や魔法が全てだと豪語している魔力値150超え集団『魔法連邦国』などの戦士達と戦うことになれば俺の剣は直ぐに折られてしまい、肉弾戦で戦うことになるだろう。
おそらく肉弾戦でも俺の身体能力なら戦えるだろうが倒せる人数が減るのは間違いない。まぁ、そうなった時は『奥の手』があるのだが、それはそれで面倒な装備になってしまう。
なのでこの際、グリゴスの助言を聞き入れ俺専用の『魔剣』を作ってもらったんだ。その会話の途中で俺に弟子志願してきたアルスとも親しくなったグリゴスは二人分の剣を作ってくれるという話になつたというわけだ。
「この剣は凄いぞカズヒト! ムーア大陸南東の国『龍国』の竜人が戦闘モード『ドラゴン』に変化した際にできる強い魔力のこもった『ドラゴンの鱗』をベースに作った魔剣なんじゃ」
「えっ、そうなのかい?」
「そうじゃ。知っての通り『龍国』はヤーマ連合王国と同じく『不戦国家』だが、敵が攻めてきた時は鉄壁の防御ととんでもないレベルの攻撃力であっというまに敵を壊滅させてしまう国じゃ。そんな彼等の『ドラゴンの鱗』をベースに『魔鉱石』『獣人族の爪』をワシの『融合魔法』でこれ等のレア鉱物を融合させドワーフ国に3本しかない特別な金槌『神の鉄槌』で三日三晩叩き続けて完成した魔剣じゃ。そう簡単には折れんぞぉ!!」
「ほんと凄いよ。触っただけでこの剣がとんでもない魔剣だというのがわかるよ」
「ハッハッハ、そうだろぉ!! それにもう1つカズヒト専用に制作中のものがあるから、それは完成次第持ってこよう」
「え? もう1つ俺専用のものがあるのかい?」
「ああ、そうじゃ。でもそれは完成してのお楽しみということでな。まぁ気にいったら購入してくれ」
「わかった。楽しみにしているよ。それでアルスの短剣も含めて料金はいくらになるんだい?」
「そうじゃなぁ……今回は『お客第1号と2号記念』ということで大サービスじゃ。ヤーマ金貨100枚のところ半額の50枚、ただし『2年保証』をつけるなら金貨60枚でどうじゃ? それと『返品期間』は2週間以内ということでな」
※ヤーマ金貨1枚:日本円で約2万円
「『2年保証』『返品期間』??」
ヒメカが目を丸くしているが金額に驚いているわけではなく、聞いたことのないサービスに驚いているのだろう。
まぁ無理もない。この国、いや大陸でこんな商売をしている店は聞いたことがないからな。でも俺は正直言うと金額にビビっているんだけどな。この5年の間に貯めてきたお金が……でも背に腹は代えられない。俺には魔剣が必要なんだし……じゃないとヒメカを守ることができない。
「そ、それじゃぁ、『2年保証』付で頼むよ。金貨60枚は来月末の払いでいいかい?」
「ああ、それでいいぞ」
ヒメカが俺に近づき小声で質問してくる。
「ねぇ、カズヒト? 彼の言っている『2年保証』『返品期間』って何なの?」
「ハハ、それは魔剣を購入してから2年間の間に刃こぼれをしたり折れたりした場合は無償で修理、もしくは新しいものと交換してくれるサービスだよ。ただ彼の作った魔剣はそう簡単に刃こぼれなんてしないから金貨10枚は彼の利益になるだろうね。それと『返品期間』というのは購入して気に入らなかったら2週間以内に返品すれば料金が戻ってきくるサービスのことなんだ。まぁこれ等のサービスは俺がグリゴスに提案した商売方法なんだけどね。」
「へぇ、凄いサービスね。でもカズヒトの居た世界ではこれが普通だったってことなのよね?」
「うん、そうだね」
「オイオイ、カズヒト、何を言っておるんじゃぁ! 今回は半額にしているから2年間刃こぼれなどが無くてもワシは儲からんぞ。今回は『大赤字』覚悟じゃ~!!」




