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我思う、故に我あり。

 壁に張り付く大かたつむり、コイツは攻撃されると殻にこもり無視すると強酸の粘液を吐く嫌な魔物、「なので魔法を使う、さっさとローブに戻れ」


『命令されるのは嫌いだ』

「嫌いとかじゃない!こんな雑魚でも強酸は鉄を溶かすんだ、雑魚相手に鎧とか剣をダメにするとかは出来ないんだよ!」


 かたつむりの殻は棍棒で殴るには堅すぎて、剣で切りつけて酸を吐かれたら刃が溶ける。

 存在自体が嫌がらせのような魔物だ。

 魔法で殺すのが一般的で、魔法が使えない冒険者は油を掛けて松明の炎で焼く。

 良く焼かないと殺せないが、殻から出て来なくなるので燃えている間に通り抜けるのだ。


『じゃあ提案だ、換装してもすぐに魔法は使わないでくれ[音波攻撃]ってのを試したい』

 鎧でも色々試してみたい年頃なんです。


「年頃ってお前・・まあいい私も魔法使いだ、いいぞ。

 試行錯誤は魔法使いの領分だからな」


 理解の早い持ち主だと助かる。

 んじゃ[換装][大コウモリの魔法使いマント]

『そんじゃいくよ!』[音波攻撃]!


 キンッ・・高音が瞬間響く。

 なんかショボイ、それに効果が解らない?

 大かたつむりは壁を直進から蛇行に、変な動きになった。


『もう一発[音波攻撃]!』

 キンッ!

 蝸牛はフラフラとよろめいて床に落ちた。


「・・混乱攻撃か?」

 [音波攻撃]は肉体のダメージでは無く、敵の神経を攻撃するらしかった。

 蝸牛は身体をわたわたさせて蠢いている。


「?・・ユノ、なんだか解らないけど、このまま剣で切っていいのか?」

「その前に松明の火でそいつの口を焼く、反撃されて剣をボロボロにされたくないだろ?」

 ユノは近づかず、左手を上下させてフォルスに指示を出す。


 じゅぅぅぅ~~~

 なんとも言えない匂い、卵の白身を焼いた時の、有るような無いような微妙な匂い。


 驚いたのか痛みを感じたのか、反射的に蝸牛が殻の中に籠った。

「潜っちまったな、どうする?無視して行くか」

 口を焼かれた蝸牛はそのうち飢えて死ぬだろうが、せっかく追い詰めておいて放置とか、ちょっともったい無い。


『と言う訳で小僧、蝸牛に手を当ててくれ』

 そんで[音波攻撃]!更に音波攻撃!

 キン!キン!キン!

 高音と細かい衝撃が殻を小さく揺さぶる。


・・・蝸牛の中身はもにょもにょと這い出し、泡を吹きながら身体を捩り・・グテッと動かなくなった。


『気絶した?・・まあいいか、頭を切り落として中身を』

「取り出せって言うんだろ?解ってるよ、解ってたさ!」


 フォルスさんが頭?を切り落とし、ユノが身体を抉り出すように腕を突っ込んだ。


「うわぁ・・」

 二の腕まで『べっちょり』と粘液で濡らし、凄い嫌そうな顔で中身をほじくり出す。


 その後松明の炎で中を焼き、[大カタツムリの殻]を手に入れた!


『う~~ん、これも多分鎧の方だな』[換装]そして法陣!


『カタツムリの殻は後三つだな、なんか変な鎧になりそうな予感!』

 粘液か、それとも背中にカタツムリの殻が装備されるのか。

 ふふふっこの鎧の成長が楽しみだ。


「カタツムリはもうしない!私は嫌だ!私は拒絶する!」

 腕まで粘液でべちょべちょになったユノが、半泣き状態で拒絶してきた。

 この程度で泣くなんてだらしない!それでも男かよ!


(身体が多少汚れるだけで強くなれるんだ、男なら貪欲に強さを求めるもんだろ?

まったく最近のガキは・・?)


『なあ、今さら聞くのもなんだが。お前さん、男だよな?』

「お前!一体いつから私が男だと勘違いしていた!」


 おうっ・・女の子だったか、なんかさっきから『変だなぁ』とは思ってたんだが。

『そうか、女の子だったのですか』


『いや・・知ってたぞ、うん。ほら、あれだろ?え~~と、結構最初から解ってたんだぞ。

 ただまぁほら、確認的な意味でな?だってお前、否定とかしなかったし』


・・・・

 気まずい、なんというかスゴク気まずい。

 怒るなら怒るで怒鳴るとか拳骨とか直接的な怒りの発現してくれる方が、解り易いのにユノは沈黙して感情も閉じて伝わって来ない。


(こっちから何か言っても、多分怒るよなぁ・・

 取りあえず大コウモリの魔法使いマントで使えそうなスキルは・・[音波探知]?

 音を聞き分け・音を反射させ・音だけで形と動きを探る、コウモリの探知能力か)


 スキルポイント1で獲得、範囲は解らないが今よりは索敵能力が上がるだろう。


『と言う訳で[音波探知 弱]取得!』 

・・・・・・・常時音を響かせる訳で無く、意識する事で高音の音を飛ばし、反響する音をマント全体で拾う感じ。


(これなら暗闇でも物体を探知できるぞ・・?)

 良く考えたら鎧であるオレが、何を持って物体の色とか匂いを判断してるのか解らなくなったぞ?


(オレには目玉も耳も鼻も無いのに、なぜ彼女達を認識出来ろんだ?)

??????何か意識と感覚がゲシュタルト崩壊を始めそうだ。

 自己認識が歪んで崩壊のドミノ倒しを起しそう。


『考えちゃ駄目だ!考えちゃ駄目だ考えたらダメだ!・・・』

 そう、見えるだからしょうが無い。

 意識が有って感覚があるんだから、それを疑っても仕方ない。


(大霊界もある!そう哲朗・丹波という賢人も言っていたし!)

 考えるな!感じろ!だ!


 自分の中にある自我に、疑問と困惑が生まれ葛藤する。


(オレは・・一体何なんだ?鎧はどこから来てどこへ行くのか?)

 そもそも生命と物体の境目はどこにある?

 機械が自分で物を考える事が出来るようになれば、それは自我と認めて良いのか?

 動物と同じ自我を持ち、好き嫌い・嫌悪・好感を生滅・有無を理解すれば生命なのか?

・・我想い・故に我有り・・?


!『ユノ!右背後に動体反応だ!』数は・・4つ、小柄の魔物!

「え!?」


『迷宮で気を抜くな!

 前方にも反応!数は6!小鬼だ!気をつけろ毒矢を撃ってくるぞ!!』 

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