魔法少女
砂上彩花は所謂変身ヒロインであった。魔法少女と言っても良い。少女が大人になるまでに数年間、異形の動物が彼女に力を与えるのだ。だがそれは期限付きのもの。
その力を返上せずに大人になってしまったら彼女は『魔女』となってしまう。そんな彼女にも戦うべき『悪』がある、人間の精気を奪う怪物であった。それを倒す為に魔法少女に『変身』して敵を倒す。それが彼女の『ヒーロー』としての役割であった。
「先輩、書類です」
「ああ、そこに置いておいてくれ」
男、まだ少年のあどけなさを残すその男の名は『神代裕也』という『超人機関』調査員の一員であり、前線に立つメンバーであった。
「こうしているとまるで私がスカウトされたのがまるで昨日の様ですね」
「もう半年も前のことだぞ」
「そうですけど」
「君はあの時倒すべき『悪』の怪物を倒していた間違いなく『正義の超人』だった」
「自覚はありませんでしたけどね、私は私のできることをやっていただけで」
「君はその力を使うべきときに使わず時だけを浪費すれば『魔女』になってしまうのだったな。そして”『魔女』になった者は『魔法少女』に駆られる』”それが君たちのルールだった」
「そのとおりです、私達同族殺しなんですよ」
「気分を悪くさせたか?」
「いえ、事実ですので」
時は半年前に遡る、まだ神代が新米だったころだ……。
*
「近頃、世間を騒がしている災害が多いな。少し多すぎる、どれも小規模なものだが、この数は異常だ」
「先輩、調査ですか?」
「ああ、もしかしたら『超人』の仕業かもしれない、まずは近場、某駅の某所に向かうとしよう」
*
逃げ惑う人々、本来なら駅へ向かう人々の群れが、逆に駅から外に流れている。これだけで異常な事態だが、もっと異常なのは、駅が何か見えない力で壊されていることであった。
だが次の瞬間、周囲が光に包まれた、駅はいつもの姿を取り戻す。人びとは思い出した様に駅に戻っていく。
「なんだこれは……」
「一般人は気づいていない様ですね、何らかの暗示が掛かっているのか……?」
「ともかくここからでは観測出来ない、神代、力を使ってくれ」
「了解しました」
少年は力を使う、少年の力は超常の力に反応するセンサーの様なものである。その力は超常の力に呼応し、脈動を強めていく。そしてその超常の力に核にぶつかるとそれを現実に現出させるのだ。
「えいっ魔法の力、マジックブラスト!」
「見えた!」
少年の腕が駅の閉ざされた空間を開いた。そこは所謂異界であり、そこでは少女と怪物が戦っていた。
「魔法少女舐めないでよね、私の力見せてあげるんだから!マジックワード1マジカルエフェクト」
少女の持っている杖の様なものから、きらびやかな粒子が散布された、それは怪物を包み込み拘束する。
「これで止め!グランドマジック!」
少女は杖を天上にかざすと力を使った。まるで何らかの力の力場が怪物を包み込み圧搾する。怪物は粒子となり消え空間は元に戻る。
同時に少女は露出度の高いドレスの様な衣装から現代的な所謂普通の女の子の服装に戻った。
「今日もお手柄だな、彩花」
「ふふーんこのエリート魔法少女砂上彩花に出来ないことなんてないのです」
「言うようになったな」
「じゃあこのまま学校に行きますか」
その時少年は少女の腕をつかんで引き止めた。
「君、さっきの戦いは見させて貰った、少し話がしたい」
「誰です?」
「超人を守る存在だ」