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BIG DREAM(7)  作者: ひでかづ
9/11

反撃 中編

レフトから坂上大夢と入れ替わりでマウンドに上がった浦野の心境。


よし。いつも通りに投げられてる。

場所が場所とはいえ、な。

神津さんや大河ほど直球の威力はないが、

俺の持ち味は「技」だ。

相手は強いと聞くが、

流石レベルの高い学校の揃う四国を勝ち上がってきただけある。

実力は例年以上と見ている。

パワーがケタ違いだ。

そんな時こそ俺はキャッチャーが島田さんの方が投げやすい。

自分のピッチングに迷いが生じた時、

的確なリードを以て様々な修羅場を潜り抜けてきた。

ところで、山田さんがファーストにいるってことは・・・。

そうだ、引っ込めたらキャッチャーいなくなるもんな。

それか坂上がまた投げるか。

いや、あいつに負担かける訳にもいくまい。


正直な話、浦野はまだ信頼のできるピッチャーと呼べる程ではなかった。

監督も勝ったら勝ったでラッキー、と。

負けたら負けたでこの失敗を糧にして進めばいい。

しかし、これを負けた時の言い訳にしたいとはメンバー誰もが心にも思っていなかった。

実力だけでなく人間性も考慮していた。

それがたまたまマッチングできていたから、

今、甲子園という舞台に立っているのかもしれない。


2回表、浦野は三者連続三振で切り抜けた。

その時の心境。


俺よりも要領の良いはずの坂上が先発したが・・・。

敢えてやられ役になった、のか?

何かなめられてないか?

いや・・・坂上の時と同じだ。

打者から雰囲気を感じる。

坂上より打ちやすいんじゃないか俺の球は。


キャッチャーの島田が浦野に声をかけた。

「相手のバッターやたらファールが多いな。打たせて捕るのは何もゴロじゃなくても良さそうだ。フライを打たせても良いかもな。」

浦野はなるほどと思った。

すくい上げていくバッティングは大夢の沈む球対策だった。

そこから矯正していくのは相手の課題であるし、

逆転をするための時間稼ぎにもなる。

浦野はとりあえず抑えられたら何でもいいやと割り切った。

自分のピッチングに違和感がなければなおさらだ。


この進み具合だとナイターの照明の眩しさも考慮しないといけない。

「フライを打たせるのは、テキサスヒットやホームランといった相手が塁に出るリスクが伴う。その辺は臨機応変に行くぞ。恒輝も、ゆくゆくはキャッチャーやるなら勉強しといた方がいいぞ。」

「わかりました。」

今更だが、島田は高商の主将である。

チームの統率力は一番だ。


ちなみにこの試合のオーダーは次の通り。

1番 センター 須崎 8 2年

2番 ピッチャー 坂上 18 1年

3番 ショート 清水 6 2年

4番 サード 前田 5 1年

5番 ライト 神津 1 2年

6番 ファースト 山田 12 2年

7番 キャッチャー 島田 2 2年

8番 レフト 浦野 11 1年

9番 セカンド 篠田 14 1年

控え

3 星野 内 2年

4 笹山 内 2年

7 三島 外 2年

9 黒岩 投 1年

10 小平 投 2年

13 矢部 投 2年

15 松崎 内 2年

16 小川 外 2年

17 新橋 内 2年


多少メンバーが入れ替わっているがお気になさらず。

これだけ見てもわかるだろう。

高崎商業の投手陣は分厚い。


2回裏、二死1塁の場面。

「2番、レフト、坂上君」

打席に立つ前に深呼吸してる大夢の心境。


島田さんのツーベースから1点をもぎ取ることができた。

焦らず、確実に。


この打席、大夢は一球もバットを振らなかった。

三球三振。

しかし、自分を責めることはなかった。

ベンチのサインは「バットを振るな」。

かといって仲間を責めることはなかった。

仲間が仲間であるという以上何のためらいも無かった。

一つ一つの選択肢や行動には、必ず意味がある。

たとえ意味をなさないものだとしても、そういうものだと思いたい。

大夢は精神的にタフだった。

難なく淡々と守備をこなす。

信じられない好プレーも光った。


5回表、浦野がワンナウト満塁のピンチにつかまった時。

三塁手前田恒輝と左翼手坂上大夢がアイコンタクトをとる。

何となく予感はしていた。

そして、その予感は見事的中した。

レフト落下点のフライで三塁ランナーはタッチアップの構え。

二塁ランナーと一塁ランナーは慌てて戻った。

この時走者はもう少しリードをとるべきだった。


なぜなら、次の瞬間。


「レフト坂上君、フライを捕る構え・・・!?」

そう、ショートバウンドを捕る構えに変わった。

実況も驚いた。思わず興奮した。

「なんとショートバウンドだ!」

そして三塁に送球する。

ツーアウト。

そして恒輝は二塁に送球と思いきや、バッターランナーが一塁に向かわないのを見て一塁に軽々と送球。

バッターランナーは慌ててスタートするが、一塁フォースアウト。

スリーアウト・・・しかし、ランナーはその前にホームインしている。

島田はビックリしたが冷静に、

「ファースト、ボールをこっちに!」

と声をかけ、山田勇喜はホームに投げ、審判にアピール。

無得点が認められ、この回をゼロに封じた。


小豆島と高崎商、8-4で4点を追いかける高崎商。

5回裏、信じられない出来事が起こるとは誰も予想だにしていなかった。


続く。

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