第4章 第2節 明日香との交際 ~ 明日香は社長令嬢
秋本明日香は、緊張していた。
今日は、正式に東京本社の秘書課に配属になる第一日目だった。
明日香は一流女子大の大学院を卒業し、シラトリシステムに入社して3週間が経過し、一通りの社内研修を終えていた。
東京本社の事務職で働く女性新人は10名。
明日香は大学院卒であり、後の新人女性は皆、大卒だった。
明日香は他の新人よりも2歳上の24歳であり今年25歳になる。
朝の朝礼で、総務部、人事部、経理部、開発部など全員、大会議室に集まっていた。
「今日から、新しく本社の事務職の配属になった新人の女性社員たちです」
皆、一流大学出身の女性ばかりだ。ただ、その中でひときわ目立っていたのが明日香だった。
「秘書課の秋本明日香です。よろしくお願いいたします」
明日香は、男性社員の注目の的になった。なぜなら明日香はひと際目立った美人だったからである。
特に若い独身社員の間では、明日香は話題になっていた。
今日のお昼、休憩室での若い男性と先輩たちの会話・・・
「秋本さんっていう、すごい美人の新人が入ったってよ」
「挨拶の時、右から2番目の女性ですよね。ものすごくきれいだったぜ」
「俺、午前は外回りだったから見れなかったな。後でこっそり、秘書課に行って見に行こうっかな」
明日香に話しかけてくる男性社員が多かったが、明日香は挨拶してくる社員に対して上品に接した。
次の日のお昼、明日香は、同じ秘書課の先輩である中沢香苗と一緒だった。
「秋本さん、知っている?今ね、秋本さんね、すっかり男性社員の話題になっているよ」
明日香は少し笑って答えた。
「はい、でもまだまだ仕事がわからないところだらけなので、男性社員の皆様に迷惑がかからないよう頑張ります」
「秋本さんって、大学のときも、大変もてたんじゃないの?」
「中沢先輩、そんなことないです。大学は女子大で、合コンにもまったく参加したことがなかったんです」
「今どき、めずらしいんじゃないかい」
「父は厳格な人でしたので、門限がありまして笑」
「秋本さんって、ひょっとしてお嬢様かな笑」
「いやですわ、中沢先輩。普通の後輩として接してください笑」
秘書課に配属されて1か月がたった時のこと。
午後の13時に、開発室の全社員が会議室に集まることになっていた。
明日香は開発室に1人だけ、男性が残って仕事をしていたのを見かけた。
『あれ?開発室に1人いる。新人さんかな?総務から開発部の社員に呼び出しがあったのを知らないのかな』
明日香はその男に声をかけてみた。
「あの~、13時から開発部は全員、第一会議室に集まることになっておりますが・・・」
男性は振り向いた。それはヒロトだった。
「ご連絡ありがとうございます。私は社員ではないので、大丈夫ですよ」
「そうだったんですね」
「いえいえ、わざわざ気を遣っていただいてありがとうございます」
ヒロトは蔓延の笑みを浮かべて返事を返した。
そして、ヒロトは再度仕事に取りかかった。
明日香は、ヒロトが笑った顔がさわやかな少年のようにかわいく見えた。
・・・
それから、さらに1年が経過した。
明日香もだいぶ仕事を覚えた。明日香はあいかわらず、男性社員の間では人気者だった。
普通、このような女性は、他の女性社員から嫌がられるが、明日香は、女性社員からも評判が良かった。
しかし、これだけ美人で人柄もよい女性なのに、男性社員が誰も明日香をデートに誘わない。それには理由があった。
何を隠そう、明日香は年商3000億円の秋本グループの創業者である秋本社長の一人娘、社長令嬢だった。