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鎧だって大事にされたい。

 壁の細かな振動、そして暗闇の洞窟中に潜む肉の反応。

 岩と反射と肉の反射は違う、そして音波探知で観測すればゴブリンの醜い笑い顔までハッキリ見えた!


『ユノ!雑魚を纏めて燃やせる魔法はあるか!』

 囲まれる前に前後どちらかの敵を排除しないと詰む!

 小鬼が女の子を襲ったら、する事は大体決まってる。

 犯すか殺すかだ!


「集中する、フォルスは後を守って」

 横穴から周り込む小鬼を無視し、前方で身構える敵を一掃するつもりか。


『なら目をつぶれ、敵の位置を教えてやる』

 視覚の同調・・では無いが、意識が伝わるなら、敵の居る場所のイメージくらいは伝わるはず。


「・・・うっすらとだが輪郭が見える・・これが敵か」


 “迷宮に伝えられし炎の風、古の言葉を紐解き顕現せよ”

 [火炎嵐]ラハリト!


 ユノの前方に火の粉が舞い上がり、赤く燃える炎が渦巻くように洞窟を燃やす!


 ぐぎゃ!がぁ!ぎゃぁ!ぎぎゃ!!!


 炎の風に燃やされたゴブリンが次々と飛び出し、小柄な人型が燃えながらあちこちに顔・身体を打ち付け藻掻き、呼吸を失い喉を掻き毟るように横たわり燃えていく。


『・・あの、ユノくん?』

 オレが言って良いのか解らないが、結構危険な魔法をお持ちですね?


 肉の脂が焼けるくさい臭いが洞窟に充満し、酸素を奪われ失禁したゴブリン汚汁の悪臭が混ざって広がってくる。


「話は後だ!後にもいるんだろ!」

『ああそうだユノ、燃え残りは気にするなオレが監視しておく』


 炎の中で、運良く生き残って隠れてるヤツがいるかも知れない、首を撥ね飛ばし心臓を突くまで油断はしない、それが弱者が生き残る為の知恵。


「ぎぎゃ?」

 洞窟の通路に立ち込める悪臭と煙、その中で揺らめく物は獲物の持つ松明の光りだ。

 先頭のゴブリンは一度足を止めたが、バカなヤツらが先に獲物に手を出したのだと歯ぎしりして錆びたナイフを握る。


 新しい獲物を横取りされた、自分が襲い・このナイフで肉を裂き悲鳴を上げさせる筈が!

 新鮮な肉・柔らかい肉、獲物の雌の悲鳴を先に奪われた!


「ぎぃぃぎゃぁ!!」

 煙の中に跳び込み自分の獲物を確保しなければ、殺し奪い犯す獲物が居なくなってしまう!

 叫びは煙の中に掻き消え、分厚い鉄に壁に阻まれた。


「がっぁ??」

 邪魔な壁だ?!そう声を上げた時、ゴブリンは自分の頭に振り下ろされる剣が見えた。


「小鬼が!」

 体当たりを盾で受け切ったフォルスがゴブリンを押し返し、その脳天目掛け鉄の剣を叩き落とす!


 グチャッ!頭蓋骨で剣が滑る!

 ゴブリンの頭は潰れ無かったが、鎖骨から胸の中心まで鉄の剣がめり込む!


『ダメだ!フォロスさん、剣を早く抜け!』

 ゴブリンの身体は死んでも、痛みで反射的に硬直した肉が絡み、骨が剣に引っ掛かる。

 その隙を他のゴブリンが見逃す筈が無い。


「ぎゃがあ!!」「ぎじゃがぁ!」

 剣を封じられ、片手で盾を持つフォルスの死角からゴブリン達が襲い掛かる、狙いは鎧の継ぎ目、そこに毒で汚れた槍を刺す。


(ユノは大きな魔法を使った反動で精神力が消耗している、フィールさんは解毒の奇跡を使えるのか?)

 もし使えないなら、彼女は一生腐毒の後遺症で苦しむ。

 それはオレにとって許せる範囲を超えている!


『させるか!』[憑依]

 フォルスの同意は後回しだ、今は鎧の根性を見せる時!


?????[貪食な山賊の鎧]が弾かれ、バチバチと火花を散らす!

『うんにゃろう!』オレより格上を気取る全身鎧が抵抗するな!


『お前!主人を守るのと鎧のプライド、どっちが大事だって言うんだよ!』

 うるせぇ!オレが守るんだよ!そんな感じで弾こうとする全身鎧!


 持ち主本人の同意が無いからか!でも負けん!

 守りたい気持ちはオレも同じなんだ!

 カッ!


【蒸着!】この間わずか0、05秒!

 オレはフォロスの鉄の鎧と融合し、全身鎧は彼女を包む銀色の重鎧に変化した!

 

[重戦士の金属鎧]守備力+7俊敏-2[防御補正+2]

『おう?』

 なんか融合出来た!更に換装![貪食な山賊の鎧]


「え?」

 敏捷性が上がったフォルスは盾を振り回し、ゴブリンを撃破!

 更に纏わり付くゴブリンの頭を掴み、壁に押し込む!


 ブジュッ!

 頭の骨が砕け、醜い顔が半分ほどの体積に!そして盾でぶん殴ったゴブリンの頭を踏み潰す!


 グチャッ!・・

「やったか?」『まだだ!あと一匹!』

 フォロスの脇を抜け汚らしい小鬼が走る、狙いは疲労しているユノかそれともフィールさんか!?


「!」

 オレの声に反応したフォロスは脇を抜け走る小鬼に向かって走る、小鬼がユノに狙いを定め短剣を向ける。

 だが足を止めたゴブリンに対し、足を止めず自分の肩を武器に突貫していたフォルスの動きは早かった。

 ぐじゃぁ!

 はじける血と体液、砕ける肉と骨!


『・・あの、フォルスさん?』

 オレの身体が!鎧が、ゴブリン汁でぐちゃぐちゃじゃないですか!超臭いんですけど!


「他にもいるのか!?」

 松明は床に落ち、炎の明かりは薄暗く揺れて暗い。

 その中で鎧の汚れを無視して闇を見張る戦士の目。


(?・・なんかこのヒト・・)美人だけど、どこかおかしい。


 確かに身体はムチムチで重量感もあるし、汗と呼吸から良い匂いがするし、内側から感じる心臓の鼓動も筋肉の脈動も申し分無い。

 だが何か、オレの鎧としての本能が危険を感じている。次いでにレベルも上がった!

[重戦士の金属鎧]レベル2守備力+8俊敏-2[防御補正+3]

 スキルポイント+10


(・・・なるほど?)

 装備者・・取り憑いた相手の装備に合わせて変化する鎧・・ローブか。

 自分の中に進化の系譜を薄ら感じる、何と言うかこれは・・

 金属が欲しい!

 金銀鋼、オリハルコンにヒヒイロカネ、宝石とか魔力石とか超!欲しい。


「・・敵はもう無しか、ユノ!フィール!二人とも無事か」

 警戒するように左右に目を配り、殺気を振りまき口角を上げるフォルス。


(・・・これは殺気というより・・歓喜?狂気か?)

 バージ![分離]

 何かの危険を感じたオレは彼女の鎧から強制離別!

“逃がさんぞ”強い意志が逃げようとするオレを縛る、な?!コイツ!


“フッ、鎧の本能が理解したか、お前の感じた通りだ”


 このフォロスという女性、全身鎧なのは武器を使うより殴る蹴る生き物なのです。

 しかもケガも反撃も気にしない、脳まで筋肉で出来ている暴力の使徒なのです。

 なので私、いつも生傷が絶えず、魔物の肉汁で汚れ、壁と樹と岩で擦られ・・

 シクシクシクシク・・・


 鎧の事を何も感じ無いタイプの人間か!!


“しかも血を見ると笑顔になるんです。

 だから普段、このヒトは鉄の兜で顔を隠してるんです!”

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