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10.サイラスに向けて出発!

エドウィナがサイラスに嫁ぐことを了承したとの知らせは、すぐに皇后の間から皇帝の執務室に届けられた。


皇帝アルダールは、エドウィナがどこにも嫁ぎたくない、両親のもとでずっと暮らしたいとワガママを言うのを期待していた。東のクライストンと西のオルドネージュが覇権を争った時代は終わり、平和な世になった現在、皇女といえどもムリに嫁ぐ必要はないのだ。


だが、エドウィナが子供を欲しがっているのはどうやら本当だと皇后が知らせてきた。であるなら、親として最大限、その望みを叶えてやりたい。花の命は短いのだから。


サイラス王国へ婚姻を打診したり姿絵を送る国際儀礼や作法を全てすっとばして、儀典局の文官に【皇女が降嫁するからよきに計らえ】としたためた親書を作らせていると、すぐに外務長官が執務室に飛びこんできた。


「陛下、このような非礼は聞いたことがございません。まずは先方に婚姻の打診を・・・」苦言を呈する外務長官をギロリと睨んで黙らせた。


「オルドネージュ大皇国の第一皇女が王妃になるのだぞ?サイラスごときの小国が拒否するとでも?」

「しかし・・・」なおも言い募ろうとする外務長官に、皇帝はふんっと鼻で笑った。

「もし断ったら、全力で叩き潰す。我が娘を断ったことを、骨の髄まで後悔させてやるのだ。」


外務長官は、第三皇女ユリアナの嫁ぎ先を探していた頃、ある夜会で「皇女といっても三番目、しかもあの顔だぜ?」と笑った侯爵家の嫡男の末路を思い出して、身震いした。


こうしてサイラスにとっては非礼極まりない親書ができあがった。大国が常に正義なのだ。


そしてエドウィナ皇女がサイラスへ嫁ぐことが、正式に公表された。発表を聞いた国民のほぼ全員が「サイラス?どこそれ」と思ったのはここだけの話。第一皇女が馬車の事故に遭ってからの経緯を知る国民は結婚を喜び、特に王都はお祝いムードに満ち溢れ、今度こそ皇女が幸せになることを願った。


紗奈が出立する日が春月の25日と決まった。途中で北王国に立ち寄り、サイラスには晩春の10日に到着する。出立までの準備期間はひと月半しかない。大国の皇女が嫁ぐには慌ただしく、異例の日程だった。


皇帝の命令で、皇女と共にサイラスに赴く護衛騎士団や女官、侍女など側仕えの人選が始まった。他にもドレスや宝石、身の回りの調度類や途中立ち寄る北王国への土産物、サイラスへの持参金など。準備することは文字通り山のようにあった。


側仕えたちが王宮と離宮を何度も往復し、たくさんの伝言鳥が飛び交い、皇后とスニシャが主に選別した嫁入り道具が慌ただしく荷造りされていく。紗奈は自分の嫁入り支度だというのに、相変わらず無関心のまま、ただボーッと庭園の木々を眺めていた。


顔も知らない国王の元に嫁ぐ紗奈の役目は、サイラスの世継ぎを生み、サイラス王家にオルドネージュの血を入れること。皇帝と皇后が無理やりひねり出したオルドネージュが紗奈の結婚で得るメリットだ。血縁となることで戦争せずにサイラスを手に入れられるから、と。


政略結婚に容姿も性格も関係ない。どうせ抱かれるのは夜だし、灯りを消せば顔なんか関係ない。どんな性格の男でも、閨ですることは同じだ。もうすぐ嫁ぐというのに、サイラス国王へのトキメキも新婚生活へのワクワクも全く感じなかった。


そして春月の25日。きらびやかな花嫁行列がオルドネージュ皇国の王都を出立した。


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