さあ、恋をはじめよう。
令息の拗れた恋愛を書きたくて書いてみました。
駄文ですが、お読み下さい。
「私と恋をしてみないか?」
いきなり学校の中庭でつげられる。目の前の男はよく知っている。いや、学園中全員知っている、有名人だ。
「いえ、無理です」
「えっ!?」
まさか断られるとは思わなかったんだろう。
大体、話しをしたこともないのに何故イケると思ったのだろうか。
彼は、伯爵家の三男で名をアデルという。
容姿端麗、成績優秀、王子の側近候補と超優良物件だが、私は気に入らない。
なんというか、少しナルシストが入ってて生理的にムリなのだ。
「この私が言ってるんだよ、ケイト嬢」
ほら、女の子はみんな俺が好きだよ発言。
そうだよね、あなたのファンクラブも存在するぐらいだからね。
まさかあっさりフラれるとは思わないよね。
まあ、私の名前を調べているあたりは褒めてあげよう。
「はい。ですので無理です」
「まずは、お友達からでもはじめないか?」
「間に合ってます」
一礼して、一目散に去った。
◇◇◇◇◇
「私と恋をしてみないか?」
我ながら決まったと思う。
君のことはずっと見ていたんだ。
我ながら恥ずかしいセリフを吐いたが、君の好きな小説の一文だ。このチョイスは間違っていないはず。
「いえ、無理です」
「えっ!?」
このセリフでは駄目なのか?私の想いを伝えるのは。
次は···、どれがこの想いを伝えるに相応しいか···。
「この私が言っているんだよ、ケイト嬢」
いや、今、自分なんと言った!?
これじゃない、これじゃない。
「はい。ですので無理です」
そうだろう、そうだろう。自分でもわかってる。言うべき言葉じゃなかったことは。もうなんでもいい。
「まずは、お友達からでもはじめないか?」
これでどうだ。友達からでもいい、君のそばにいられるなら。
「間に合ってます」
そうして彼女はいなくなった。
◇◇◇◇◇
私には密かに想いをよせる人がいる。
彼女はいつも中庭で本を読んでいる。
ある日、「ウフフ」と笑い声に気付き見てみると、1人の令嬢が本を読んでいた。それから彼女はキョロキョロと辺りを見渡す。どうやら思わず声が出たらしい。なんとなく気まずく、すぐに隠れた。こっそり覗きみたら、何事もなかったように本に目を落とした、顔を真っ赤にして。
それからだ。中庭で彼女を見かけるたび、少し立ち止まり様子を見るようになったのは。穏やかな微笑み、真剣な眼差し、眉をしかめる、涙をぬぐう、本を読みながらコロコロと表情を変えるのだ。その姿は閑散とした私の心を色づけた。
「あれはグランダル家のケイト嬢だね」
彼女を見ることに集中して、完全に油断していた。
「殿下!?」
振り返るとニタニタ笑う殿下がいた。
「氷の貴公子とまで言われたアデルがねぇ~、いいんじゃない?彼女はたしか婚約者いないはずだよ、僕のおかげでね」
「ケイト嬢か」
「えっ、まさか名前も知らずに見つめていたのか?お前、なんか気持ち悪っ」
「ほっといて下さい!!」
彼女の名は、ケイト―グランダル。
殿下の婚約者候補の1人だったらしい。
殿下は想い寄せ合う令嬢とようやく婚約できてホクホクだ。政治的な問題もクリアできたらしい。
が、長引いた婚約者選定のせいで、選ばれなかった候補者達のこれからが大変だ。王家が責任を持ってそれ相当の婚約者を据えるらしいが、貴族令息達もどうやらやる気らしい。それもそうだ。殿下の婚約者候補にあがるということは、家、人柄共に問題なしの令嬢だからだ。
「ケイト嬢は面白いよ。まぁアデルも知っている通り本が好きだ。しかも一度読んだら全て覚えているらしいよ。完全記憶の持ち主だね」
一度読んだら忘れないか。
それから私は図書館に向かう。彼女の借りた本を片っ端から読んだ。
彼女の思考を理解するためだ。
「アデル、お前のしていることが私には理解不能なのだが?」
「だいたい全部殿下のせいでしょうが。あなたが虫除け代わりに私を使うから、おかげで軽く女性不信なんです」
「お、おぉ、すまない」
そうだ。私はこの見た目から令嬢達から日々追いかけられている。そのうえいつの間にかファンクラブまで存在していた。上辺だけを見てそれだけでよく騒げると思う。
あまりに纏わりつかれ、思わず侮蔑の視線を送るも「あの流し目、私に向けられたのよ」「いえ私よ」と、斜め上に解釈される。
落とし物を拾おうものなら「お礼に我が家へ」と執拗に迫られた。ハンカチ1つでお宅訪問?苛立ちを胸に建前上笑顔でお断りしたのが間違いだった。それから毎日、毎日私の目の前で誰かが物を落とす。最初は笑顔対応できた。しかし無理があるだろう。日に日に笑顔は消え、淡々と渡す日々。
「物を粗末に扱うことは、恥ずべきことではないか」
と、とうとう私はキレた。令嬢はうつむき涙ぐむ。涙を流したいのはこちらだ。なぜこの茶番を続けなければならないのか。令嬢を置き去りにし、その場を去った。
そしてついたあだ名が「氷の貴公子」だ。
私のアイスブルーの髪の色と、泣いている令嬢を置き去りにした冷たい態度からつけられたらしい。私にとってはどうでもいい。
これで少しは大人しくなってくれれば···。
と、期待したのが間違いだった。
グイグイくることはなくなったが、どこにいても視線を感じる。
「おまえ、こんなの書かれてるぞ」
ある日、殿下から小さな冊子を渡された。
[アデル様の日常]というタイトルで、私のことが事細かく書かれていたのだ。戦慄である。
「殿下、どうにかして下さい」
「え、面白いのに?」
殿下もかなりの人気なのだが「公務がある」と学園内では表に出ない。公務は確かにしている。だが、このたび無事婚約者となったナタル嬢と一緒にいるのだ。それをバラすと脅した。当然であろう。私は見せ物ではないし、殿下の周辺を探られないように表立って行動してきたのだ。
こうしてその冊子は、殿下により速やかに差押えられた。
そんなこともあり、ようやく自分のペースで日常を過ごせると思った時に彼女を見つけたのだ。
なんとしても彼女とお近づきになりたい、その一心で本を読み続きた。彼女に貸し出されていた本は、歴史から古書に始まり医学書、民俗学と多岐にわたり、彼女の求心力になおも惹かれた。
「彼女、最近このシリーズにハマってるわよ。私も読んだけど面白かったわ。やっぱり恋愛ものっていいわ、キュンキュンするもの」
と、ナタル様から渡された庶民向けの恋愛小説まで読んだ。
女性はこれがキュンキュンするのか。男からしたら面恥ずかしいが。
そうだ、キュンキュンするなら小説のセリフを借りればいい。
◇◇◇◇◇
「やっぱり失敗したな」
「そうね」
影に隠れた2人は肩を落とす。
そもそも話したこともない相手に告白したところで、所詮無理な話だ。いくら彼女が好きそうなセリフであっても。
「殿下、ケイトにそれとなく聞いてきますわ」
「ナタル、任せた。私はあの石像を回収する」
その場でピクリとも動かないアデルの元に向かった。
◇◇◇◇◇
「ケイト、待って」
「やだ、ナタル、覗き見してたの?」
「それはそうなんだけど···」
それから私から改めてアデル様の想いを伝えた。
毎日ケイトを見ていたことも、セリフの意味も。たしか顔は確か好みとは言っていたと思うんだけど。
あとは、ケイト次第だ。「なにそれ気持ち悪い」と言われないことだけを願う。
◇◇◇◇◇
「あの、アデル様?」
「アデル様?」
「ケイト嬢!?」
石像と化したアデルが動いた。
「ナタルから聞きました、いろいろと。私の思い込みもあるかもしれないと思って···」
「思い込みとは?」
思いきって聞こう。
「アデル様は、自分大好き人間ですか?」
「!? そんなはずないだろう!!」
「俺、カッコいいとかは?」
そんな風に思われていたのか··.。かなり落ち込むな、これは。
「思うわけないだろう!!」
めっちゃ可愛いじゃん、アデル様。シュンと落ち込んだ姿萌える!
「わかりました。まずはお友達からはじめませんか?」
ケイト嬢の上目遣い、ヤバいです。
「いいのか?」
「はい」
まずはお友達からと言ったものの、恋は始まりかけているのかもしれない。
2人で過ごし、想いがつのれば伝えよう。
「「さあ、恋をはじめよう」」と。
END




