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人生は何が起きるかわからない

人の価値観とか常識は様々である。性格もたぶん遺伝子レベルで決まっているので、雑な人が几帳面になることはほとんどない。

ひろしはまあまあ頭がよく優しい男であったが、臆病者でおとなしかったため、大人になってから様々な困難に出会うのである。後で振り返ってみると自業自得ではあるのだが。

きれいな水を濁らせるのは簡単だが、濁った水をきれいな水に戻すのは難しい。

人生とはそのようなものなのではないか。現在、何も悪事を働くことなく、普通に善良に生きている人々は本当に素晴らしく敬意を表するに値するが、逆に言えば、悪事を働かなくてもよい環境にいることに感謝すべきである。それほどまでに育つ環境というのは人生を左右するものである。

ひろしは愛知県のある田舎町で生まれた。山奥であったため、近所に同じ年の子供がいなかった。

幼稚園の頃は不器用な子供だった。特にボタンをはめたり、ひもを結ぶことが苦手だった。

靴をなぜか左右逆に履くことが多かった。今考えてみるとなぜ逆に履いていたのかもいつどういうきっかけで治ったのかも思い出せない。年中さんの時は優しい先生だったのでなんでもやってもらっていた。

年長さんになると厳しい先生だった。ある日、竹馬の乗り方を教えてもらっていた。先生に両手で竹馬を支えてもらいながら練習していたが、先生はいきなり手を離した。ひろしは両手に竹を持ったまま、そのまま正面に倒れた。今考えても先生がなぜ急に手を離したのかはわからない。よく自転車の練習をするときに後ろでお父さんが支えていて、ある程度乗れるようになると、そっと手を放すみたいな感じで放したのかと思うが、あれは放したのに気づかないから成功する方法であって、支えていてくれた先生が突然目の前から消えたら倒れるしかないのである。

ひろしは小学生になった。小学生になると千穂という女の子を好きになった。千穂ちゃんは足が速くピアノを弾くのが上手だった。ひろしが好きになった理由もそこである。ひろしには叔母さんが父方だけで5人いた。4女の加奈子叔母さんが一番好きだった。加奈子おばさんもひろしをかわいがった。盆と正月にはいつもひろしの家に来てくれた。ひろしの家はものすごく田舎だったので、ひろしの母はめったに化粧などしなかった。加奈子おばさんは都会のデパートに就職したので、御洒落でひろしの家に来た時もいつもお化粧をしていた。小学生のひろしはそれがとても珍しくいつも加奈子叔母さんがお化粧をするところを見ていたものだ。その加奈子叔母さんがある時、おもちゃのピアノを買ってくれた。ひろしは好奇心旺盛な子で、音感も非常に優れていた。好きな曲はメロディーだけではあるが、なんとなく弾けるようになった。クラスでピアノが上手に弾けるのはひろしと千穂ちゃんだけだったので、休憩時間はひろしと千穂ちゃんが教室にあるオルガンを弾くようになっていた。するといつの間にかクラスの皆がその周りに集まってきたものである。そんなこんなで千穂ちゃんを好きになったひろしは千穂ちゃんと一緒にオルガンを弾くときが一番楽しかった。しかし、千穂ちゃんのことを好きな男子はたくさんいた。なかでも、ヒロミという男子はとても気になった。千穂ちゃんにとっても、ひろしにとっても。ひろしとヒロミは対照的だった。ひろしはどちらかというとブサイクで字や絵は下手で、いろんな面でセンスがなく、努力と好奇心で成長するタイプの子供だった。一方、ヒロミはイケメンでセンスの塊といっても過言ではない子供であった。美しい文字を書き、素晴らしい絵を描いた。ひろしは足は速かったし、体力はあるほうであったが、運動神経は悪かった。水泳や鉄棒や跳び箱などは苦手であった。ヒロミは運動全般何でもできた。運動神経の良い男子はモテるのである。ひろしは勉強はできた。頭が良いというわけでもなかった。ひろしの家は山奥過ぎて、テレビの電波がほとんど届かないため、公共放送と教育テレビしか入らなかった。あと、家が貧しかったので、おもちゃは年に一度しか買ってもらえなかった。好奇心旺盛なひろしは教育テレビと兄のお古の教科書を見るのが大好きだった。必然的に勉強ができるようになったのである。

ひろしは思った。今、自分ができることを精一杯やろうと。それが報われようと報われまいと、評価されようがされまいが、自分が正しいと思うことを一生懸命やる。それが公開しない唯一の生き方だと思う。

神とは自分の心の中にある良心である。

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