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「その3」覚醒しし悪魔。

皆さまこんばんは! ほしのななかです!


更新が大幅に遅れすみません! ただ今別作品の改稿を行なっているのですみません!


それでは、トトひもその3、


「覚醒しし悪魔」をどうぞ!


(この物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件とは一切関係はありません。)




「帰ってもらえ」


「……ですよねー」


やはりというか、セレスにコノカちゃんのパーティ参入を断られた。だが僕の背を掴み立ち上がり、コノカちゃんは抵抗する。大きな青の瞳がセレスを直視していた。


「ですが! ですが、わたし、アウトレンジ(遠距離)から回復打てますよ! 絶対役に立ってみせます!」


「……」


遠距離からの回復キュアと聞いて、セレスの表情が陰る。口元に手を当て数秒思案、口を開いた。


「お前、」


セレスは背を向け彼女に言った。


「荷物になるんじゃないぞ」


と。彼の背で荷が揺れた。左手が風を仰いでいる。一度立ち止まり言葉に替えた。


「……使えないと判断したら切り捨てる。」


対するコノカちゃんは満面の笑みで応えた。零れる程の大きな瞳を、その瞼に大きく詰め込んで。


「はい! 頑張ります!」


「イチロー。準備は出来てるのか?」


セレスの声に僕はサムズアップで応える。

水筒と食糧、そして自分の武器えものを掴むとセレスは宣言した。「……とっとと向かうぞ、アリサ、イチロー、」そして、


「あと、ぽんこつ。お前もだ」


って。


僕が見やった先、とても輝かしい笑みでコノカちゃんが頷いた。




※※※




赤龍の住む『ガンクルルス山』のふもとには朝、夕、朝、夕、と、歩みと休みを繰り返し、その次の朝に辿り着いた。


水分を摂りながら山間を登っていく。山の中腹、少し開けた地で小休憩と作戦を立てる事にした。起こした火で道中で生け捕った魚を炙りセレスがそれを手に指を立てる。


「いよいよご対面だ。アリサ、イチロー、お前らは死ぬ気で『ぽんこつ』を守れ。赤龍の射程には一切入るな。俺が1ソロる」


「具体的にどのくらい近づいたらダメなのさ?」


僕の疑問にセレスが口を広げる。魚を食いちぎり言った。


「半径100m内には入るな」


串を振り、「決して近づくな」と、何度も念を押してくる。


「ぽんこつ、お前は様子を見て、俺に回復キュアを撃て。タイミングはお前に任せる」


「はい!」


コノカちゃんには遠距離からの回復を命じた。


「時に150mは離れる。大きな口を叩いたんだ。回復させてみせろ」


皆が銘銘に頷く。


「セレス、」


僕は、最後にセレスへ確認した。このパーティ皆の命を預かる者として。


「それで行けるんだね? 任せてもいいんだよね?」


と。セレスは変わらない表情で簡単な言葉に替えた。


「ああ。」


そう、小さく小さく、キリングヒーローは口にする。横目でちょっと『アリサ』を流し視て。


「任せろ」


と、そう言い切った。




※※※




赤龍の寝床とされる『ガンクルルス山頂』は赤茶けた土壌に覆われた標高1000m程の場所だった。


目視出来るか? と思われる距離で奴は『炎のブレス』を吐いてきた。地に割れ目を描き炎が眼前を駆け抜ける。




『――我に近づくは、ナニモノだ。――』




燃え立つ炎の先から、その声が『脳』に話しかけてきた!


直接『脳』へ影響を及ぼす!? 『ヒト以上の知能』を持ちえるドラゴン?!


それが意味する結末は、僕達全員の死! それ以外に考えられなかった!!


「帰ろうセレス! ぼ、僕達にはまだ無理だよ! このクエスト!!」


足がガタる。歯の震えが止まらない。距離にして200mは離れている。許しを乞えば、今なら助かる!!


だが、セレスは行ってしまった!


視ている事しか出来ない僕の前方、赤龍は語ることすら無かった。


セレスの剣が赤龍の首筋を斬りつける。だが、その鱗の一切を割く事が出来ない! 弾かれはしないが! 傷つける事も出来ない! 振るわれた顎をセレスは俊敏な動作でどうにか避けている。再度振るわれる刃が喉を狙うが、結果は同じだった。


「そんじゃ、私も行ってくるわ」


「あ! アリサ!!」


アリサがとてとて、とセレスの後を駆けていく。炎が奔りぬけた脇を歩み彼の龍へ近づき、その『銅の剣』を振り上げた。赤龍の胴体目掛け銅の刃を打ち付ける。が、当たり前だ! 叩く事だけで割く事は出来ない。赤龍は、そんなアリサの攻撃を避ける事すらしない。


赤龍が、セレスを前に徐に喉を引いた!


「セレス! アリサ! 避けて!!」


だが、赤龍が攻撃したのは、その2人では無かった。


一直線に、僕とコノカちゃんへ業火が伸びてくる!


「コノカちゃん! 掴ってて!!」


横っ飛びに避けた。灼熱のブレスが尻を焦がす。振り返り見上げた赤龍は羽を広げ、僕達に近づいてくる!


「ギガン(筋力強化)!」


! コノカちゃんが魔法を放った! 僕に抱かれながらも、焦点を何処かに定めていたのか? そ、それは、


更に振り返り視た先、セレスの腕に着弾した!


コノカちゃんを抱きつつも転がり赤龍の炎から逃げる! 意外に重い彼女を抱きながらジグザクに駆け、狙いを絞られないようにする! もう間違いない! 赤龍の狙いはコノカちゃん(この子)だ!


「ぽんこつ! 『ギガン(強化)』を重ねろ!!」


避け、盾にした岩山が溶ける! 死にもの狂いで僕は逃げ続けた! コノカちゃんは抱かれたまま、セレスに強化魔法を飛ばし続ける!


僕の腕は体力の限界値を超えていた。彼女の唱えた『ギガン(筋力強化)』が15回は数えられただろうか? 土砂まみれで振り向いたそこには羽ばたく赤龍の背に乗るセレスが居て、


首回り3mはあるそれを、セレスは、……一太刀の元に落としていた。あれだけ弾かれた刃が、恐ろしい程容易く、その巨体を断ち切った。


長い首がごぼり、と血を垂れ流す。恨みを宿した瞳が首を連れて堕ちていく。


共に空から落ちた身体は、地にクレーターを作りながらも尚、蠢き、起き上がろうとしていた!


心臓トドメはお前にやる。持ってけ」


セレスの手が僕を呼んでいるが、そんなの無理だった!


「そんなのいいから! 早く殺して!!」


僕の絶叫も聞きやしない! その強化を受けた腕を100m先から僕に伸ばしている!


「いいから早く、こいつを殺せ!」


堕ちた龍の赤銅の瞳が薄く開いた、ように思える! 赤龍の首から上も、身体を求めて動き出した!


「死にもの狂いか、」


いつの間にか近くまで戻ってきていたアリサが、剣を収めフードを払ってその赤茶の頭を掻いた。その瞳が赤く、黒く染まっていく。


「コノちゃん、こいつもしかすると、ものすごく美味しいの?」


「え? そ、それは現存する古龍の1体ですから、経験値はとても美味しいと思いますよ?」


「私、け、結構我慢出来たよね。我慢したよね」


頭の三つ編みが解ける程、掻き乱し、その眼が赤龍の腹を視ていた。


「我慢出来たよね! 私我慢したよ!」


アリサが蠢く赤龍の腹へ手を伸ばした。


「古龍が一、赤龍『ガンクルルス』! いただきま~~す♪」


「イチロー! 俺にしがみつけ!」


もの凄い暴風が荒れ狂う。アリサを中心に気流が渦を巻いていた。


コノカちゃんと共に掴んだセレスの背から懸命に体を起こす。無我夢中でその背から覗き見えたのは、


黒い一点。陽の光さえも吸い込んでいく虚無だった。空は陰り雲に満ち、荒野はめくれ、赤龍の首と身体がその『黒の一点』に吸い込まれようとしている。


虚無の中心、アリサの左腕に在ったのは漆黒の紋章だった。彼女の白いフードが風にはためいている。その中から現れたのは赤く、黒く、誰よりも煌めいた瞳だった。アリサの左腕30センチ程先のその『黒点』に、辺りの全てが呑み込まれようとしていた!


「アリサ・バドゥン、……覚醒したか。」


「な、何のことさ!?」


「お前がいつも言ってるじゃないか。あのチビの事を」


全てを、全てをコイツは知っていたのだろうか? セレスは嘲るように、アリサを視て嗤っていた。




「ファイター8級、腹ペコ魔王。……『ア・バドゥン(奈落の主)』ってさ。」



ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます!!


\(//∇//)\次回、「トトひも」その4でまたお会いしましょう!

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