少女人質籠城事件(後編)
後編です。
女の子はどうなるのか?
楽しんで頂けたら嬉しいです。
(5)
ドローンのカメラからの映像を見て犯人の位置を確認していると、むぎこ の作戦開始の号令がイヤホンマイクから聞こえた。
おじょう はゴーグルを外して首にぶら下げると、音を立てないように店内に入っていった。
素早く移動して男に近付くと、
「ごきげんよう、ですわ。」
優雅に挨拶してみせた。
「なんだお前は!?」
突然現れた少女に驚き、立ち上がって銃を向けてきた。
おじょう は銃を握った手に、
そっ
と手を添えて押しのけるように銃口をずらし、
ぎゅ、ぐりっ
腕を掴み、捻った。
「いだだだ!」
男が叫び声を上げ、
ゴトッ
銃を手放した。
そして、
すっ、くるん、どさっ
合気の技で倒し、
「お休みなさい、ですわ。」
ポケットから出したスプレーを男の顔に吹きかけた。
「うわぁぁ、ぁ、ぁ、zzz」
睡眠スプレーの効果であっさり眠らされた。
「はぁ、消化不良ですわ。。」
なんて事を呟きながらも、突入からここまで約20秒。
その時、タイミングを合わせたかのようにエイドトランクを背負った にゃこ が駆け込んできた。
「お待たせにゃ。」
言ってエイドトランクを下ろし、準備を始めた。
おじょう は女の子に近付き、
「もうちょっとですわ。
がんばるのですわ。」
優しく声を掛けた。
「は、はいです。」
おっかなびっくり返事する女の子の背後に回ると、
「これは、手錠なのですわ。」
手錠で拘束されていた。
「おじさん、何でこんなのを持ってるなのですわ?
ま、いいですわ。
ちゃっちゃと外すのですわ。」
言いながら髪からヘアピンを1本取って解錠を始めた。
「はやく、はやく。」
女の子は呪文のように繰り返し呟きながらもじもじしている。
「すぐ外してあげますわ。」
おじょう は安心させるように声を掛けながら、
カチャカチャ
っとあっという間に手錠を外してしまった。
女の子を立たせていると、
「準備出来たにゃ。」
にゃこ の声が聞こえた。
(6)
「いそぐにゃ、いそぐにゃー♪」
にゃこ は鼻歌のように呟きながら、下ろしたエイドトランクを開き、小さなバルブを回すと、
シューーーーーッ
と音がして空気が入っていき、10秒ほどで高さ約1.5メートルのバルーンハウスが出来上がった。
バルーンハウスのひとつの面に付いているファスナーを動かし、面を扉の様に開いた。
四つん這いで上半身だけ中に入れ、真ん中に設置されている直径30センチ、高さ20センチほどの円台の蓋を外した。
最後にポケットティッシュを置くと、
「準備出来たにゃ。」
体を出して、声を掛けた。
「ありがとですわ。」
おじょう が答えながら女の子を後ろから抱き上げて近付いてきて、バルーンハウスの中に女の子を立たせた。
「その丸い台の中にするのですわ。」
それだけ言って、返事も待たず扉部分を閉めた。
「間に合ったですわぁ。」
「よかったにゃぁ。」
安堵する2人。
その時、
ちゃら
おじょう がポケットに入れていた手錠の音が聞こえた。
「そうですわ、そうですわ。」
手錠をポケットから出しながら、おじょう が悪そうな笑顔で寝ている男に近付くと、
「逮捕ですわ。」
ガチャ
刑事ドラマの刑事のような雰囲気を醸し出しながら、男の右手首に手錠をかけた。
「きゃー、刑事ドラマみたいですわ!」
めっちゃ楽しそうな おじょう を見て、
「相変わらずぶっとんでるにゃ。。」
にゃこ が呆れ声で呟いた。
そんな事をしていると、
「おわりました。」
バルーンハウスの中から声が聞こえた。
「にゃっと、今開けるにゃ。」
答えて扉部分を開けると、ほっとした表情の女の子が立っていた。
「はい、これで手を拭くのですわ。」
いつの間にか戻っていた おじょう が除菌ウェットシートを1枚、女の子に渡した。
手を拭き終え、
「おねえちゃん、たすけてくれてありがと。」
女の子が可愛らしい声でしっかりとお礼を言って、頭を下げた。
「間に合って良かったですわ。」
「ほんとに、にゃ。」
「あの、これは?」
「その中にぽいっ、ですわ。」
おじょう が円形台を指し示すと、女の子がウェットシートをその中に捨てた。
「あらあらお顔が、美人台無ですわ。」
女の子の顔を見た おじょう が涙と鼻水で汚れているのに気付いた。
いそいそとお腹に付けているウェストポーチから、底に"み"と書かれた透明ボトルの小さなスプレーを取り出した。
「それ、なんにゃ?」
にゃこ が不思議そうに問い掛けると、
「これはお水のスプレーですわ。」
おじょう がにこやかに答えた。
「なんで、そんなの持ってるにゃ?」
「乙女の嗜みですわ。
お嬢さん、ちょっと目を閉じているのですわ。」
にゃこ と話しながら、女の子に声を掛けた。
「はい。」
言われた通りに目を閉じた女の子の顔に、
シュシュッ
と水を吹きかけ、目の下と鼻をハンカチで拭った。
「もういいですわ。
うん、可愛いですわ。」
おじょう に褒められ、
「あ、あり、がと。。」
顔を赤らめ、照れながらお礼を言った。
「それじゃ、ママの所に行くのですわ。」
「はい。」
満面の笑顔になり、元気に返事した女の子を おじょう が抱き上げ、
「にゃこさん、あとをお願いするのですわ。」
にゃこ に声を掛け、外に出ていった。
「かったづけにゃ、かったづけにゃー♪」
にゃこ が鼻歌まじりにバルーンハウスを片付け始めた。
(7)
「ままー!」
「せりちゃん!」
少し離れた場所で警官と一緒に待機させられていた母親の所に駆けていくのを見送ると、おじょう は指揮車に戻っていった。
「あれ、おねえちゃんは?」
おじょう が居なくなっているのに気付いた女の子が周りをキョロキョロと見回してると、
「おねえちゃん?」
母親が不思議そうに声を掛けた。
「おねえちゃんがたすけてくれたの。」
「そうなのね、ちゃんとお礼は言えた?」
「うん。」
そんな会話をしている横を警官たちが通り過ぎ、パチンコ店に向かっていった。
「喘息、大丈夫だった?」
「うん、へいき。」
「ママが手を離しちゃったから。。
怖い思いをさせて、ごめんね。」
「こわかったの、でもおねえちゃんたちがね。」
女の子は母親に店内での事を話しながら、しっかり手を繋いで家に帰っていった。
※事情聴取は後日改めて行われてました。
(8)
「戻ったのですわ。」
言いながら おじょう が助手席側のドアを開けると、
「サンダ、ガイラ、お待たせですわぁ♥」
座席に (今回の作戦には必要ないから置いていけ、と言われしぶしぶ)置いていたガンベルトを取り上げ、頬ずりを始めた。
「はぁ、、さっさと乗りなさい。」
盛大に呆れている むぎこ に、
「むぎこさん、その顔は何なのですわ。
こんな可愛い銃たちを置いていかされた私の身にもなってほしいものですわ。」
ぶつぶつ言いながら車に乗り込む おじょう に、
「ええ、おじょうの身に、って嫌だわ、ほんとに。」
むぎこ がめっちゃ嫌そうな表情で返した。
「ひっど〜いですわ!」
「はいはい、お疲れ様。」
ぷんすかモードな おじょう、はいつもの事なので気にせず労いの声を掛けた。
それを気にする様子もなく、
「女の子、無事で良かったですわ。」
普通に話しだした。
膝の上に置いたガンベルトを撫で撫でしながら。
「今日は楽勝だったね。」
「ちょっと、いいえかなり欲求不満ですわ!」
おじょう はほっぺをぷっくりさせて不満全開で呟いた。
「ほんと、あんたは、、。」
むぎこ が呆れていると、
ガチャ
とトランクルームを開く音が聞こえた。
「よっこいにゃ。」
ゴトン
そんな にゃこ の声と荷物を置いた音の後、
バタン
と閉まる音、そして、
「戻ったにゃ。」
後部のスライドドアを開け、にゃこ が乗り込んできた。
「はい、お疲れ様。」
返事がない。
むぎこ が振り返ると、にゃこ が座席で丸まって眠っていた。
「こら、丸まって寝ない。
シートベルトしなさい。」
「うにゃー!」
「うにゃー、じゃないの。
歩きで帰らせるわよ。」
「わかったにゃ。」
しぶしぶ座り直し、シートベルトをしたのを確認すると、
「それじゃ、ショコラプリン。」
※ショコラプリン:チームで使っている作戦完了を意味する言葉
「ですわ。」
「にゃー。」
むぎこ の号令に2人がのっかり、作戦行動が終った。
「撤収しましょうか。」
言って、むぎこ が車を発進させた。
「帰ったら、ポンくん (訓練用人型ロボット)を木端微塵にしてやるですわ。」
「なんかいろいろ間違ってるよ。」
むぎこ の突っ込みも気にせず、
「ふんす、ですわ。」
鼻息荒く、楽しそうにしている おじょう。
本名:裏咲良舞姫17歳
日本舞踊と合気道をミックスした戦闘術「裏咲良流」の継承者にしてガンマニア
拳銃が大好きで「裏咲良流」にガンカタをミックスした独自の格闘術で敵を殲滅する遊撃担当
鍵ピッキングのスペシャリストでもある
なんか四字熟語 (自作あり)を使いがちな一応、お嬢様、らしい
「今日のおやつは何かにゃぁ?むにゃ、むにゃ。。」
後部座席で寝言を言っている にゃこ。
本名:猫巻夢姫16歳
猫の目と同じ特性の「猫目」の持ち主で、すご腕の狙撃手
猫の様に軽やかで身体能力が高いので潜入したりもする
にゃん拳の使い手で、敵を翻弄する
普段はほぼ寝ている、後方支援担当
「ほんと、やれやれだわ。」
ちょっとアレな2人をまとめるチームリーダー、むぎこ。
本名:伝甲斐光姫18歳
中学生の時にクラッキングで補導歴のあるすご腕ハッカー
ソフト、ハードどちらもにも強く、いつも変な機械を作っている
戦闘サポート兼メイドなアンドロイド・糸姫を作った
もちろん訓練用人型ロボ・ポンくんも作った
IT関連のスペシャリストだけど、このチームでは普通な方?
そんな3人の”姫”たちが困難な作戦を完遂する為、大暴れする物語。
次回「チャイルドオークション事件」、みなさま、正座待機ですわ。
と、こんな感じのコメディタッチのアクションストーリーです。
殺伐感うすめで困難なミッションを解決していく、そんな感じの物語を目指してます。
ご期待下さい。
本編は8月下旬開始予定です。
よろしくお願い致します。