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エピローグ③~幸福を創造する天使のように 秋本明日香~いつまでも幸せに、明日香・・・

今、明日香と尚道の披露宴が開催されている。


明日香と尚道は、たくさんの参加者から祝福の言葉を頂いていた。

二人は参加者が座っている各テーブルを回っていた。


ふと20mほど先のテーブルを見ると、そこにヒロトがいた。

明日香はヒロトだけを特別視してはいけないと思いつつ、早くヒロトに挨拶したいと思った。明日香は、やっとのことでヒロトのいるテーブルの近くまでたどり着いた。


ヒロトは明日香に気がつくと声をかけた。

「明日香、結婚、おめでとう!」

明日香は大きな声で返事を返した。

「ありがとう、ヒロト!」


二人が声を交わした途端、明日香はすぐに違うテーブルの人たちに声をかけられた。明日香は、今度はそちらのテーブルの人たちと話を始めた。


実は、ヒロトと明日香が声を交わすのはこれが最後になる。


今生、ヒロトと明日香が出会うことはもう二度となかった。


明日香は他の参加者から祝福を受けているとき、ちらっと近くにいるヒロトを見た。

そして、同時にスマホに保存してあったヒロトの写真を消去したことを思い起こした。


『ヒロト、思い出を消してしまってごめんね。でもね、私は、ヒロトを忘れたわけではないの。


ヒロトがいたから毎日がうれしかった。

ヒロトがいたからあのとき幸せだった。

ヒロトがいたから一生懸命に恋ができて生きてこられた。そして素敵な尚道さんと出会えた。


だから、私はヒロトと一緒にいたとき以上に彼と幸せになる。そう決心したの。


ヒロト、今度こそユカリさんを大切にしなきゃいけないよ。私を振った時は何日も辛くって眠れなかった。だから、ユカリさんを泣かせたら、私がゆるさないからね』


明日香はヒロトに感謝の思いで一杯だった。


すると、20mほど先のテーブルにいる尚道の声がした。

「明日香さ~ん、まもなくお帰りになる方がいて、一緒に記念写真をお願いされているので、なるべく早めにこっちに来てくれませんか~」


明日香は最後にヒロトをちらっと見た。ヒロトも気づいたらしく、静かに小さくうなずいた。

そして明日香は、心の中でヒロトに最後の別れの言葉を言った。


『ヒロト、思い出をありがとう。。。そして、こんどこそ本当にさようなら』


明日香は、再度、尚道のいる方に振り返って返事した。

「は~い、わかったわ。今、急いでそちらに行きますから」

明日香の声は大きく会場の端まで響いた。


明日香はヒロトの前から去って尚道の方に向かって早歩きのように走り出した。


明日香は、昨夜に父から感激の言葉を言われ、結婚式の緊張と重なって全然眠れなかった。


でも、今日の明日香の笑顔は一段ときれいだ。

元々きれいで清楚だったが、さらに美しく輝いていた。眠れず疲れた表情などみじんにも感じられない。


参加者たちは男女関係なく、明日香が走っていく姿にすっかり見とれていた。

その姿を見ているだけで、私たちも幸福になれるのではないかとさえ思わせる美しさだった。


会場の全員が、明日香の走る姿に注目していた。

会場から明日香を知る人たちの声がした。

「明日香さんは誰からも好かれていたし、まさに天使のような存在だったな」

「明日香さんを見ているだけも、何だか幸せになってくるんだよね」


走りゆく明日香の姿は、会場の一人一人に幸福を分け与えてくれる、まさに「幸福を創造する天使」の姿そのものだった。


ヒロトはその姿を見て思っていた。


『俺は自分をずっと不幸な人間だと思って生きてきた。でもそれは間違いだった。

明日香、この大都会で君と出会って、俺は幸せだったことに改めて気づかされた。


田舎から大都会に来て、一人孤独だった俺にとって、君は大都会に住む天使そのものだった。

君と出会えて本当によかった。君といたとき、俺は本当に幸せだった。


明日香、こんな俺を長い間、愛してくれてありがとう。

こんな俺を支えてくれてありがとう、

そして、明日香、いつまでも幸せに・・・」


ヒロトもまた、明日香に感謝の思いでいっぱいだった。

ヒロトの目にはうっすら涙が出てきた。


今、明日香は尚道に向かって走りながら思っていた。


『人のために何かをすることで人は幸福になれる。

素敵になれる。

そう、私はそれを信じてやまない。

これからも・・・ねえ、なおみちさん・・・』


明日香は、今までにないくらい光り輝いていた。


まるで天使の輝きのように・・・


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