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第4章 第5節 明日香との交際 ~ 二人のデート

明日香のことを社内で知らない人はいない。

明日香が社長令嬢であることは、正社員でないヒロトにも当然耳に入っていた。


でも、秋本さんからのお誘いを断るなんて、そんな失礼なことはできない。

「ええ、いいですよ」

ヒロトは、明日香のお誘いにOKの返事をした。


「よかった!じゃあ、後で日時と場所を連絡しますから。

当日は私が案内しますから、早川さんは何も準備しなくてもいいので、いつも通りの格好で来てくださいね!」


ヒロトはペコっとお辞儀をした。


・・・

そして、明日香と食事の約束をした日曜日がやってきた。

明日香とは、四谷駅前で待ち合わせしていた。


「早川さ~ん!」

人が多い中、明日香が声をかけ、手を振ってこちらに向かってきた。

ただ、ヒロトは土日も他のお客様の仕事を抱えていた。

明日香と待ち合わせ場所で出会ってすぐに、お客様から電話がかかってきた。

どうも緊急の電話のようだ。


とっさにヒロトがメモとボールペンを取ろうとしたが、ポケットに入っていなかった。ヒロトが書くものを取り出そうとカバンの中を探そうとしたときだった。


「はい」

明日香が即座にメモ帳とペンを用意した。

「あ、ありがとう・・・」

ヒロトは、明日香が渡したメモ帳とペンでメモした。


電話が終わって明日香はヒロトに言った。

「こうゆうものは、プライベートでも肌身離さずもっているものですよ、はっやかわさん!」

明日香は弾むように話しながら、笑みを浮かべていた。


ヒロトは、プライベートでも即座にこうした対応ができる明日香にすっかり感動してしまった。


「秋本さん、いつも助かります。秋本さんには頭があがりません」

「うちの父もね、めったにないけど家族で出かけるとき、仕事道具は肌身離さずでしたよ。早川さんもね」

そう言って、明日香はヒロトのかばんを指さした。確かにカバンにはパソコンと仕事の書類が入っていた。


「でもメモとボールペンは、手元にしっかり持ってないとだめですよ」

「面目ありません・・・」

「早川さん、でも、安心してくださいね。私といるときは、メモとペンは常に私がもっているから、安心して忘れてきてくださいね」

「あはは・・・」


それから、ヒロトは明日香を見てみた。とてもおしゃれな服を着ていた。

バックも靴もおしゃれだ。それに比べ、ヒロトはまったくの普段着だった。


ヒロトは、明日香のおしゃれな姿を見て、悪いことをしてしまったと思った。

ヒロトは、カバンを少し持ち上げて、明日香に話した。

「普通、デートのときって、やっぱりこうゆうもの、持って歩かないですよね汗』

ヒロトは自分の世間知らずに、明日香にすまないと思った。


そんなヒロトの仕草をみて明日香は言った。

「うんうん、いいの。それが早川さんですから。さ、例のレストランにいきましょ」

明日香は爽やかな笑顔で答えた。


レストランに着いた。

二人で食事をしているとき、再びヒロトにお客様から電話が入ってきた。

ヒロトは食事中にパソコンを開いて電話でやりとりをした。

明日香は目の前でニコニコしてヒロトをじーっと見つめていた。

電話が終わり、パソコンをテーブルの脇に一旦置いた。


明日香がニコニコしながら話しかけてきた。

「早川さんって、私と会っているときも仕事のことばかり考えているんですね」

「すみません」

「いいのいいの、私の父もそうだったから。早川さんとおんなじ。だからよくわかるんです」


明日香は、以前に中沢先輩から「早川さんは、仕事は一流だけど世間知らずで抜けているところがある」

と聞いていた。明日香はそんなヒロトをよく理解していた。


・・・


それから、3ヶ月が過ぎていった。ヒロトと明日香は、月に1回、定期的に会うようになった。

そして二人が会うときは、仕事とデートが一緒だった。


ヒロトと明日香が会うときは、意外と会話が少ない。

ヒロトは明日香と会っているときも仕事のことばかり考えていた。

明日香も十分それを承知だった。


でも、ヒロトは嬉しかった。明日香がそれを承知で会ってくれることに。

ヒロトは、明日香と会えることが楽しみになった。



「ところでヒロトの家族ってどんな人ですか」

ある日、明日香が質問したら、ヒロトの顔が一瞬、寂しそうな表情をした。

「いや、もう何年も帰っていないし、連絡もとっていないんです」

ヒロトの表情が暗くなったのをみて明日香ははっとした。


『何年も連絡を取っていない...変な質問してしまったかな?家出同然・・・。ハヤトは、きっと家族の問題を抱えているんだ』


明日香は、ヒロトの背中が時々寂しそうに見える理由が今、わかった感じがした。


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