ミッション1:チャイルドオークション事件(3)
届いた依頼。
関連する情報を探る光姫。
その頃、舞姫と夢姫は。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
(9)
コンピュータールームから出てきたアウィスに、
「ご苦労さまです。」
声を掛け、入れ替わるように糸姫がコンピュータールームに入って行った。
光姫は前と左右に並べた3台の大型モニターに表示された情報を見ながら強炭酸ペプシを飲んでいた。
「お待たせ致しました。」
糸姫が声を掛けると、
ズー、ズズズーーー
光姫がストローで強炭酸ペプシを飲み干し、
「ぐっふぅ、じゃ座って。」
胃に溜まった炭酸のガスを排出し、糸姫に指示した。
「はい。」
返事し、有線接続のマイク付きヘッドマウントディスプレイを装着した糸姫がリクライニングチェアに体を預けた。
ディスプレイに映し出されているインターネット検索の画面を確認し、
「準備出来ました。」
光姫に伝えた。
「りょうか〜い。
しっかし、相変わらずたいした情報がないわね。」
SDカードに入っていた音声ファイル以外のファイルの内容にあきれつつ、
「それじゃ検索始めよっか。
まずは、、”オークション 招待” で。」
糸姫にインターネット検索のキーワードを伝えた。
「”オークション 招待”」
糸姫が発した検索ワードをマイクが聞き取り、検索された結果を、
「約1360万件ヒットしました。」
糸姫が伝えた。
「う〜ん、そっかぁ、、じゃぁ、”子供” たしてみて。」
「”オークション 招待 子供”、約708万件です。」
「やっぱ、普通の検索じゃダメっぽいか。
ん〜、なんか隠語っぽい感じだよね。」
難しい顔でちょっと悩んだ光姫が、
「じゃ、”即売会 子供”なら?」
新たなワードを伝えた。
「”即売会 子供”、約325万件です。」
「だいぶ減った、か、、なら ”即売会 小人形” だと?」
「”即売会 小人形”、約337万件です。」
「うわ増えた、た、た、、”上物 招待” 追加で。」
「”即売会 子供 上物 招待”、約14万6千件になりました。」
かなり絞られた。
「ちょっとマシになったわね。
ざっと、調べてみてくれる。」
光姫の指示に、
「承りました。」
糸姫が検索結果の内容を高速で確認していった。
待つ事、約2分。
「光姫様、これは如何でしょうか?」
何かを見つけた糸姫がURLを光姫のパソコンに送信した。
そのURLのサイトを表示した光姫が、
「なるほど、これは当たりっぽいわね。」
ニヤリと微笑んだ。
そのサイトのTOP画面にには、
┌────────────────────────┐
│ようこそおいで下さいました │
│ │
│こちらでは上物の小人形を取り扱っております │
│ご利用頂けますのは会員様のみとなっております │
│是非、登録なさって極上の品を手に入れて下さいませ│
│ただ、登録料が必要で御座います │
│少々お高くなっておりますのでご注意下さいませ │
│ │
│(有)バロン商会 │
│ │
│ [入会登録] │
└────────────────────────┘
これだけが書かれていた。
「バロン商会、か。
なぁんか嫌な予感がするわ。」
光姫は何だか妙な嫌悪感を感じつつ、
「ここはこっちで探ってみるわ。
他に何かないか続けて調べてて。」
糸姫に指示した。
「承りました。」
答え、確認を始めたのを気に掛ける事なく、
「それじゃ、ちょっと侵入かせてもらおうかな。」
呟き、ハッキングを開始した。
(10)
ピー、ピー、ピー
ピー、ピー、ピー
突然、警告音が鳴り出した。
パソコンを操作していたオペレーターの女性が、
「サーバロン、サーバーに不法アクセスです。
第1防壁を突破されました。」
淡々とした声で報告してきた。
「ハッキングですか。
久しぶりですね。」
報告を聞き、バロンと呼ばれた男が楽しそうに呟いた。
不法アクセスは久しぶりだったので、どこまで入り込んでくるか少し期待していた。
「第2防壁突破されました。」
報告の声が聞こえた。
「ほほう、もう第2を突破しましたか。
少しはやるようですね。
ですが、第3は簡単には突破できませんよ。」
したり顔で呟いていると、
「第3防壁突破、ダミーサーバーに飛ばされました。」
聞こえてきた報告に、
「やれやれ、その程度でしたか。
がっかりですよ。」
落胆の声を漏らした。
第3防壁を突破するとトラップが起動し、偽情報が保存されているダミーサーバーに飛ばされるようになっている。
飛ばされた事に気付かず、そこから情報を抜き出して満足する。
その程度のハッカーに興味はなかった。
「ちょっと期待していたのですが、ね。」
『”壁を穿つ者”・ルクス、なぜ消えてしまったのでしょう?
あの心躍る日々が懐かしいですよ。』
呟き、そんな事を考えていた。
「警告音を停止します。」
オペレーターが声を掛け鳴り続けていたアラートを解除した。
だが、安堵して気を抜いたオペレーターがモニターから目を離している間に本当のサーバーに侵入されている事に気付いていなかった。
(11)
地下のトレーニングルームから出て1階に上がってきた舞姫は階段を隠す扉を閉め施錠すると、
「キャンテ、ちょっとよろしいですわ?」
キッチンでアウィスの夕食準備を手伝っているキャンテに声を掛けた。
※食事の準備担当は日替わりでメインとサブが入れ替わる。今日はアウィスがメインでキャンテがサブ。
「はい、何でしょうか?」
「お風呂に入りますわ。
夢姫を起こして連れて来てほしいのですわ。」
「承りました。」
キャンテは答えて一礼すると、夢姫の部屋に向った。
見送った舞姫は顔の汗をタオルで拭いながら脱衣室に向った。
中に入り、運動着、シャツ、下着を脱いで脱衣籠に入れると棚のタオルを持って浴室に入っていった。
シャワーを浴びて髪を洗い、トリートメントを済ませた。
体を洗おうとスポンジにボディーソープを含ませていると入り口が開き、
「お連れ致しました。」
キャンテに衣類を剥かれ、はだかにされた夢姫が床に下ろされた。
「ご苦労さまですわ。」
舞姫の声掛けに、
「はい、では失礼致します。」
答えて一礼し、入り口を閉めた。
舞姫は入口前で眠そうにしている夢姫に、
「にゃにゃにゃにゃにゃー!」
水に近いぬるま湯のシャワーを浴びせかけた。
「目、覚めましたですわ?」
「んにゃぁ、ぼちぼち覚めてきたにゃ。。」
舞姫に声を掛けられ、シャワーをぶっかけられたのを気にする様子もなく夢姫が答えながら近付いてきた。
「座って下さいですわ。」
「にゃ〜い。」
返事した夢姫が、舞姫の足元の風呂椅子に腰を下ろした。
夢姫の髪を触って感触を確かめた舞姫が、
「少しベタついてますわ。
前に入浴されたのは何時なのですわ?」
問い掛けた。
「にゃ〜ん、たしか一緒に入った時にゃ。」
「それって3日前なのですわ!」
「にゃって、お風呂入るの面倒にゃ。」
「ちょっと目を離すとこれですわ。
ほんとにもう残念全開ですわ。
女の子がそんな事ではダメなのですわ。」
やれやれ感全開の表情でシャワーを適温のお湯にして、
「目を閉じるのですわ。」
夢姫の髪の毛を濡らした。
わしゃわしゃ泡立てて髪を洗い流し、トリートメントまで済ませてボディーソープを含ませたスポンジを渡そうとすると、
「洗ってほしい、にゃ。」
キラキラな目を向けてきた。
「はぁ、手のかかるにゃんこさんですわ。。」
呆れ気味の声を漏らしながらも優しい笑顔で全身くまなく(大事な所だけは本人が)洗って泡を流した。
「はい、おしまいですわ。」
「ありがとにゃ。」
解放された夢姫が湯船に向かうと、しっかり自身の体を洗って舞姫も湯船に向かった。
ほにゃぁとした顔でとろけている夢姫の横に浸かった舞姫が、
「それで、何を調べているのですわ?」
切り出した。
「何の事かにゃ?」
とぼける夢姫に、
「猫さんがちょくちょく邸に来ているようですわ。」
核心をついているであろう言葉をぶつけた。
「気付かれてたのにゃ。」
「で、何があったのですわ。」
「ここ数日、複数の見慣ない人間が何かを調べてるようなのにゃ。」
「それが今回の依頼と関係ありそうなのですわ?」
問い掛けた舞姫に、
「さっき猫が来て、そいつらの雰囲気が変わったって言ってたにゃ。
それを聞いてさっきの話と繋がった気がしたにゃ。
だからご飯食べたら、ちょっと出掛けてくるにゃ。」
夢姫が真面目な表情の顔を向けて伝えた。
「分かりましたわ。
でも安全第一、無茶はダメですわ。」
「心配させるよな事はしないにゃ。」
その時、タイミングをはかっていたかのように、
「そろそろ夕食のお時間です。
お上がりください。」
キャンテが声を掛けてきた。
「分かりましたわ。」
「分かったにゃ。」
答えた2人は湯船から出ると、体を拭きながら入り口に向かった。
如何でしたか?
オークションの情報を入手したっぽい光姫。
猫から情報を得た夢姫は?
次回もお楽しみに。