「その2」その性(さが)はぽんこつ?
皆さまおはようございます! ほしのななかです!
「トトひも」その2をお送りします!
今回は「コノカ」メイン、、というか、「コノカ」のお話です。
\(//∇//)\それではどうぞ!
(この物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件とは一切関係はありません。)
「え? 貴方は『セレス・クリティア』じゃないんですか?」
頷く。その白く細い指先を己から解いていく。その青い大きな瞳が僕の前で開閉した。
「じゃあ、貴方はいったい、何処の何方なんでしょう」
「僕はイチロー。『イチロー・山田』。このパーティのリーダーしてる。で、こっちの金髪の彼が、キミの探してたヒトじゃないかな?」
左手で『セレス』を示す。セレスを見、フード越しに頭に指を当て考える『コノカ』。当のセレスは相も変わらず依頼書と問答を続けている。
そして頭から蒸気を上げる『コノカ』を顧みることなく、『セレス』は言葉で彼女を両断した。
「おい、なんだ? この『ぽんこつ』は」
と。ちらり見ただけで全然意にも介していない。
「お、おい! 出会い頭に『ぽんこつ』って! か、仮にも女の子に向かって『ぽんこつ』言う事ないだろ! 勇者なら、こう、声高らかに名乗ってみせろよ!
『この刃に掛けた魔は幾万。比類なき勇者、我が名は『セレス』!』
とかさ」
セレスの尖った眦が僕を射抜いた。
「……いめぇ」
「なんて?」
「いもい。って言ったんだ」
傷ついた。深く頭がうな垂れる。俯き心砕けそうになる僕の手を取る者が在った。
「……素晴らしき詩でした。イモローさん。心に染みました!」
顔を振り上げる。
「イチロー、ね。」
闘いの神『マリス』に祈っているのだろうか? 指を組み、コノカはギルドの天井へと祈りを捧げていた。「嗚呼、マリス。」と唱えた後、ウットリとした表情で僕を振り返る。思わず後ずさった。
「嗚呼♪ わたしもイモローさんみたいに謳ってみたいです! 伝説を、後の世に伝えたいんです! それには、『誰も寄り付かない』悪の権化、悪の再来である『セレス・クリティア』に付いていかないといけないのに!」
天井を仰ぎ恍惚としているコノカを観てセレスがキレた。とても自然に微笑んでいる。
「おい、イモロー。こいつを黙らせろ」
面倒くさいが、その首に手刀を叩き込む。嗚呼、商人の神『マイン』よ許したまえ! 僕もまだ死にたくは無いんです。
「てぃ」
コノカは腰から崩れ落ちた。あ、あまりにも簡単に気を失った。僕もさすがに慌て、その細い腰を抱き起す。頬を叩く。
「え? な、何でそんな簡単に気絶を!」
ギルド内にザワメキが広がっていく。「キリングヒーローが、またか」という言葉が、そして舌打ちが幾つも聞こえた。見やったセレスはそれらの声に構わずコノカを背負い、依頼書を脇に納め出口へ向かう。
「おっさん。俺達は、「赤龍『ガンクルルス』の討伐」を受ける。付けといてくれ」
「ほ、本気かよ! おいセレス!!」
僕の声にもセレスは振り返らない。
僕はお金を置き酔っ払った『アリサ』を背負ってセレスを追いかける。頭の奥を往復し脳の記憶を満たしたのは、何故だろう、赤龍ではなく、僕を視たコノカのキレイな瞳だった。
※※※
気絶した『コノカ』と酔っ払った『アリサ』を連れて僕達は『山田』の家に帰りついた。空は夕の頃合いを示している。アリサはすでに復活を果たし、夕食前のデザートを喰らっているところだ。
「……こ、ここは?」
「起きた? ここは僕の家。というより、僕らパーティの館と云った方が差支えないかも。はじめまして、コノカさん」
「は、はじめまして! 『コノカ・ステイツ』です! い、」
「僕はイチロー。『イチロー・山田』。で、こっちの赤い髪の子が『アリサ・バドゥン』。あっちで寝ている金髪の彼が『セレス・クリティア』。キミが追っていた彼だよ。」
「はじめまして皆さん! どうかこれから宜しくお願いします! わたし、『赤龍』討伐全力で頑張ります!」
頭を押さえ、恐る恐るベッドから足をおろした『コノカ』が皆に改めて自己紹介を始めた。
北の雪国『アスカリ』の出身で、詩人として活躍がしたくて『アスカリ』でも名の知れた勇者『セレス』を追ってきたそうだ。『ヒーラー』ランクは1級、と言っている。かなり強力な回復魔法の使い手だ。
『アリサ』も自身が極寒の地『サザリ』の出身だと説明。同じ北国出身の2人が大きく手を重ねる。似たような地に住む者同士心が触れ合ったんだろう。2人、にこやかに微笑みあった。よほど嬉しかったのかアリサは自身の大事なオヤツである『揚げパン』を半分に分け慎ましくもコノカへ渡そうとしている。そんなアリサへコノカが何故か反逆の牙を向けた。右腕による鋭利な手刀だ!
「だがしかし! とやーー!」
が、アリサの腕の方が遙かに速い。コノカの首根っこに揚げパンを掴んだアリサの指が突き刺さる。
「きゅー」
青いフードの彼女、ヒーラー1級のコノカが再び地に眠ってしまった。
「あ、アリサ! コノカちゃん殺す気かオマエ!」
「つい、殺っちゃったゼ♪」
テヘペロするアリサ。
10数分後。再び横にされていたコノカが首を擦りながらベッドから降りてきた。本日2度目の起床だ。アリサもチカラを加えていないらしく、3本の指跡しか残していない。あと、パンのクズ。
そんなアリサに一礼。コノカはアリサの目を視て言いのけた。
「先ほどはごめんなさいアリサさん! わたし、アリサさんこそがこのパーティの最底辺だと解ったんです。例え憧れのパーティといえども、わたし、底辺は嫌なんです! ヒエラルヒーの最下部は苦しいんです! アリサさん! アリサさんの苦手なものでわたしと再勝負です! そして貴女こそがこのパーティの最底辺に君臨してください! だけど仲良しで居てください!」
コノカは長い文句を一息で言いきった。アリサはお茶を飲む手を一旦降ろし、お茶請けの脇へそれを並べる。そして、「あ、ああ、」と呟いた。
「私の苦手なものかい? 私、……あまり食事とか好きじゃないかも。乙女だからそんな多くは食べれらないの~。仲良しさんは了解」
淡々と言葉を紡ぐ。だがその指はいじいじと、ワザとらしくこね回されている。一見乙女なその前に立ちはだかったのは自前のワンド(杖)を掲げ顔に自信の火を灯した蒼き聖女だった。
「ふふふ。わたしの勝ちが決まったようですね! この『ライスイーター』コノカとお食事バトルです!」
急遽用意された早めの夕食に、アリサはそう見えなくもない乙女顔でまた指をいじいじしている。腰に手を当て構えるは『ライスイーター』コノカ! 鼻息も荒い。
お椀いっぱいによそわれた白米とその上の『トンステーキ』レタス添えを前に、彼女は言った。立ち上る湯気を払い、指に『ジャニーン』で一般的に使われる食器『箸』を握りしめて。
「いただきます! わたしの未来!」
そして、お肉を小さく一齧り、ご飯5口頬張ってからの、
「……すみません。負けましたわたしの未来」
だった。コノカ(青いフード)は、お茶をすすりウォーミングアップを始めたばかりのアリサ(白フード)を前に深く、深く平伏した。アリサはまだ、まだ何も食べていないのに、お肉を前にコノカの心は砕けたようだ。
たぶん、アリサも僕と同じ事を思ったんだろう。ゆっくり『トン』に箸を串刺すと世にも哀れなナニカを見る目でコノカを見下ろしている。
頭を下げテーブルに拳を打ち付け、「『トン』は、『トン』だけは!!」と涙ながらに嘆くコノカは、そう、圧倒的に、
……類い稀なる『ぽんこつ』ヒーラーだった。
――ちなみに、『セレス』は帰宅後ずっと寝ている。全然起きてこない。彼がこの茶番の顛末を知るのは明日の朝だろうか。何と云うか、これ話さないといけないのかと思うと、
嗚呼、……胃が痛い。
ここまでお読みいただき、本当に本当にありがとうございます!!
次回は、VS赤龍となると思います!
それでは、^ ^また「トトひも」でお会いしましょう!