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最終章③ 眠れない天使のように 天宮由香里~ばれてしまった!

明日香と尚道の二人は多くの祝福の声をかけられていた。

「尚道さん、あちらのテーブルに会社にいたときにお世話になった方がおりましたので、少し挨拶にいきますね」

「わかりました、明日香さん」


披露宴といったら、挙式ほどではないにせよ、ある程度スケジュールやプログラムが決まっているものだ。

でも、明日香と尚道はもっとフランクに自由に披露宴をやっていきたいという希望があった。そして、尚道は年商100億円の青年実業家であり、明日も仕事のスケジュールで埋まっていた。


そこで、二次会のパーティーはやらずに、披露宴をパーティーに近い形にし、その代わりに披露宴の時間を3時間と少し長めにした。二人は比較的自由にテーブルを回ることができた。


明日香はヒロトがいるテーブルに向かった。ヒロトを見ると何だかはしゃいでいる様子で、ヒロトの周りの人まですっかり和んでいる様子だった。ヒロトは明日香が近くまで来ていることにまだ気づいていなかった。


尚道は向こうのテーブルで同年代の人たちとの話に盛り上がっていた。明日香は、今、一人でヒロトの方に歩いて向かっている。

すると、ヒロトまで5m先のところで、明日香は、ヒロトの座っている隣のテーブルの人たちに声をかけられた。


明日香はそこで立ち止まって祝福を受けていた。明日香は元より男性、女性からも好かれていた。明日香はみんなに笑顔で答えながら、ヒロトの方を時々ちらっと見ていた。ヒロトは場もわきまえず、隣の女性と賑やかにはしゃいでいる様子で、未だに気づかない。


『ヒロトがこんなに子供みたいにはしゃぐなんて・・・私といたときは、こんな顔って見せなかったな。でも今の姿が本当のヒロトなのかな?クス』


そして明日香は、ヒロトの隣で今、言い争っている女性を見た。その風景はまるで子供同士の喧嘩のようだった。

『あの女性がユカリさん?ヒロト、ユカリさんといるとこんな自然体になるんだ』


すると、ヒロトはすぐ近くまで明日香が来ていることにやっと気づいた。


そして、明日香もヒロトが私に気づいたのが分かった。

ヒロトは声をかけた。

「明日香、結婚、おめでとう!」

明日香は大きな声で返事を返した。

「ありがとう、ヒロト!」


そう返事を交わすと、明日香は、今度は違うテーブルの人たちに声をかけられた。明日香は、そちらのテーブルの人たちと話をしていた。


明日香は笑顔でみんなと接していた。


『明日香、相変わらず、みんなの人気者だな。会社でもそうだったな』

ヒロトは、アスカの本当に幸せそうな笑顔をみて嬉しそうな表情をした。そして、ヒロトはしばらく、静かにものおもいにふけっていた。


『あれ?』

ユカリは思った。

『あたしの前ではずっと秋本さんって呼んでいたのに、今、確か、明日香って。それとヒロトって呼ばれていたな。・・・それからヒロト、急に静かになって...」


ヒロトが急に静かになり、ぼーっとしているヒロトを脇で見ていた、ユカリは感づいた。


「はは~ん、この二人はひょっとして・・・。以前、ブログで書いてあった年上の超美人の彼女って」

女の観だ。そしてその観は見事に当たっていた。そして案内状の年齢をもう一度見たらヒロトより2歳年上だった。間違いない・・・。



こうして披露宴は終わった。


その帰り道、ユカリはヒロトに式場の近くの公園に行かないかと誘われ、今、二人は公園の道を歩いていた。


空もすっかり暗くなり、夜空だった。1月の夜は特に寒く、息をはくと白かった。


ユカリはヒロトの後ろをとことこ歩いていた。

ヒロトはユカリに話した。

「いや~、今日の結婚式は大変すばらしかったね」


しかし、ユカリは何も返事をしなかった。

そういえば、結婚式が終わって外に出てからずっとだんまりだったな。


ユカリは急に立ち止まった。


「どうしたんだい、ユカリ?」


するとユカリは小さな声でしゃべった。

「ヒロト、実は秋本さんと付き合っていたでしょう」

「げ、なんでわかったんだい!」

ヒロトは、思わず、しゃべってしまった。


『しまった~』

ヒロトは焦ってしまった。


「やっぱり!ひ~ろ~と~」

ユカリは、声を思いっきり低くしてヒロトの名を呼んだ。


「ユカリ、別に隠すつもりはなかったんだ。いずれ話そうかと思っていたんだ」


するとユカリは、今度は泣き出しそうな声で話した。

「ひ、ひどい、付き合っていた女性の結婚式にあたしを誘うだなんて。そんなにあたしをいじめたいの」


「え、そんなんじゃ...」


「あたしに隠していたなんて・・・あたしのしらないところで、おんなつくっていたなんて」


「す、すまん。黙っていたことあやまるよ」

「ぐずん、ヒロトってほんとにいじわるなんだから」

「え~ん」

急に手で顔を抑えて泣き出すユカリ。ヒロトはめちゃくちゃに焦った。

事情を説明するよりも、今はとにかく謝ろう。ヒロトは思った。

「ごめん、俺、ユカリの言うことなら何でも聞くから。許して」


「ほんと?」

するとユカリの声のトーンが少し上がった。


少し口元がニヤッと笑ったような気がしたが、錯覚かな。


「ほんと、なんでも言って」


「じゃあ、キスして!」


急にユカリは元気な声になる。

ユカリは顔を上向きにして目を瞑っていた。


『し、しまった、こいつ、嘘なきしていたのか』


「キスして!」


ユカリは強く言ってきた。

「わかったよ」


ヒロトはユカリの顔に近づけて静かにキスをした。


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