大コウモリの魔法使いマント!
洞窟で一休みして疲労と精神の回復中、オレはフォルスさんの鎧を睨みつつ、フィールさんの法衣を覗く。
(鎧の方は何となく強そうだ、そんであっちの法衣は・・ただの布だな、オレの勝ちだ!)
人間だった時には全く解らなかったが、今は何となく装備の善し悪しがわかるようになっている、これも人間から鎧になったからなのか。
(解らない事ばかりだな)
まぁ解ると言っても
『こう『うわっ』とか『い~~!』って感じだくらいだけどさ』
なんかスゲェな、みたいな感じで防御力がオレには伝わって来る。
「集中してるんだ、お前は少しの間くらい静かにしてられないのか」
『だってよぉ・・まあいいか、どうせ鎧の気持ちなんて小僧には解らないんだろ』
何だかなぁって感じだな、しょせん魔法使いには防具の大事さなんて解らないに決まっているんだ。
(ああつまんねぇヤツに装備されちまったよ、全く)
『まあ清潔な分、山賊よりましだけどな』
「また!魔力の回復には集中が必要なんだよ!」
『なにイライラしてるんだよ、お前は清潔で良い匂いがするって思っただけだぞ、そんなに怒るなよ』なにをカリカリしてるんだ、魔法使いってのはみんな神経質なのかよ。
「!・・・いいから黙ってろ、いま回復中なんだよ。
わかるだろ?魔法の使えない魔法使いなんて、荷物以外の何物でもないんだから」
目を瞑り瞑想しているのか、全く動かなくなってしまった。
(黙ってしまったか・・・心音は落ち着いてるし、ケガは無さそうだからいいか。
それに魔法が使えないなら[山賊の鎧]で戦えば良いんじゃ無いか?
とか思わないでもないが、それを言ったらまた『うるさいぞ!』
とか言って怒り出しそうで黙ってるけど)
はぁ、もっとオレ[鎧]を有効活用してくれねぇかなぁ。。。
(オレも魔法を使えたら解るのかねぇ・・?)
スキルポイント2[生活魔法]ってのがあった。
なんか頭の中に黒板みたいな物があるってのは変な感じだ。
『けど使う!』スキルポイント使用だ!
【[生活魔法レベル1]洗濯・乾燥・着火・浄水・保温を習得しました。】
・・・?どこかで聞いたような声と魔法が使えそうな感覚、まぁよし!
・・洗濯!・・?
『なら乾燥だ!』
ゴワッ!!!!・・・?
「・・・お前、なにをやってるんだよ・・・」
魔法使いのローブの内側から、暖かく乾燥した風が噴き上がり、ローブが真上に舞い上がってバサバサ・・バサバサ・・
ローブの中はこんな感じだったのか、、、普通の服だな。
『スマン、ちょっと魔法を使ってみた』
いきなり風が吹き出すとか思わ無いじゃん!そんなに怒らんでもええやんか!
「・・・お前、今のは[乾燥]の魔法か?それともお前の特殊能力か?」
『魔法だな、人生?鎧生?始めての魔法ってやつだ!あと洗濯とか着火とか使えるっぽいぞ!』
「喋るローブだから魔法くらいは使うのか?魔法の鎧とは一体・・
、、、まあいい、それと知らないようだから教えてやる。
洗濯と浄水はそこに水が無いと意味が無いぞ、自分の身を洗いたかったら桶にでも入ってやるんだな」
なるほど、洗濯は風呂的なアレか。
・・?フロ?まあいいか、これひょっとしたら鎧のクリーニングも出来るのか?
出来ないぽい、どこかのスキルツリーになんか自動修復ってのと新品再生ってのがある感じがする、成長の先が何となく解るってのは不思議だ。
自分成長の限界が解る気がするのは、ちょっと不安でテンション下がりますが。
(まぁそんな面倒くさいスキルを取らなくてもいいか、防具屋で修理して貰えばいいんだからな)
「なぁ・・本当に大丈夫か?」
「心配無い、気にするな」
フォルスさんに心配されてしまった・・そう言えばオレ[保温]ってのが使えるから、この洞窟でもきっと温いですぞ?ちょっと着てみません?
ふぅ・・「一応は回復した、さっきレベルも上がったから火炎は4発撃てる。
そろそろ出発するぞ」
立上がったユノは、オレをローブにしたまま背中にリュックを背負いナイフを握った。
「ならアタシが前を行くから、気が付く事があれば言ってくれ。
あと・・さっきのヤツらの足音には気をつけてな。
アタシは金属鎧だから、不意打ちされても聞こえねぇと思うからよ」
ガチャガチャと間接部分に音が立ち、鉄のブーツが歩く度にガッチガッチと足音を鳴らす。
『・・アレは洞窟じゃだめでしょ、って言いますか全身金属鎧とか、戦士同士の戦いでもそうそう使うもんじゃないと思うんですが』
「・・そうだな、今度伝えておくよ」
全身金属鎧ってのは戦場で用いる装備だ。
騎乗して盾を構え、遠距離からの弓矢・魔法を弾き、敵陣に切り込む。その為の装備を地下とか洞窟でしても動き難いだけだ。
(ミスリル銀とかの魔法の金属鎧なら多分違うだろうけど、アレ高いから・・・)
オレも何とか頑張ったら、ミスリル銀の鎧になれるのか?
なんか色々やったら本当に出来そうな気がする、そうだな目標は高い方が良いに決まってる。
『目指せ!まずはミスリル銀の鎧!
どんな攻撃にも負けない究極の鎧にオレはなる!』
(って!普通考えたら無理か、布とか皮から金属鎧になるのは・・う~~ん・・物理的に無理!
きっと無理か・・・なりたいなぁ、なれるかなぁ、なりたいけれど足らないなぁ・・)
経験もレベルも足らないなぁ・・
とかやってたら大コウモリ!
「気をつけろ!こいつの牙には毒がある!」
盾を構えコウモリの体当たりを弾くフォルス。
それでも数匹の大コウモリが洞窟を飛び回り、ユノの頭上を飛来する。
「こんなタイミングで![火え]」
『ちょっとタンマだ![山賊の鎧]レベル2!アイツはナイフで倒してくれ!』
ユノの火炎を換装で停止させ、山賊の鎧で戦ってくれ。
「な!なんで!」
『アイツの皮膜が欲しい!オレの本能がそう言ってる!』
ヨブの時は黙っていたが、大ネズミの毛皮も欲しかった。
オレ[鎧]の本能が素材も求めているんだ!
「くそっ肉体労働は苦手だってのに!」
俊敏+3が効いていてもユノの脚力が弱い、なんとか飛び付いて攻撃するもひらりとかわされる。
『・・・』
「なんだよ!鈍くさ!とか思ってんだろ」
確かにそれはある、がそれ以上に大コウモリの動きがおかしい、確かこの魔物は・・・
『3人で大声を上げて見てくれ、確かこの魔物は耳で物を捉えるって・・』
人間だった時の記憶か、それとも・・・
「ああっ!そうだった!確かそんなのを本で読んだ事あった!
フォルス!フィール!二人とも合図したら大声で叫んでくれ!」
「「え?」」
「いいから行くぞ!1!2!」
『さん!』
「はぁ!!!」「「きゃぁ!!!」」
一人気合の入った声が混ざりましたが、高音で大音量の叫び声が洞窟を響かせた。
『今だ!』
フラフラと目標を失った大コウモリが壁にぶつかり、天井に頭を打つ中、ユノが一匹の大コウモリの羽根を斬る!
「こっちもだ!」
フォルスさんの剣が落ちたコウモリの背を叩き斬り、もう一匹は洞窟の奥に飛んで行く。
バタバタ片方の羽根を斬られ暴れる大コウモリを、ユノはとどめを刺して皮膜を剥ぎ取った。
「これで良いのか!」
なんか切れてる、そう怒んないでよね。
皮膜は4枚、品質は・・ちょっと悪い。
『バタバタ暴れたから羽根が傷付いたんだな、もう少し丁寧な剥ぎ取りをだね』
「ゴチャゴチャうるさい!それでコレをどうするつもりなんだよ!」
なんか怒ってますが、自分の装備なんだからもっと材料に気を配るべきだ、そう思う鎧。
『・・・本音を言うと、品質は良か優が良いんだが、あとは・・加工をしてだな・・』
「注文が多い!さっさとしろ!」
こう言うのは最初が大事な気がするんですが、ユノが切れそうなので今回は致し方なしか。
?~~~~?
『こっちかな?』[換装][魔法使いのローブ3]
そしてローブの内側に大コウモリの皮膜を4枚。
・・・・
『もう少し皮膜が必要だな、そうしたら』
・・・・・ユノさん呆れてません?戦うのはあなた達ですよ?
と言う事で、再度大コウモリと対決!
ユノが頑張って手に入れた大コウモリの皮膜が計10枚!
品質も[ちょっと悪い]と[普通]それをローブの内側に吸い込んだオレは・・・
[大コウモリの魔法使いマント!]品質[ちょっと悪い]に変身!
[魔力+5知性+3魔法防御+3俊敏+3
[魔法補助 弱][音波吸収][音波攻撃 弱]になった。
「おい!なんだこのマントは!私のローブをどうした!」
強くなったのにご機嫌斜めですな?
しかしこれは仕方ない事、コウモリ皮膜の品質が悪くて加工も不十分ならこんなもんです、それを私にいわれてもね。。。困りますよ。
コウモリを模したような黒いマントは縁が皮膜のように曲線を描き、両手で広げるとまるでコウモリ、魔法使いらしいというより・・バンパイヤっぽい。
おれは格好いいと思うぞ、夜空も飛べそうなデザインとか。
「も~ど~せ~!!!」すごい力で私を引っ張るユノくん。
『チミィ!そんな事を今さら言われましてもね、卵から孵ったひよこが卵に戻るわけがごさいませんでしょう?魔法使いならそれくらい理解出来ないのです?』
進化は基本一方通行、換装変身とは違うのですから。
きぃーーー!!!
私を噛んで引っ張るユノくん。
『キミ!自分の装備を無意味に傷付けるのは関心しませんよ。
それに・・このマントはさっきの大コウモリの皮膜で出来てるんですよ?
噛んで変なバットステイタスになっても知りませんからね?・・・
コウモリだけにBATステイタスってね!ぷ~くすくすくす!!』
ぎぃぃぃ!!!「このバカマントが!!!」
めっちゃ怒っていらっしゃる、なにがそんなに喰わないのか私には解りません。
という事で異世界変身ヒロイン物語です、楽しい物語を紡ぐ事ができたらいいなぁ、とか思いつつ。
いつもの葵 卯一なのでしょうか。