表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/51

第2章 第4節 ユカリの中学時代の思い出~恋の芽生え

「え、え~!ひょっとして、あのときの女の子!」

彼はびっくりしていた。


ユカリは、彼が忘れていることに少しいらだった。


『も~、忘れるなんて。あたしがこんなに会いたい、会いたいって思っていたのに~~。ぷんぷん!でも赤い糸、いや赤い風船を渡してたからきっと会えたんだ!永森神社の女神様~、ありがとう~!』


ユカリは、そんな本心を隠して彼に言った。


「ふう、やっと思い出してくれたのね~」

「ほんと、また会えるなんて」

「夏休みはね、おばあちゃんの家に泊まることがあるのよ」

「何だか、ずいぶん背も伸びたね」

「そう?これでもクラスの中くらいの身長かな。

もう、これで子供っぽく見られないですむかな?」


ユカリは、「どう、こんどは大人に見えるでしょ」と、少し誘惑めいたポーズを彼に見せて、彼の反応を楽しみにした。


「うん、なんだか、ずいぶん『女の子っぽく』なったよ」


カッチーン!

ユカリは、『女っぽく』でなく『女っ子ぽく』と言われ、ショックを受けた。

「あ~~、『女の子っぽく』っていった~。まだあたしのこと、子供って思っているんだ!」


「ごめん、ごめん」

「そしてあいからず、適当に謝ればごまかせるって思っているんだね~」


ユカリは、『私のこと忘れるなんて・・・』と内心苛立ちを感じながら、彼を斜め目線で見た。

『でもいいか、会えたんだから』


ゆかりは、そう思って、ニコッと笑った。


それから、彼は絵画に気づいたらしく、ふっと話しかけてきた。


「ねえ、何を描いているの?」

「夏休みの宿題で、風景を描いているの」

「俺もその絵、見てみたいな」


ユカリは絵のある所に戻って、絵をヒロトに見せた。


「へ~、きれいに描けているじゃん!」

「えへへ、そう」

「いい風景みつけたね、ここの風景、俺、好きなんだ」

「そうよね、この風景いいよね。なんだか心も和んでくるし・・・」


ユカリは、夕方になって日差しも弱くなったので、かぶっていた麦わら帽子を取った。


そのとき、ちょうどさわやかな風が吹いてきて、ユカリの髪が頬に微かに当たり、ユカリは髪をそっと手で脇によせた。


すると、ユカリは何だか視線を感じ、ヒロトの方を向いてみた。

すると、ヒロトがじーっとこちらを見ていた。


「うん、どうしたの?」

「え、いや、確か以前、中1と言ってたよね~、今、中3だろ。受験はいいのか」

「私ね、美術コースの学校に行きたいから」

「なるほどね、それで絵を描いていたんだね、それにしてもよく描けているね」

「えへへ、ほめてくれてありがと」


「ところで、え~っと・・・。そういえば、君の名前、しらなかったっけ?」


ユカリは思った。

『そういえば、名前言っていなかったっけ』


「天宮由加里、ユカリって呼んでね」

「俺は、早川ヒロト」


ユカリは、彼の表情が優しく穏やかになり、その表情がユカリにとって相手は年上なのにかわいく見えた。


そして思わず、妙なことを口走ってしまった。


「クス、じゃあ、ヒロトって呼んであげるね」

「ヒロト?それに呼んであげるって。まるで上から目線じゃん。

俺は3つも年上だよ。先輩だぜ。せめてヒロトさんって呼んでくれよ」


「はい、はい、わかりました。ヒロト」


「ぷっ」

ユカリは、おもわず笑いだしました。

ヒロトもそれにつられてしまい、笑ってしまいました。


それから少し、二人の間は、静寂に包まれた。


ユカリは、思っていた。

『ヒロトとまた会えたのは嬉しい。でも、今日、このまま別れるのも・・・どうすれば・・・そうだ!』


そこで、ユカリは今、思いついたことを思い切って話すことにした。


ただ、さすがにそれを話すのは勇気がいる。

ユカリは心臓が今までにないくらいドキドキしていた。


「わたしね、8月29日までおばあちゃんの家にいてね。それまで絵を描きにここにくるの」


「そうなんだ」


「ところでね、風景だけだと少し寂しいかなって思っていてね。人も描いた方がいいかなって思っていたところなの。

それでね、男性のモデルを絵に入れたいなあって思って・・・」


ユカリの声が次第に小さくなった。


「ヒロトってさ、長身でスラっとしてスタイルいいでしょ。

モデルにちょうどいいかなって・・・」


ヒロトがこちらをじーっと見ている。ユカリは心臓が飛び出そうなくらい、緊張していた。


『やっぱ、だめかな・・・』

ユカリがもじもじしていた。


すると

「じゃあ、俺がそのモデルやってみるよ!」

「え、いいの、ホント助かる!嬉しいな」


こうしてユカリは、ヒロトをモデルにして絵を描くことになった。


ユカリはもう一度最初から絵を描くことにして、最初にどの風景を描くかを決めた。


永森神社から見える風景には、角度を変えれば永森村の街並みを見渡せる風景、湖と川が見える風景、田んぼが広く見渡せる風景が見えた。


ユカリは街並みと川と湖、田んぼのすべてが見えて、永森村の雰囲気が最も感じ取れる風景を選んだ。


そして、モデルのヒロトがどうゆうポーズをするのがよいか、ヒロトが立ったり座ったり、後ろをみたり、前を向いたりといくつかポーズを試してもらった。


そしで決まったのが片手を木に添えて、真正面、つまり絵を描いているユカリの方を向いているポーズをしてもらうことになった。


絵を描き始めた頃は、ヒロトがずーっとユカリを見つめているポーズだったので、さすがにお互いに照れていた。


「ヒ、ヒロト、あんまし、じーっと見ないでよ!なんだかはずかしいじゃない。。。」

「ユカリがこうゆうポーズをしてっていったんじゃないか!」

「イーだ!」


言い訳になってないユカリのしぐさをみて、ヒロトは小さく笑った。


ユカリは、絵を描きながら思っていた。


『ヒロトはこのイメチェンした私を見てどう思ったかな。

今日はピンクの服を着ているけど、どう感じたのかな。


こうゆうことにヒロトはまるで鈍感で、言葉に「かわいいよ」と出すタイプではなさそう。

でも、本当は彼から「似合うね」って言ってくれたらやはりうれしいな。。』


ユカリは、いかにも女子学生が考えそうなことを思っていた。


『でも、ヒロトにモデルを頼んでいるからこそ、しっかり描かないと。

ヒロトがせっかくモデルを3週間引き受けてくれたんだ。

真剣に描いてヒロトを喜ばせないと・・・』


澄んだユカリの目が、ヒロトと風景をじーっと見つめて絵を描く。

そして、絵を描き続けるたびに、ユカリのヒロトへの想いは次第に大きくなっていった。


『やっぱり、あたし、ヒロトが大好き!』と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=873241521&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ