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最終章⑤ 眠れない天使のように 天宮由香里 ~運命の赤い糸に導かれて


「ヒロト、見て、夜空がとてもきれいだよ」

「ほんとだ」


しばし、沈黙が続いた。


「ヒロト。たった今ね、次の絵のこと、浮かんだの」

「どうゆう絵だい?」


「あたしね、ヒロトと出会ってから、ホントに眠れないことがたくさんあったんだよ。最初の一目ぼれのときは一晩中、ドキドキして眠れなかった。中3のときに再会した日も眠れなかったし。


高校一年の最初のデートのときも。そして別れたときもしばらく泣いて眠れなかった。それからね。ネットで超美人の年上の彼女がいる記事をみたときも何日も泣いて眠れなかったなあ・・・」

「え、あの記事、見てたのかよ」

ユカリがべーっと下を出した。


「ヒロトって、昔からあたしを何回も何回も泣かして、眠れなくさせてたんだよ」

「面目ない・・・」


「でもね、昨年、再開して縁が戻ったとき、今度は嬉しさで眠れなかったの。

そして、今日も眠れそうもないな~」

「え?」

「だって、今日はずっとこうしてヒロトと星空を眺めていたいんだもん。眠る時間だってもったいないな~」

ユカリは目を潤ませていた。


「あたしが今度、描こうとしている絵ってね、あの永森神社でね、二人寄り添って夜の星空を朝までず~っと眺めているの。そうゆう絵を描きたいな~って」


冬の寒い中、白い息を吐きながら彼女はヒロトに微笑んだ。


「二人でずっと寄り添っていたら、ユカリは絵なんて描けないんじゃないの?」

「うんうん、あの美術館の絵だってね、ヒロトがいなくても、ヒロトのこと、きちんと描けたのよ」

「じゃあ、どうやって描いたんだい?」

「実はね、永森村の天使がね、あたしの心のなかにいろいろアドバイスしてくれたんだよ!」


ヒロトは、永森村の不思議な巫女のことを思い返した。

それを思うとまんざら、否定できることでもない。


いや、今、現実にユカリとこうして一緒にいることが奇跡の連続だった。


「そうかもしれないな・・・」

「きっと永森村の恋愛成就の天使はね、若いカップルの素敵な恋愛と幸せを成就するために夜も眠らずにね、いつも頑張ってくださっていると思うの。

だからね、今度は永森神社の天使たちに御礼を込めて絵を描きたいの。ヒロト、また、手伝ってくれるよね!」


「もちろんだよ!」

「あたし、うれしい!」

ユカリは思いっきり、ヒロトに飛び付いて抱きついた。

ユカリは、昔からの夢が今、叶っている。恋人とロマンチックで素敵な恋愛をしたいという夢が・・・。


『最高の雰囲気~、こういうロマンチックな恋愛、ず~っと待ち望んでいたんだ』

ユカリは心からうっとりしていた。


そんなユカリの嬉しそうな顔をみて、ヒロトは一言語った。

「あはは、俺も永森神社の若い巫女さんにはお礼言いたいしな...」

ヒロトは、今、ユカリに似た不思議な巫女の女の子を思い浮かべていた。


『ん?』

ユカリは思った。そして、抱きしめていた両手を放した。


「ちょっと、若い巫女さんって、一体誰のことよ?」

「え?いや~、俺にとってユカリの絵馬と同じくらい、大切な思い出の人だよ」


ピクッ

ユカリは目をピクッとさせた。

「ヒロト。その話、初めて聞いたよ。

ふ~ん、そんなに気の許せる女性がいたんだね~」



「ちげーよ、そんな仲じゃないよ」

「じゃあ、どんな仲よ?」

「俺に一番の幸せくれた人かな」


ヒロトは、ユカリとの縁を取り戻してくれた不思議な巫女の女の子を思い出し、目を輝かして感謝していた。


そのヒロトの幸せそうな顔を見たユカリは、思った。


ガーン

『ま、まさか、ヒロトが、明日香さんだけでなく、別の女性にまで手を出していたなんて~』


完全なユカリの勘違いだった。でも時すでに遅し。ユカリの目が今、さらにヒクヒクしていた。


ゴゴゴ...

ヒロトは、ただならぬ殺気を感じて、ユカリを見た。

『え、え、ひえ~、やばい。言い方がまずかった。完全にユカリに誤解された~』


「ひ~ろ~と~、正直に話しなさ~い」


ヒロトはビクッとして後ろに少しずつ下がり出した。

「い、今は話せないよ~、ユカリが、もう少し頭冷やした後でじっくり話すよ~」


ヒロトが少し下がると、ユカリもその分、ヒロトに近づいてきた。

「明日香さんにも言いつけてやるぞ~」

「明日香はもう関係ないだろ」

「あ~、まだ未練がましく明日香って呼び捨てしてる。ひ~ろ~と~」


ブチッ

これでユカリは、完全に切れてしまった。


「もう~!せっかくいい雰囲気だったのに、また初恋のときのようにめちゃくちゃになっちゃったじゃないの!!!もう、絶対に許さないから!」

「そのセリフ、11年前にも聞いたぞ~。それに勝手に切れるのはいつもユカリの方じゃないか~」

「ヒロト君、いいからそこに座りなさい!」


ヒロトは思った。

『ユカリがこうなったら、もうなにを言ってもだめだ。よし、ここは、一旦逃げよう!』

ヒロトは駆け足で逃げ出した。


「こら~ヒロト~、これじゃ、今日も気になって眠れないじゃないの~」

「こ、これって、前と同じパターンかよ~。また、振出しに戻っちまうのか~」


ユカリもヒロトの後を追いかけ出した。

「ヒロト~、待て~。もう10年なんて待たないわよ~。今すぐ、とっちめてやるんだから~」

「あっかんべー、待たないよ~だ」

「待ちなさい~ヒロト~。白状しなさ~い・・・」


公園から次第にヒロトとユカリの声が小さくなっていった。

まるでその光景は、11年前、あの思い出の階段で二人が初めて出会った時のようだった。


でも、お互いの心の絆は互いに強く感じていた。


もうけっして切れることのない赤い糸の絆で...



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