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堀籠短編集

穴に魅せられた少年(15分執筆チャレンジ)

西尾先生は15分間で800文字書くらしい。

ということで、15分推敲無しでどれだけ書けるか挑戦。


結果:1109文字。目標達成!

僕は幼少の時から穴を掘るのが好きだった。よく、グランドに大きな穴を掘っては枯葉を敷き詰めた落とし穴を作っていた。物陰からそれを観察し、悦にふけっていたわけだが、先生を落としてしまったときはこっぴどく怒られてしまった。それ以来、落とし穴は掘っていない。

 変わりに、近所の竹藪などに行き穴を掘るようになった。下に掘ったのでは誰か落ちるといけないので、横穴である。その横穴にその辺りに落ちていた壊れかけのベッドやぐらつく椅子などを持ち込み、秘密基地のようにして遊んでいたのだ。我ながら、寂しい子供である。


 そんなあるとき、自分の掘った穴ではないものを見つけた。その穴は小さく、手がギリギリ入るような穴であったが、向こうから風が吹いているのを感じた。何気なくその穴に手を入れてみたところ、何か温かいものに触れてびっくりした。何度か試しているうちに、それが人の手であることが分かった。僕も恐る恐る触れていたが、それは向こうも同じだった。


 しかし、ここで大きな疑問にぶつかる。穴は、切り立った斜面に対して空いていた。当然、その反対側などあるはずもない。では僕が触れているのはだれか。僕はその時、恐怖よりも興味が勝った。向こう側にいるのは誰だろう。その日より、学校から帰っては、穴を広げる作業を連日行っていった。不思議なのは、いつ言っても、手を伸ばすと向こう側からも手が伸びてくるのだ。そしてどうやら、向こう側でも僕と同じように穴を広げているような音が聞こえてくるのだ。ためしに何度か声をかけてみたが、返答はなかった。向こうにも何か事情があるのかもしれない。

 2週間後、その時は訪れた。土を掘っていく手ごたえが急に軽くなり、あっけなくトンネルはつながったのだ。向こう側は真っ暗で何も見えなかった。僕は恐る恐るその道を進んでいく。1歩、2歩と進んだところで人の息遣いが聞こえた。あたりは真っ暗闇で何も見えない。僕は「おい、誰だ君は」と声をかけながらもう歩を進めた。するとその時、

「やっと交代だ」


と声が後ろから聞こえた。手探りでそちらを探ってみたが、何も聞こえない。再び前方を見ると、先ほどまでは無かった光が見えた。出口だ。僕はうれしくなり、トンネルを駆け足で抜け出した。しかし、そこは元の竹藪だ。いや、元とそっくりの竹藪。すべてが反対向きになっている。僕は怖くなりトンネルに戻ったが、そこは既に行き止まりになっていた。僕は反対の世界に来てしまったのだろうか。彼が言った「やっと交代だ」という言葉が頭の中で反芻される。僕は怖くなり山を下り、家に帰り、家族と飯を食った。だが、ここは本当に僕の世界なのだろうか。僕は今でもそれが分からずにいる。

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