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「その1」腹ペコ魔王ト殺戮勇者ト、僕ともう1人。

皆さまこんばんは! 「トトひも」その1をお送りします!


イチロー・山田の冒険が始まりました!


\(//∇//)\

どうかよろしくお願いします!!


(この物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件とは一切関係はありません。)




本来の目的である新規クエスト受注の為、僕達3人は『ジャニーン』の西にある冒険者ギルドに向かっている。


この際だから僕は謳おう。詩人『イチロー』と勇者『セレス』の邂逅めぐりあいを。


彼との出逢いは『血』を語らずにいられまい。


最近街に居着いた『ごろつき』に金をたかられ、ボコボコにされていた僕、そこを助けてくれたのはあろうことか『オーガの群れ』だった。


ごろつき共と街の人々を追い払った『オーガ』達を、八つ裂き、皆殺しにしたのが彼『セレス』。


で、その謝礼に、


『金を寄越せ』と。


その剣技は化け物じみたモノだった。路地裏で隠れ視る事しか出来ない僕の前、腰から引き抜いた剣で端からオーガを切り払い、首を飛ばし、その身を叩き伏せる。その様は、伝承に伝わる勇者『ジョーカス・オリファー』の再来か? と、そう思わせる程のモノだった。そのヒトを超えた強さに僕の頬は紅潮を隠せない。故に彼に有り金全てを献上したのだ。


僕は、詩人見習いである『イチロー・山田』は彼の物語をえがく為に彼の従者を名乗り出たんだ。


だが、……彼はあまりにも独善的で、我が家に招いたものの、なんか、料理も掃除も洗濯も出来ないヒトだったから、見かねて手を出したら、なんか、彼は僕の、というか我が家の……『ヒモ男』となってしまった。




一方のアリサは山間やまあいの洞窟奥で飢えていたところを僕とセレスが助けた。


音の消えている世界で独り蹲っていた彼女を慌てて仰向かせると、汚れたフードの中、乾ききった唇が僕の水筒を求めていた。

僕は飲み物と非常食を一時的回復の為与えたのだが、彼女はそれだけでは動く事が出来なかった。

彼女を抱き家まで連れてきた結果、彼女は富豪『山田』の食糧という食糧を全てその口に平らげ、急遽調達した『ジャニーン』の街のスイーツと云うスイーツを食い尽くして、ようやくその頬に紅を灯したのだ。


その後、僕の頭を踏みにじり申したのが、


『おい♪ 腹が減った』である。


街の皆は『ジャニーン』1の商家『山田商会』の一大取引が在ったのだと、事の顛末を捉えているようだが、それは否だ。真実は1つ。街の食糧そしてスイーツ全てを喰らったのはただ1人の娘子。このおニューの白頭巾娘。腹ペコ魔王である『アリサ・バドゥン』だ。




※※※




街道を歩きに歩き、僕達はギルドにたどり着いた。両開きの戸を潜るとそこは冒険者が煮えたぎるスープの様に溜まっている。銀甲冑の戦士から、紫ローブの魔術師ソーサラー、弓を背負った狩人アーチャー、戦士戦士戦士、多種多様にいらっしゃる。


「『セレス・クリティア』。キリングヒーローが『(冒険者)ギルド』に何の用だ?」


受付の『マチス・ワーカー』にセレスが声を掛ける。


「おっさん、今出てるクエストの中で一番旨いヤツを頼む。」


「ならコイツだ。1人で死んでこい」


心底嫌そうな表情で、彼は一枚の『依頼書』をセレスへ放り投げた。セレスが軽い所作でそれを受け取る。


「それ、私も一緒なんだぁ。おじさん、ファイター8級はそのクエストに参加できるかい? あ、麦酒エール貰える?」


カウンターにグラスを1つ置き、マチスはアリサにそれを投げやる。滑り彼女の元に届いたエールをアリサは早々にぐびぐびと行く。マチスはその飲みっぷりが気に入ったのか口の端を上げて嗤った。


「無理だよ嬢ちゃん。100%(必ず)死んじまう。」


「おじさん。ぼ、僕がパーティのリーダーなんだけど、そんな難しいクエストなの?」


グラスを受ける数人の冒険者を避け、セレスの脇から顔を出す。アリサはあっという間に杯を開け、物欲しそうに僕を窺っていた。


「おお! 誰かと思えば『山田商会』の坊ちゃんか。悪い事は言わない。やめときな。一瞬で消し炭さ」


マチスにエールの追加を頼み僕はセレスの持つ文面を覗き込む。……ひと時の時間硬直。首から上が氷点下まで温度を下げた。


「【クエストLV80】赤龍『ガンクルルス』の討伐……。」


『ほら、無理だろ?』と、おじさんが腕を掲げて示してみせる。アリサの隣りに座っていた戦士が馬鹿にするようにセレスに向かい鼻を鳴らした。マチスへ片手を挙げると、その巨体をカウンターから遠ざけていく。


「キリングヒーローが燃え死んでくれるならギルド(こっち)としてもやぶさかじゃないが、山田の坊ちゃんを連れてくなら止めざるを得ないだろ。最低でも回復担当ヒーラーが居ねぇと、道中もままならんだろうさ。」


そんな僕達に掛けられた言葉が在った。


「あ、あの!」


振り返ると、それは青い被り物をした女性が発したモノだった。薄暗がりのギルドの中でさえ、その美貌が確認出来る。


「ひ、ヒーラーをお探しなら、わたしを使ってもらえませんか!」


圧倒的な美人だった。長い黒髪が陶器のような頬を流れている。思わず汚いつらが引き攣った。と、とりあえず聞いておく。


「き、キミは?」


上ずった声に応えたその人は、


「わ、わたし、コノカ。『コノカ・ステイツ』!」


名を『コノカ』と答え、僕の手を取っていた。


「『セレス・クリティア』を探し追いかけてきました! わたしを従者に加えてください! わたし、」


け、決してセレスなんかでは無い僕の手を取り、コノカ(好敵手)は僕に宣戦を布告したんだ。


「貴方の物語サーガを綴りたいんです! 残忍なる勇者『セレス・クリティア』の物語を!」


あ、僕、残忍な勇者と思われてる。セレスはこちらを見ずに『依頼書』に向かい何かを唱えていた。アリサはカウンターに寝そべりべろんべろんだ。僕は、


このキレイな人に瞳の奥、心の底の感情までを読み取られているような気がした。『コノカ』のそれは、長い睫毛を映やし綺麗な青を僕に表していた。


ここまでお読みいただき本当にありがとうございました!!


次回、トトひも、その2でまたお会いしましょう!

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