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エピローグ②~幸福を創造する天使のように 秋本明日香~父の想い

明日香と尚道の結婚式前日の夜。


今、明日香は父に今までお世話になった御礼を伝えるため、父の部屋にいる。


「お父様、これまで私を育ててくださってありがとうございます」

父は黙って後ろを向いたまま、窓の外の景色を見ていた。

父は60才になった。小さい頃、父に厳しく育てられたが、心の奥にある父の無言の愛を、明日香は深く感じていた。


小さい頃はあんなに大きかった背中があんなに小さく見えるなんて...。


父と29年間、ずっと一緒に暮らしてきた。明日香には、29年、一緒に暮らした一人娘が家からいなくなる父の寂しさが、父の無言の背中から伝わってくるようだった。

明日香はうっすらと涙していた。


すると、父が背を向けながら明日香に話しかけてきた。


「明日香、一つ話さなければならないことがある。確かに軽々しい付き合いに、私はけっして認めなかった。でも明日香が心から愛し、その男が真剣に明日香を愛するなら、相手の身分に関係なく私は応援する考えはあった」


明日香は、父はヒロトと私が付き合っていたことを知っていたんだと今、初めて気づいた。


「私は認めないとでも思ったのかな。

明日香も早川君も・・・。

私は早川君とは直接会っていないが、シラトリさんは取引先でもあるので、耳にくらい入るよ。


私だって、若い頃は何度も倒産の危機があった。それが原因で最初の妻と別れてしまった。妻には負担をかけたくないと思い、会社のことは一切家庭に持ち込まないようにいたのだが、妻には伝わらず、去ってしまってな。私は当時の妻を真剣に愛していたので、ショックでしばらく仕事にも集中できなかった。


早川君は、私も気に入っていた。駆け落ちしようとせんでも、助ける考えはあったんだがな。

ただ、明日香には軽い恋愛気分でくだらない男を好きになってほしくなかったから厳しくしていた。けっして地位や名誉、収入、そういったものでなく、本当に明日香が愛し、その男も実直でまじめな男だったら、状況はどうであれ、私は認める考えだった。


私は、あのとき、明日香にも早川君にもきちんと話しておけばよかったのかもしれないな。明日香も早川君も誤解したようだった。

そうだったら、明日、明日香の隣にいたのが早川君だったかもしれなかった。

私は娘に最初の妻と同じ苦しみを味合わせたのかもしれない・・」


「うんうん、お父様、いいんです。ヒロトのことは。尚道は、私ではもったいないくらい、とても素敵な人ですわ。本当に私は今、尚道を愛しています。もちろん、ヒロトも真剣に愛していました。でも、ヒロトは・・・」


「もう言わんでいい。しかし、私の娘、明日香より、他の女性をとるなんて・・・。なんて馬鹿な男だと普通は思うだろうが、ますます気に入ったよ早川君が。さすが、明日香が愛した男だな」


「お父さま・・・私は父のおかげで最後に素敵な男性に巡り合えました。私は今、とても幸せであります。ありがとうございます」


明日香は、深くお辞儀をして部屋から去っていった。

父は相変わらず、窓の外の景色を見たままだ。


窓に父の姿がうっすら映った。父の目からは涙がこぼれていた。

父の明日香への結婚おめでとうという気持ち。娘がいなくなる寂しさ。そしてヒロトのことで明日香に対するお詫び。そして明日香が立派な女性になって感動したことなど、様々な思いが重なり、父に涙を流させてしまった。


「尚道君、明日香を頼んだぞ・・そして早川君、明日香とこれまで付き合ってくれて本当ありがとう・・・明日香は立派な女性になった・・・」

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