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第11話 初恋/ヒメカ

 私はヤーマ連合王国王女、オーガ・ヒメカ


 私が15歳になった年の秋、大きな木のある丘の上を散歩していると木にもたれながら眠っている『男性』がいた。


 こんな時間にお昼寝って良いご身分だこと。でも私もこんな時間に散歩しているんだから偉そうなことは言えないわよね。


 しかしどの連合国の方なのかしら?


 見た感じエルフ族やドワーフ族ではないのは分かるけど……私達ヤーマ人と同じような人間族の様だとは思うけどこんな服装の人見たこと無いなぁ……


 私はそんなことを思いながら足音を立てないように気を付けながら男性の方に近づいていった。


 スヤスヤと気持ちよさそうな顔で眠っている男性、とても優しそうな感じの男性だなと思ったと同時にこのままだと風邪をひくかもしれないし、木にもたれたままでは背中が痛くなるのではと少し心配になってきた。


 どうしよう……起こした方がいいかしら?


 私は更に男性に近づき寝顔をのぞき込む。すると突然男性が「こ、この声は誰……?」と目を閉じながら話し出したのでびっくりしちゃったわ。


「え?」


 私はまだ一言も声を出していないのに……あっそっか。これは寝言なんだわ。私が顔を近づけた瞬間に寝言を言うなんて……ほんと驚かさないでよね。


 でも『彼』が寝言を言ったあとの表情がなんとも言えないくらい穏やかで何か引き込まれそうな……ずっと彼の顔を見ていたいような気持ちになるのと同時に私の胸の中が熱くなってきた。


 な、何この感じは!?


 私には幼馴染の男子が数人いるけど彼等と一緒にいても腹が立つことはあってもこんな感覚になったこと一度も無かったのに……どうしてこの彼を見ていると引き込まれそうな感覚になるのだろう。


 これってもしかして……『恋』『一目惚れ』というものなのかしら……

 でも今出会ったばかりの人だし、まだ会話もしていないし……それに目を開けた状態の彼の顔も分からないし……


 動揺している気持ちとは関係なく私は彼の前にしゃがみ込み体に手を伸ばして、ゆっくりと彼の体を倒して私の膝の上に頭をのせてしまった。


 これは俗に言う『膝枕』じゃない。

 王女の私が何てことをしちゃってるの!?


 でも膝の上に彼の顔が……なんて心地が良いのかしら……

 早く目を覚まして会話がしたい。でもこのまま彼の寝顔も見続けていたい。


 そんな心の葛藤をしていると彼が少しだけ寝返りをして膝から落ちそうになったので私は慌てて手を差し出し、自分の方に彼の頭を引き寄せた。


 彼と私の顔の距離が今日一番になる。ドキッとした私……彼の唇に目がいってしまい、思ってはいけない感情が沸いてしまう。


 き、キスがしたい……


 私は自分の感情を抑えられなくなり少しずつ彼の唇に自分の唇を近づけていく。


 すると突然……


「う、う~ん……」と言いながら彼は少しずつ目を開けていき、目の前にいる私の顔を見てとても驚いた表情をしながら「えっ!?」と大きな声を出した。


 私は咄嗟に自分の感情を押し殺し、彼に不安がらせないよう満面の笑みでこう言った。


「良かった~やっと目を覚ましたわ。ねぇねぇ、あなたはどこから来たの?」


 でも彼は私の質問に答えようとせず驚いた表情のままだ。


 あれ? 何故答えてくれないの? もしかして私の言葉が通じない?

 やはり連合国の人ではないのかしら?  

 もしそうなら理解しやすい言葉を……そうだ。まずは私の名前を言ってみよう。


 そう思った私は自分の胸に手を当てながら「ヒメカ、私の名前はヒメカ」と名乗った。すると彼も少し冷静になったのか私の言葉を理解したのか「ヒメカ……?」と口にしてくれた。


 私は笑顔で「うん、うん」と大きく頷くと彼も自分の胸に手を当て「オオガミカズヒト」と言った。


「オオガ ミカズヒト……?」


 私と苗字らしき言葉が同じでテンションが上がりかけたけど彼は首を大きく横に振り私が聞き間違っていることをアピールしているようだった。そして再度、自分の胸に手を当てながら「カズヒト」と言い直した。


「カズヒト……?」


 私が恐る恐るそう言うと彼は「うんうん、#$&%$ カズヒト $#」と言いながら笑顔で大きく頷いてくれた。


 聞いたことのない言葉が混ざっているけど、間違いない。彼の名前は『カズヒト』なんだわ!!

 

 私は嬉しくて「カズヒト! カズヒト!」と何度も彼の名前を連呼した。


 『カズヒト』は満足そうな表情をしながら「うんうん」と何度も頷いている。


 でもそろそろ膝枕をしたままのカズヒトとお話しするのも限界が来たわ。だって今頃になってカズヒトの頭が私の膝というか太ももに密着しているんだと思ってしまったらとても恥ずかしくなってきちゃったから……


 私は恥ずかしさを隠しながらカズヒトに「カズヒト……そろそろ起き上がってくれないかな? さすがに足が痛くなってきたわ……フフフ」


 勿論、カズヒトは私が何を言っているのか分かるはずもなく更に数分間、膝枕の状態が続いたんだよなぁ……あの時はさすがに焦ったわ。どうすればカズヒトは私の膝から起き上がってくれるのだろうって……


 そんな私達がこうして『運命の出会い』をしてから早いもので5年の年月が経った。


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