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迷宮という名の魔物。

 洞窟を何度も響かせた叫びは大コウモリを逃げさせたが、代わりに別の魔物を呼び寄せた。

 命の響きを憎む死の魔物、腐った身体で這い回るゾンビネズミ、骨だけで動きまわるスケルトンドッグ。

 彼らは洞窟に産まれたダンジョンの核の魔力によって借りの魂を吹き込まれ、生者を殺しその生命を迷宮の糧とする魔物。


「やはりか」オレを着た魔法使い、ユノはネズミゾンビに何かを確信して構えた。

『なにがやはりなんだ?』

 素材にならない魔物は興味が無いオレとは正反対で、ユノ達の指示は早い。


「フィール、頼んだぞ」

 全身鎧のフォルスさんが死体の魔物の前に立ち、盾を構えて二人を守る。

「火炎!」

 ユノの炎が骨を焼き、数体の骨犬が燃え上がって砕け散った。

 

 燃え上がる魔物の背後から骨の犬が走る。

 恐れを知らない死体が次々と盾にぶつかり、骨を砕きながら牙を剥く。


『全てを包む大地の女神ヴェルズ様、眠りを妨げられし者達に安らぎを与えたまえ!』

[浄化の祈り・葬送]ターンアンデット。


 眩しい祈りが洞窟を満たし、生者の光りに引き寄せられてやって来た魔物達がボロボロと崩れ去った。迷宮に縛られた魂が祈りの力で天に昇って行くのだろうか。


「彼らの魂に安らぎと癒しを・・」

『すごい!すごいなアレ!

 オレやっぱり彼女に装備されたい!メッチャ好き!』

 なんか良い匂いしそう!


「・・お前は違うのか・・くそっ」

 なんかユノから不穏な声が・・ひょっとして今オレ滅ぼされ掛けたかのか?


『なぁ??小僧、いまさ、』

「この洞窟が迷宮化し始めているのはこれで確定した、帰って報告すればギルドから報酬はでるが・・」

「迷宮の宝は早い者勝ち、もうちょっと探索して行きたいよな」


 ・・・なんかはぐらかされた、会話と話し合い・コミュニケーションは重要なんだぞ?


 迷宮は大地から魔力結晶と宝石・金・銀を発生させ、魔物を使って迷宮のあちこちに配置する。

 それを餌にするとやって来る冒険者、迷宮の魔力に引かれてやって来る魔物、双方を戦わせ生命力を奪い吸収し成長する。

 迷宮は一種の巨大な魔法生物らしい。

 

 迷宮という魔物の体内に入るだけで生物は体力を奪われる、それでも宝石・金銀・魔力結晶を手に入れる為に冒険者は迷宮に挑み、そして冨を得るか死ぬかを選択させられるのだろう。

(・・おれも生きていた時は、そんな人間の一人だったのか・・)


「洞窟・迷宮に適応した魔物はその影響を受けず、生命力の高い魔物は死ぬ事は無い。

 だから魔物は生きる為に迷宮に住むとかも言われてるな」

 ユノの言葉は多分オレに聴かせている、おれは魔物になってしまった訳じゃないぞ。


(・・そうか、まぁ良く出来た仕組みだな。魔物は住居・人間は欲望を餌に消化される・・・か)

 そして死体は、死体の魔物として操られて冒険者を襲う。

 迷宮で産まれた魔物は迷宮の外に出る事は無いと言われているが・・


『つまり出来立ての迷宮は、まだ魔物が少ない・まだ安全で金銀取り放題?』


 今この迷宮にいる魔物は元の洞窟に住んでいた動物が魔物化した物か、洞窟で死んだ動物の死体・・冒険者の死体が魔物になった物くらいか。


「そうだ、危険が少なくお宝は手付かず。探索しない理由は無いだろ」

 

(・・・サジ達はそれを知らない感じだったが・・・)

 魔力結晶か、それに金銀宝石?鎧心が躍る!


『良し!協力してやる!その代わりオレにも分け前を寄こせ!

 金銀宝石で装飾してピカピカにするんだ!』 

 格好良くなって美女の鎧になる!王族の鎧になるってのもいいな!


「・・分け前は3等分、お前の分は無いぞ」

『なら協力しない!っていうか、オレが強化されたらお前だって安全になるんだぞ』

 自分の装備に金を掛けるなんて冒険者の基本だろ!

 金寄こせ!宝石も!魔力結晶も寄こせ!

 オレ[鎧]だって頑張ってるんだ、報酬無しなら拗ねるぞ。


「・・・はぁ・・解った、ただし報酬は働きしだいだ。

 お前が役に立つことが解ったらその分考えてやる」


『・・なら嫌だね!なにそのやり甲斐の搾取的なのは、それと考えてやるってのも騙しの常套句だろ!

 契約しろ!・・っていうかまず約束守れ!美女を紹介しろ!具体的にはフィールさんを紹介しろ!』

 言ったよな!胸が大きくて優しそうな美人を紹介しろって!


「今のお前を紹介したとして、呪いの装備をフィールがどうするか?

 教会に持って行って浄化するんじゃないか?」


・・・・・・・くっ!愚かな!

 人間の無知が見知らぬ物・自分の理解出来ない物を排除しようとする、全くしょうが無い村社会の考え方だ。排他的な古い考えは捨てるべき!

 

「ならフォルスさんだ!あっちのムチムチって身体もスポーティな身体も好きだ!紹介しろ!」

「却下だ、全身鎧のフォルスに革鎧のお前を装備させても、守備力が落ちるだけ。

そのくらいの事も解らないのか?」


 ああ言えばこう言う、全く魔法使いという連中は!

(確かにそうなんだが、、、でもオレ、なんか全身鎧にも憑依出来そうな気もするんだよなぁ・・)

う~~ん。


 今は可能性の状態だし、ユノの言う通りオレが彼女に憑依して、革鎧[山賊の鎧]になっても困るからな、今は納得してやる。


「取りあえず契約だな、私はお前の強化に協力する。

 お前は私の装備として協力する、それでいいな?」

『解った、オレはお前を守る鎧だ、約束も守る。

 なにがあっても守ってやる、それが契約の証しだ』

 ユノが無事である事が契約を履行している証拠、これなら小僧も文句は言えない。。

「そ・・そうか」

 ?なんか好印象?よく解らんやつだな、取りあえずよろしく頼むぞ。


『と言う訳で、まずは大ネズミの皮を頼む!丁寧な処理を頼むぞ』

「?・・・」

 今度は悪印象、まったくコロコロと感情が左右するやつだな、子供ってそんなもんだったか?



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