第2章 第3節 ユカリの中学時代の思い出~また会えるといいな
あれから2年過ぎ、ユカリは中学3年になった。
ユカリは中学3年になっても、地元の山口県ではおしゃれをすることはなかった。
そのため、2年前におばあちゃんに買ってもらったワンピースは、山口県に戻ってから着る機会がまったくなくなってしまった。
『やっぱり、知っている人たちがいると着るのは恥ずかしいな。。』
ユカリはこの2年間で身長がぐんと伸びて、おばあちゃんに買ってもらったワンピースや靴のサイズが合わなくなってしまった。
ただ、身長が伸びたと言っても、クラスで平均的な身長になり、
今まではクラスで一番低かっただけのことだった。
今、学校で昼食時間のとき。
ユカリは、クラスメートの女学生から話しかけられた。
「ユカリ、隣の男子校のバレー部、あと一回勝てば全国大会だって。
ねえ、放課後、応援に行かない?
バレー部、イケメンばかりだよ。きっかけできるかも」
「う~ん、あたしは、美術室で絵を描いているから・・・」
「ユカリ、そんな消極的ではいつまで経っても彼氏できないわよ」
クラスの女子生徒は、ユカリは男子生徒の話題にはまったく関心がないと見られていた。
実はユカリの思いの中では、次の夏休みを楽しみにしていた。
『あと3週間か・・・』
先日、ユカリは母におしゃれな新しい洋服を3セット、そしてコンタクトを買ってもらった。
でも、コンタクトは学校では着用せず、メガネのままだった。
『以前に彼の前で着ていた白のワンピースは小さくて着れなくなったけど、今度はたくさん母に買ってもらったな。
あの麦わら帽子はまだかぶれるし、バッグも使える・・・靴はいつものでいいかな』
・・・
そして、夏休みに入った。
ユカリは、高校進学では美術コースを考えていた。
通常、中3の夏になると部活を引退する時期だが、ユカリは、美術コースを希望しているため、そのまま在籍していた。
そして、夏休みに風景画の宿題を美術部の顧問の先生から出されていた。
2年ぶりにいく永森神社。
ユカリは、2年前に見つけた永森神社から見渡せる風景を描くことを決めていた。
また、永森神社は、彼と出会った場所であり、ユカリにとって思い出の場所であった。
『ひょっとしたら、また彼に会えるかな?
今度は子供っぽくみられないように、ヘアスタイルを大胆にイメチェンしてみよっかな』
ユカリは、永森村のおばあちゃんの家についた次の日、隣にあるつくね市に行き、女学生の間で話題となっている人気のヘアーサロンへ行った。
そしてショート・ボブヘアスタイルと呼ばれるナチュラルショートにしてみた。
このヘアスタイルは、今、人気の有名女優と同じ髪型。
ユカリは、カットが終わったあと鏡を見た。
ユカリ「これがあたし・・・」
サロン店員「はい、ずいぶんとかわいくなったわよ!」
『これなら、彼も振り向いてくれるかな』
・・・
ユカリはヘアーサロンに行った次の日、スケッチと絵具セットをもって永森神社に向かった。
ユカリは、頻繁に永森神社に行く計画を立てていた。
ユカリは、自然が好きで、特に自然の風景画を描くのが大好きだった。
絵が描ければ、ユカリは長時間、同じ場所にいても全然平気だった。
むしろ、時間の流れさえ忘れてしまう、ユカリにとって夢中になれる時だった。
ユカリは、そこで日々、絵を描き始めた。
そして、1週間が経ったときのこと。
『ふ~、やっぱり、彼、来ないのかな?』
時間は17時、夕方になった。
ユカリは、絵を描き終えようとしたとき、一人の男性が歩いてこっちにやってきた。
たまに犬の散歩や見学で来る人もいる。また、そうゆう人かなと思っていた。
でも、今度は少し違う様子。
その男はユカリから10m離れた場所に立って景色をじーっと見ている。
地元の人には見慣れている風景のためか、この場所で風景を眺める人は今までにいなかった。
ユカリは気になってちらっと見てみた。
「あ~~!」
考えるより先に声が出てしまった。
それは、ずっと待ち望んでいた彼だった。
ユカリは彼の方に指を指して言った。
「おにいちゃん!久しぶり!」
彼はこっちを向いたが、何だか考えているようだ。
どうやら誰かわからないらしい。
ユカリは、彼の方へゆっくり歩いていった。
そして、彼の目の前まで歩ていき、ピタッと止まった。
そして、じーっと彼を覗き込むように見つめて、一言だけ語った。
「赤い風船・・・」