14.美しき一族
紗奈たちが北王国の王都レタに到着したのは、日が沈んだ頃だった。北王国の王都は晩春はまだ肌寒い。特に日が沈むと寒さが一段と増す。
そんな日が沈んた寒い王都で、たくさんの王都民が沿道に並び、ランタンを掲げて皇女の到着を歓迎していた。
暗闇にランタンの光が浮かび上がるさまは幻想的で美しく、思わず紗奈は馬車の窓を開けた。一瞬、冷たい風が車内に流れ込んできた。間髪を入れず、ミルヤが魔法石で冷気を遮断する。
「スニシャの故郷はレタなの?」紗奈が聞くと、「いいえ。レタより更に南にある南都です。」スニシャが懐かしそうに答えた。
「スニシャの名前、北王国ではスニと言うんですって?北王国人は寒くてあまり口を開けたくない横着者が多いから、人や街、物の名前がとても短いんだってミルヤが教えてくれたわ。」
いたずらっぽく紗奈が言う。その横でミルヤがあたふたする様がおかしくて、スニシャはクスクス笑った。
「まあ、ミルヤったら。でもミルヤの言うことは正しいですわ、殿下。たとえば国王陛下のお名前はルド・レタ様、王妃様がリリ・レタ様。」
「本当に短いわね。お母さまの名前も、ここではアリシアじゃないんでしょ?」
「はい、アナ・レタ様でございます。」
この日は珍しく紗奈がたくさん話しかけてきた。王宮に着いたらすぐ、北王国の国王一族に謁見するので、緊張しているのだろうか。
そうこうしているうちに、馬車隊は王宮前に到着した。
北王国の王宮はオルドネージュのそれとは違い、とても小さかった。大皇国と小国である北王国では、その王宮も大きさが違って当然だ。
ここで3日間、紗奈たちは過ごす。北王国は母の実家なので、王族たちは紗奈の親戚でもある。初めて会う祖父母、叔父や叔母、そして従姉弟たち。どんな人たちだろうか。
紗奈は用意された部屋で一息つくと、国王一家に挨拶するために王妃の間に向かった。
本来なら国賓であるエドウィナとの対面は、謁見の間で行われるはずだ。だが、長旅で疲れているだろうからと、エドウィナ皇女の体調面を考慮し、王妃の間でごく近しい身内のみとの対面となった。
王妃の間に入ると、祖父母である国王と王妃が暖かく迎えてくれた。国王と王妃は母の両親だから、少なくとも60歳は超えているはず。それなのに、目の前の2人は年齢不詳でとにかく美しかった。
国王と王妃の後ろには、母の弟である王太子とその妻と子供たち6人が控えている。
みな、キラキラしいほどに美しい。
北王国は美形の産地、北王国の女性は多産系。どうやら噂は本当のようだ。
紗奈は母アリシアとそっくりな祖父母や叔父たち一家に、初対面なのに居心地のよさを感じた。




